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悪夢フラストレーション  作者: 源小ばと
47/54

47.魔法銃

「魔法銃…?てことはヒルトじゃないのか?」


「魔法銃って何?」


「魔法をこめた銃だよ。魔法を使えなくても、簡単に扱える」


「じゃあペール?」


「そうかも」


ヴァニーユとイコは早口で言葉を交わす。


「村にはゼムくんの本体があるんだから!ゼムくんに何かあったら大変!」


その間を割って入り、フレーズが叫んだ。


「ヴァニとイコちゃんは一旦村に帰って状況を確認してきてくれ。ここは俺たちが食い止めておく」


外から目を離さず、ペッシェが言った。


「だけど…」


赤と白の群勢にヴァニーユはすぐに動けない。


「心配だと思ったら、さっさと用事すませてまた戻ってきてください」


ポワールがそっけない口調で言う。


「大丈夫です、ヴァニ様!さあ早く」


フレーズにも急かされ、ヴァニーユは強くイコの手首を掴んだ。


「じゃあちょっと言ってくる!」


目が回るようなスピードで夢の世界を通り抜け、現実の世界へと戻る。


本物のゼムの体が横たわる村に帰還したとたん、耳には大きな音や叫び声が聞こえてきた。


「ヴァニーユ!」


すぐさま息子の姿を確認し、ムロンが駆け寄ってきた。


「今、どうなってるんだ?」


「魔法銃を持った男が結界を破壊しようとしている。

込められている魔力も大したもんだが、あの銃自体に魔力を増幅させる加工がしてあると思う」


「科学との融合か」


皮肉めいた言葉を呟きながら、3人は村の中央へと移動する。


そこには高齢の男女が中心となり、苦悶の表情を浮かべながら光の柱に手をかざしていた。


その柱に時折浮かぶ映像…深い皺の刻まれた顔に、楽しげに歪む口元。

ゴツゴツとした銀色の銃を手にしているのは、間違いなくペールだった。


ヒルトの姿はなく、数匹の魔法生物を連れている。


「こっちは精神的にも肉体的にも披露して魔法を展開してるのに、あっちは何丁か銃を持ってきてるらしい。疲労も何もない」


ムロンは大きく肩で息をしてる女性を休ませ、代わりに柱に手をかざす。


「そのまま親父たちは頑張っていてくれ。あいつは俺が倒してくる。イコはここにいて」


「わたしも一緒に行く!」


「ダメだ。ゼムのそばに」


カッ!


その時、光の柱が大きく輝き、そして消滅した。


柱を囲んでいた村人たちは衝撃で地面に伏せる。


「親父!」


「大丈夫だ…」


「現実世界で会うのは初めてだなぁ」


振り向くと、銃を自分の肩にぶつけながらペールが立っていた。


「まさか自分の魔法をこういう形で使えるとはね。ヒルトくんの天才ぶりに感謝だ」


何重にも重ねていた結界が簡単に破られた…

絶望にも似た黒い影がイコの心を覆った。


「お前らの天才くんを使って面白い事をしてくれたみたいだな?こっちの夢にも影響が現れた。だから、わしたちは両方からそれを壊すことにした。わしは現実世界で天才くんの本体を壊す。ヒルトは夢の世界の天才くんを壊す。完璧だろ?」


やはりヒルトは夢の世界へ…残った3人の顔が浮かぶ。


「それじゃあ、さようなら。この村の歴史は今日で終わりだ」


「それはどうかしら?」


ペールの背後から甘い声がした。


こちらからは姿は見えない。


でも、その声は唯一無二の、間違えようもない声だった。

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