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第7話 怒りの果てー5

 だが、その直後、空気が一変する。闘技場が緊張感で満たされたみたいな……。否、そんな生易しいものではないのかもしれない。辺りは、これまでの争いでもうもうと砂塵が舞い上がり、周囲を見渡せないほどだったが、それにも拘らず、その砂煙の奥深くに途轍もない殺気を含んだ気配が感じられたのだ!

 そして、それを逸早く気づいたのが、皇虎だった。

 そのため、これほど強い怨讐は他にないと警戒しながら一心に前方を凝視した。

……と、その時だ! 何かが煌めきながら、目も覚めるような高速でくうを走ってきた? 「うっ!」そしてそう思った途端、顔面に痛みを覚える。巨漢は堪らず手で押さえた。

(な、何が起こった? まさか……)どうやら、予期せぬ攻撃を受けたかッ? 皇虎は、焦りつつ足元を垣間見た。

 すると、そこには、〝想像通りの物〟が転がっていた。あの……超合金だ。砂に半身が突き刺さった状態でその存在を知らしめていた。

……となれば、次なる展開は決まったも同然?

〝闘技場の奥から煙を押しのけ、薄っすらと人影が現れたよう〟

――そう、言わずもがな、レディMだ!――[まるで般若のごとき形貌で登場した。怒りを全身から漂わせながら]


《漸く彼女のリベンジが始まったという訳だ》


「てやー!」凄まじい勢いで迫り来て、真正面に対峙した。と同時に、大きく足を蹴り上げたなら――とんでもない強打撃音が場内を覆った!――皇虎の脳天に、強烈なかかと蹴りを炸裂させたではないか! [それも驚異的な、これまでとは格段に違う破壊力で]

 すると、忽ち、「うくくっ!」皇虎はもんどりうって崩れ落ちた!

 えっ、何? 信じられない。これはどういういことだ。未だかつて倒されたことのない技で、いとも簡単に捻じ伏せられるなんて……。これには皇虎も、驚嘆するしかなかった。よもや敗という字のない超人が一発で倒されるなんて、考えも及ばなかったのだ!

 それなら、驚いてばかりもいられなくなったか? その原因をすぐに見つけ出さないと次なる応戦に支障が出るぞ!

 巨漢は、青ざめた顔で敵を仰ぎ見た。

、そうすると、早々にその因を理解することに……

 何と、レディの踝に、煌々と銀色に輝くアイテム――超硬合金のヒール――が装着されていたのだ! [加えて、両手にも〝超硬合金メリケンサック〟が嵌められている]

 要は、事前に工藤が用意していた対超人用の装備を、セブンから受け取って身に着けていたということか? となると……その武具を付けたことで破壊力は到底計り知れず、数倍にも達したかもしれない。まさに、鬼が金棒を得たようなものだ。これでは、いかに皇虎と言えども、無事ではいられなくなったぞ!

 しかし、そんな現状を突きつけられようとも、「ク、クソッー!」皇虎は、諦めることを知らない悪党よ。(惨めに倒されたままでなるものかっ!)と憤慨したなら、慌てて立ち上がり、無心で強力な左右のパンチを出した。……が、言うまでもなく、これまで通りにはいかなかった? レディのフックが、それよりも早くヒットし、気づいた時には腹と顔面に凄まじい強打を貰って、敢え無く丸太が豪快に倒れるかのごとく地面に倒れ込んでしまった! 

「うっう……ぐぐぐっ……」よもや、こんなことが起ころうとは!……。皇虎は、心の底から消沈した。最強の超人であるはずなのに、耐え難い痛みでうずくまりながら、まるで相手に見下ろされ平伏しているかのような格好になっていたのだから。そのうえ、さらなる危険までも……

 鬼神と化したであろうレディが、完膚無きまでに叩きのめそうというのか、闘争心を漲らせつつ、いつの間にか間近に寄ってきていた!

 万事休すかッ?……。遂に皇虎が、白旗を上げるべき瞬間が来たのだ!


 だが、その時! 突然、ローターの弛まぬ回転音が聞こえてきた。どうやら、一機のヘリがレディたちの上空を飛び越えようとしているよう。そして、それは言うまでもなく、苦境の皇虎を残し自分たちだけが安全な地に去ろうとしている、北条たちの乗るヘリだった。

 そのため、一時なりともその光景に機捜隊UPの面々も目を奪われる。当然ながら悔しさを募らせ、暗澹あんたんたる思いで見上げた。

 ところが、その一瞬に隙が生まれてしまったか?

 皇虎が、「チクショウー!」と叫びながら唐突に走り出したのだ。勝ち目がないと見なして、ゲートから外へ逃げ出したよう。

 仕舞った! これは想定外の逃走劇だ。

「待てー!」レディは、一も二もなく後を追った。同様に工藤たちもそれに続く。


 闘技場の外では、天空をヘリが舞っていた。それも、ちょうど追尾するレディたちの背景に奴らの機体が映り込むような画となって……

 ただしその画は、一見すると攻守が逆転し、機捜隊UPが追い立てられているシーンにも見えた。〝まるで、次なる波乱の幕開けを示唆しているかのよう〟

 まだまだ予断を許さない。レディは怒りを胸に、皇虎だけは逃がすまいと懸命に追走するのであった!――――




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