第7話 怒りの果て-1
1 闘士
遂に、戦いが始まった!
「うおおおーー!」男たちの銃が火を噴き、拳銃とマシンガンの弾丸が容赦なく龍子に浴びせられたのだ!
けれど、心配ご無用。龍子の動きは途轍もなく速く、容易に男たちの銃弾をかわした。弾丸はけたたましく地面を叩き、砂煙を舞い上がらせただけ。
それでも、男たちは諦める様子がなく、ひたすら発砲を続けていたという。
ただ、そうは言っても、そうそう続く道理もなく、そのうちに弾切れとなり奴らの攻撃が一旦止まった?
ならば次は、お待ちかねの龍子の反撃だ。
ただちに、マシンガンを持つ男に、ロケット弾を撃ち込んでいた。
――凄まじい爆音が轟いた!――それと同時に、「ぎやー!」男の断末魔が木霊する。数メートル上空まで噴き飛ばしたよう。
続いて拳銃を構えていた隣の男にも――怯えた顔を見せた瞬間――砲弾を見舞った! 哀れその族も虫の息か? だが、まだ油断はできない! 三人の強面が残っているのだから……
と、一瞬危惧してみたものの、結局は取り越し苦労だったみたいで、「あわわわわ……」と叫びながら必死の形相で撃ちまくる男をあっという間に排除していた。やはり、並みの極道など、どう足掻いても敵うはずがなかったのだ!
そして、そんな光景を目にして、三人のアラブ人たちもご満悦のよう。しきりに異国語で話し込んでいた。するとその後、代表者のミスターアリームが北条に尋ねてきた。
「龍子トタタカウ、アノヒトタチ、ダレデスカ?」
「なあに、ジャパニーズマヒィアの者ですよ。この世の中で、消えても誰も文句を言わない、むしろ喜ばれるかもしれん連中を集めたんですわ」
「シカシ、カノジョハ、スバラシイデスネ」
「いえいえ、まだメインはこれから。楽しみに待っていてくだされ」
〈ぎゃぎゃ、ぎゃああー!〉そうする間に、またも男が噴き飛ばされた。
これで最後の一人だ。
「うぐぐっ……」ただし、その男は、呻き声が聞こえてくるほど恐怖を感じているようだ。
それでも、〝戦わずして何とする?〟悪党の性であろうか、唐突に息せき切ってテーブルまで転がるように走り日本刀を手にした。――丸腰のまま対峙していたため――
「来るな! 来るんじゃない」次いでぶるぶると震えながらも、刀を翳して叫んだという。とはいえ、腰が引けて、到底相手を打ち負かすほどの力強さは感じられなかったが。
一方、龍子はそれを見るなりバズーカを放り投げた。もう武器などいらないという訳か? 強者らしく素手で立ち向かっていった。
すると、次の瞬間、「うおー!」男が遂に切りつけた? 剣先があわや龍子を捕える……。と思えど、いいや大丈夫だ。龍子はひらりとかわし、あっと言う間に男の腕を掴んで捻り上げた。男は抵抗もできず刀を落とす。全く、他愛もない攻めよ。これで、どう考えても勝負はあったという訳だ。されど……まだ戦いは続けられていた。龍子は非情な兵士、これぐらいでは勘弁しないのか、手を放すどころか益々強力を込めたよう。そのため、とうとう鈍い音とともに骨を砕いてしまった!
「いててて……」男の悲痛な声を耳にする。明らかに、成す術がなくなったに違いない。ところが……えっ! まだ終わらない? 龍子の攻めは続いて、何と、無残にも両手で男の首を捻じ切ってしまったではないか!
男は、操り人形の糸が切れるかのごとく、その場に倒れ込む。
まさしく龍子の戦いぶりは、甚だ凄まじくもあり、冷酷無比でもあったのだ!
この成果に、忽ち割れんばかりの拍手が鳴り響いた。それとともに、異人たちの賞賛も強者に送られる。
龍子は満足そうな顔を見せた。そうして後は、一礼をしてゲートの外へと出て行った。
どうやら滞りなく、前座の催し物が終焉したようだ。
……と、その直後、静けさが闘技場を埋め尽くしたか? 全観客が、これから起こりうる出来事に魅了されていたに違いない。ピリピリと肌にまで緊張感が伝わってくるような雰囲気が漂ってきたのだから。
〝そう、お待ちかねの、新たな戦闘の始まりだ!〟北条も、この時が来たのだと息を呑む。
よって、第一ゲートから地響きのような足音が聞こえてきた。と同時に、野獣の底知れぬパワーが全身から滲み出ているかのごとき影も、徐々に見えてきたか?
――言わずもがな、皇虎の登場だった!――腰には、まるで買い手にアピールするかのように、あのヒトゲノム改造兵器『HY9』の液体が入ったボトルも携えていた。[左右2本、確りとベルトで固定された状態で]
続いて、もう一つのゲートからも好敵手と呼べる兵士が現れる。
〝レディMだ!〟彼女の勇姿があった。
ここに、最終決戦の火蓋が切って落とされようとしていたのだッ!




