第8話 最後の決戦-3
――途轍もない爆裂音が、轟いた!――加えて、崩壊する地鳴りのような轟音が、体を左右に揺さぶった! 一瞬で、悲惨な爆撃地の様相を呈していたのだ……
とうとう大規模な破裂が、目の前で起こってしまったようだ! もうもうと白煙が立ち込め、至る所に砂塵が舞い上がり、そのうえ石礫が上方から降ってきた。
それでも、機捜隊UPの面々は、何とか体を竦めて爆破をやり過ごす。……が、肝心のレディの安否だけは分からない。辺りは、まるっきり視界がゼロの状況だったため、確かめられなかったのだ。
故に、「……レディM!」おクウとセブンの、悲嘆な声が聞こえてきた。それから、離れて見ていた工藤も、痛む胸を押さえながら急いで近づいていった。
そうすると、徐々に煙が晴れてきて、漸く周辺の様子が見えてきたか? だが……目前の光景を目にした直後、「な、なに?」度肝を抜かされてしまった!
よもや、コンクリートの床が、崩壊していたではないか! 下の階まで大穴を開けて、抜け落ちていたのだ。とどのつまり、爆破の衝撃が床の崩壊を招いたということだろう。……とするなら、レディと皇虎の姿はどこだ? 無論、その場にはなかった。おそらく床とともに下階へ落ちたに相違ないだろう。
「おい、Mはどうなった? さがせ!」そのため、この思わぬ事態を目にした工藤は、危惧して叫んだ。すぐさまおクウたちは、穴に接近して下を覗く。
すると、下の階の様子は、五メートル四方の一枚岩を真ん中で叩き割ったように崩れ落ちたコンクリートの巨大な塊が、細かな瓦礫の中に埋もれていた。さらに鉄骨の一部も、特異な形に捻じれた状態で転がっていたという。
そしてその中に……いた。レディと皇虎が、一枚岩の上を二分するかのごとくちょうど両端で倒れていた。
それなら、次にレディの身が案じられる……
だが、その心配も打ち消された。彼女は小刻みに体を動かし、よろけつつも立ち上がった。想像を絶する爆風を受けたにも拘らず、どうにか無事だったみたいだ。
一方、皇虎は、「きさまー!」と叫んだかと思ったら、即座に起き上がりレディに向かって突進していた。まるで爆破の影響を受けていないかのような剣幕で。――たぶん二人とも、爆風のエネルギーが床の破壊を齎したことで、多大なダメージを負わなかったのだろう――。ただしこの時、皇虎の容姿にも、異変が起こっていた。元の姿に戻っていたのだ。ここに来て、やっと抗ウイルス剤の効果が現れたということか? 《それでも、まだ十分強靭な身体であることに変わりなかった》
そして、そんな悪漢が、またもレディに襲い掛かっていた! 彼女の首元を掴んで、力任せに引き摺りながら後ろへ押しやるという荒技に出ていたのだ。
しかし、対するレディの方は抗おうとせず、後方の壁まで突き飛ばされたような?
えっ? となると……これは大変な事態かもしれない! 彼女の方は疾うに力尽きていそう。どう考えても勝ち目がない状況か! しかも、今の立ち位置までも最悪な局面……。彼女の後ろの壁、否、壁と呼べるのだろうか? 地上五階の高所であるにも拘らず、頭上の上半分が既に崩壊して腰の辺りまでしか残っていない、言うなれば二十メートルの断崖絶壁から落ちることを阻止するべく設けられた背の低い仕切りとでも称すべき、人工的に造られた崖のような所へ追い詰められていたのだから。もし、力任せに投げられでもしたら、草木も生えない乾いた荒地へ真っ逆さまに落ちて、一巻の終わりということになるのだ!
そして、明らかに、奴はそれを目論んでいた? 首を絞めつつ、レディを押し出そうとしていたではないかァー!
だが、レディの方は言うまでなく、両手を下にして藻掻いているだけで何もできないでいる。
――駄目だ! このままでは、落とされてしまうぞォー!――
「おい、Mがおかしい。早く助けに行け!」故に、工藤が見かねて一声を発す。同様におクウたちも危惧していたのであろう、その声を耳にする前に、階段から下の階へとひた走っていた。
とはいえ、どれだけ急いだところで時間を要するもの……。その間に、皇虎の攻めが留まる訳もないのだッ!
奴は……立ち所に、レディの体を持ち上げたかッ!
そして遂に、壁の外へ投げ出したのであったァー?




