表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/48

第3話 仲間の危機(3)

 漸く、騒動も終わったかに見えた。レディも一先ず安心する。

 ただそうは言っても、未だ目の前には、堂々と仁王立ちした状態で、こちらに視線を投げかけている皇虎おおこの姿があった。

 そのため、ここは早く退散した方が無難だと思った彼女は、すぐさまその場を去ろうとした……のだが、どういう訳か皇虎が、脇目も振らずどんどんとレディの方へ近づいてきた。

 うむっ? これは何を意味している? まさか、彼女の人並外れた防御力を見て、勘づいたのではないだろうか? 彼女が、前夜の刺客だということを!

 となると、皇虎のパワーは龍子りゅうこの比ではない故、戦う羽目になったら、恐ろしいことになるぞ! 大人数がいようとも、奴ならこの場で死闘に持ち込む可能性もあるのだから。

 これは、難儀なことになった!……

 レディは、どうすべきか一心に思案した。可能ならば、〝今から逃げる〟……とまで考えた。

 そして、戸惑っているうちに、とうとう奴が間近に来てしまったかッ!

 彼女は息を呑み、体を硬直させた……

「ちょっと、いいかしら」ところが、奴は予想に反して穏やかな口調で話しかけてきた? 「あなたは、龍子のクラスの転入生? だったかしら」と、淡々と訊いたのだ。どうやら、その言い方から判断して、まるっきり敵意はなさそう……

(良かった、ばれてない!)

「ふううっー」レディはホッと胸を撫で下ろした。それから、気を落ち着かせて、「は、はい。そうです」と答える。

 すると、次に皇虎は、「いい動きしてるわね。龍子のパンチを受けたけど。あなたは一瞬後ろに引いて、衝撃をかわしたわね」と言った。

 やはり奴も、超一流の戦闘員であろう。彼女の動きを見抜いていた。確かに奴の言う通り、あの打撃を受けた瞬間、彼女は高等テクニック、スエーバックをやっていた。そのお陰でダメージは少なかったのだ。

「何か訓練していたの?」

「ええっ、幼い頃から、父に武道を習っていたんです」

「そうなの、だから俊敏なのね。どうかしら、近い内に私たちの委員会に参加しない?」

 しかしその言葉を聞いて、すぐに反応を示したのは龍子の方だった。

「アネキ、何でそいつを加えるんだ!」と横槍を入れてきたのだ。

「黙れ! お前は口を出すんじゃない」だが、即座に皇虎は一喝した。それから、もう一度レディに向かって、「ねえ、考えてみてちょうだい」と誘った。

「はい」と彼女は一言答える。

 皇虎たちは、その言葉を最後に、そこから去っていった。何とか今回こそ、無事に済んだよう……


 悶着が終わった後も、龍子は不満そうな表情を見せていた。

「アネキ、どういうつもりだ? あんな奴を会にいれるのか?」と皇虎に食って掛かった。

 が、姉の方は、諭すように言った。

「龍子よ、優秀な者は内に取り込む。それが定石だ。敵にすると厄介だからな」と。

「…………」妹は黙った。姉の説得に一理あると思ったのか、差し詰めここは退いた感だ。

 ただしその後、龍子は姉妹にとって等閑なおざりにできない話を持ち出したか?

「族に関する情報はどうするんだい? まだ何もつかめてないぞ」と。

 それには皇虎も、

「さあて、分かっているわ。もう雑魚をつついても出ないだろうしね。あのとき、トラックさえ邪魔しなければ捕まえられていたのに! 口惜しいねえ」と悔しさを声にする。

 すると、その様子を見ていた龍子は、前回のことを思い出したみたいで、少し興奮気味に言った。

「けど、あの族も、結構強かったのには驚きだよ。アネキが倒されるとは思わなかったわ。私は、裏社会で噂になってる秘密組織のMというのが強いらしいとは聞いているけど、アネキはそれ以上のはずだ。それをいとも簡単にやるとは、信じられなかったわ」

「なあに、油断しただけ……お前が言うM? とかも、名前だけが有名になって本当の実力などありはしないさ」

「そうかい。私は、裏で名が通れば、かなりのやり手だと思うがね。話によれば、大柄なゴリラ女だそうだけど?」

「ふふふ、そのうち、いやが上でも戦う羽目になるさ。そのときに見せてやるよ、格の違いを……」と自信ありげに語ったところで、皇虎たちの会話は終わった。


 一方、レディは、皇虎たちの後をやれやれと見送っていた。

「奴らの目……黒いコンタクトか」と呟きながら。

「ねえさん、大丈夫か?」そんな中、すぐに康夫がレディの元へ駆け寄ってきた。

 彼女は、「ああ、何とかな。でも、ありがとうな、危ないところを助けてもらって」と素直にお礼を伝えた。康夫の援護に心から感謝していたのだ。

 とはいえ、彼の方は全く気にしていない様子だ。恩義など感じる必要はないとでも言いたそうに、

「いいってことよ。俺とねえさんの仲じゃねえか」という言葉を返してきた。

 レディは、多少なりとも康夫を見直した。

 そして結局のところ、終わって見れば、二人とも怪我もなく乗り切れたようだ。

 ところが、そう安堵したのも束の間、新たな問題が彼の口から告げられたか?

「それより大変なんだ。雅がいなくなった」

「な、何だと!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ