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第8話 最後の決戦-4

「うくっ!」

――強打撃音が響いた!――


 ところが、ここで異変が起こる。皇虎が、嗚咽とともに後方へ仰け反たよう。

〝はて? どうしたというのだ?〟

 どうやら、奴が悪行を犯そうとした瞬間、数メートルも後ろへ飛ばされたようだ。しかも、どういう訳か苦痛の表情で腹をさすりながらレディの様子を――彼女は佇んだまま――訝しげに凝視していた。まるで、レディの蹴りが当たったとでも言うかのごとく。

 さらにおクウたちまでも、ちょうどその場に到着すると同時に、何故か呆然と見入っていたという。

――いったい、何が起こっていたのか? 機総隊UPの目前に映っていたシーンとは?――

 何と、レディMが、『HY9』のボトルを右手に持ち、[既に容器は空]高々と翳していたのだッ! 

……ということは、とどのつまり皇虎の腰から予備のボトルを奪い取り、自ら毒液を体内へ注入していたという訳か? (何てことを……)


「ううっわわっああああぁぁ――――!」忽ち、彼女の叫び声がビルを揺るがした。

〝よって、この瞬間に、レディの凄まじい変態が始まったようだ!〟

――(彼女も同じく、醜い野獣ケモノに変わるのかァー!)――


 途端に、大きな破裂音がした! 手足の筋肉が膨張して、スーツが一瞬で張り裂けたよう。[とはいえ、胴体だけは黒いボディスーツが残る]

 一方、その荒々しい変化へんげを目にして、工藤も思わず口を開いた。

「あいつ……。弾丸も撥ね返す、超硬化特殊炭素繊維を、己の筋肉だけで裂きやがった!」と。彼女のパワーは、それほど凄まじいものだったのだ。

 そして、その直後、とうとう真の超人となりしレディが、この地に降臨していた! 一目しただけで途轍もない超力を秘めていると思われる不自然なほど巨大化した筋肉は勿論のこと、その顔面も口角が耳の近くまで吊り上がり犬歯が牙のごとく発達したため、まるで肉食獣のような面相となり、鼻筋に何本ものしわを寄せて相手と対峙したなら、言うも恐ろしく、例えるとすれば、獲物を八つ裂きにして食らわんとする獅子、はたまた悪鬼羅刹を食する黒き女神と見誤るほどの姿に変貌を遂げていたというのだ! 

 それなら、その力の限界はどれほどのもの……。それは、瞳の色を見ればパワーの根源を知ることができるであろう。彼女の目は、皇虎と比べ物にならないほどの一際鮮やかなゴールドに変わっていた。まさしく、怒れる夜叉の出現。ここに誕生したるMこそ、人類最強と称すべき超人に相違なかったのだァー!


 どこからともなく、地を揺らす轟音が響いた。それとともに、床一面にあった小石や塵が、天井高く飛び上がった。あたかも、レディの周りの砂塵が無重力になったかのごとく。

 これは、いったい何だ?……

 もしや、彼女の、足踏みか? 足を高速で床に叩きつけ、その震動で塵を舞い上がらせているみたいだ。

 次いで彼女は、顎を突き出し、首をゆっくりと回しながら皇虎を睨みつけた。――もう一瞬たりとも目を逸らせられないぞ! 身の毛もよだつ、その強面を前にしては、畏怖するあまり誰しも平伏したであろう――

「……な、なんだその面は!」故に皇虎も然り? そう呟きつつも、奴は、レディの計り知れない圧倒的な風格に慄いたはず。それでも、白旗を上げようとしないのは、この巨漢のさがか? まだ抵抗する気でいるらしく、側にあった全長三メートルの鉄骨を拾った。

 そして、新たな武器を得たことで気丈になったみたいで、「うおおぅーー!」皇虎は無謀にも、強固な鉄の棒を振り上げ彼女に向かって突っ走っていったか?

 だが、その時、レディの力なく垂れ下がった左手辺りから、何かの高回転する音が姦しく鳴り響いたかと思ったら、唐突に火花を散らし始めた。まるで独楽のような物体が、火炎を纏って回り出したのだ!

(まさか、それは……シューター?)確かに、彼女の飛び道具、超合金の円盤のようだ! 超高速回転をさせられたため、空気との摩擦で火花が発生したのだろう。とすれば、彼女は五指を巧みに動かし、とんでもない速さで回転させていることになる。

 するとその直後、その火炎独楽が、突如レディの手元から放たれた! 耳を劈く唸り音とともに、恐ろしほどの速度で、真直ぐ皇虎の持つ鉄骨へ吹っ飛んでいったのだ!

《遂に彼女の、驚異的な攻撃が火蓋を切ったよう》

 そして――まさに爆撃音が轟く!――忽ち鉄骨の芯へ、凄まじい音を立てて激突していた。鉄の金属棒をグニャリと曲げて、まさかの、Uの字にしてしまったという。しかも、それで終わらず、間に挟まっていようともまだまだ威力が衰えず、甲高い摩擦音を鳴らしながら鉄骨諸とも弾き飛ばそうとしていたため、それを皇虎が必死で堪えているような画になっていた。……が、奴がどう足掻いても無駄だったような? シューターのパワーは想像以上、すぐにその手からもぎ取っていた。

 よって、鉄骨は二つに折れ曲がった形のまま、ただちに皇虎の後方へと吹き飛び、強固な壁に衝突していた。

 ところが……えっ! それでもまだ止まらなかった? シューターのエネルギーは尽きなかったみたいで、さらにその壁を鉄骨とともにぶち抜き、挙句の果てには、鉄の棒までも真っ二つに引きちぎった後、途方もない激突音を響かせながら天井の奥深くへと突き刺さっていた!

――何という、底知れないエナジーよ!――

 この光景を前にしては、誰であろうと驚嘆の眼差しで眺めるばかりで一歩も動けなかったに違いない。

 そして、このパワーを唯一体感した皇虎も、自分の手を見つめていた。今の反発力で両手が痺れたのであろう。つまり、それほど強大な力だったということ……。しかし、そうだとしても、己が最強だと自負する皇虎がその真価を認めるはずもなかったか? 「きさまあぁぁぁー!」と怒号を発すると同時に、両腕を激甚に振り回しながら、レディに向かってまっしぐらに突っ込んでいったのだァー! 《愈々この時が到来した。生死を分ける最終決戦だ》

 ところが、その途端――またも、高周波音が唸る――レディの右手から、炎を纏ったシューターが、瞬く間に飛び出し……その直後――最大級の強打撃音が辺り一面に響いた!――何と、奴の胴へ、未だ誰も聞いたことのない鈍い強音を鳴らし、命中したではないかァー!

「グッボボッボボボッ!――――」皇虎は、血反吐ちへどを吐いた。(シューターの有り余る超絶パワーを全身に受けたからには当然の結末か?)そのうえ、有無も言う間もなく――体をエビぞりにされた状態で――空中に吹っ飛ばされ、遥か後方のコンクリート壁へ、猛烈な破壊音を鳴らし激突させられていた!

〝もうこれ以上、強力なインパクトはないというぐらいに…………〟




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