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悪夢フラストレーション  作者: 源小ばと
35/54

35.君の魔法

「あぁ、ダメだ。妨害されてて上手くいかない」


ゼムとの通信を諦め、ヴァニーユは苛立ちを隠せない。


「繋がればショコラの居場所がわかりそうなのに」


「例の塔を目指すか?ショコラさんもそこへ行ってるかも知れない」


冷静さを装ってるが、声に不安が混じっているリモーネ。


「さっきまで首謀者はイコと一緒にいたから、捕まってはいないと思うが」


パートナーの不在に、いつもより声に張りがない。


イコはハッとしてしゃがみこむと、両手を地面に押し当てた。


湿った草と散らばった小石が手の平を押し返す。


さっきの感覚…おじいちゃんの魔力を使えれば、彼女の行方がわかるかも知れない。


「イコ、どうした?」


「体調でも悪いのか?」


2人の声を頭上に感じながら、目を閉じて集中する。


夢の世界に残るわずかな祖父の力を感じ、この場所にいない他の魔力を探す。


そして、僅かなサインが小さく瞬く。


「ショコラさん…かな」


「え?」


イコは立ち上がり、この先の森の奥を指差す。


「さっきの奴らとは違う魔力反応が向こうにあるの」


「イコ、いつの間に魔法が使えるようになったんだ?」


ヴァニーユが目を丸くする。


「わたしの力じゃないの、きっと。この世界のおじいちゃんの力を利用できる…そんな感じ」


「とにかく、行ってみよう」


リモーネに促され、イコの示す先に歩みを進める。


「ショコラさん…!」


すぐさまリモーネが異変に気付いた。


太い木の枝にぶら下がっている、大きな網状の袋。


その中に膝を抱えるようにしてショコラがいた。

目は閉じていて、小さな人形のようだった。


「ショコラさん!」


下からもう一度、大きな声でリモーネが呼んだ。


ショコラは睫毛を震わせると目を開け、力なく口を開いた。


「この網…魔力を吸ってるみたいで、上手く力を出せないのよねぇ。この木の後ろ、見てよ」


弱々しい声に指示されたところをみると、幹の影に薄い紫色の獣が倒れていた。


「スィートピー!」


リモーネがもう動かなくなっている獣を撫でる。


今度は幻覚ではなく、本物のスィートピーのようだった。


「…こないだ幻覚で取り乱したのがバレたからね。本物を置いていきやがったみたい。近づいたら、綺麗に罠に引っかかって、このザマよ。クソ…あいつら殺してやる」


強い言葉と裏腹に、ショコラは喋るのもしんどい様子だ。


「今、助ける」


ヴァニーユは剣をきらめかせると、枝を切り落とした。


そしてリモーネが網ごとショコラを抱きとめる。


剣の先を使って網を切ろうとするが、なかなか上手くいかない。


「魔力を吸ってるからなのか…?」


「そういう魔法を編み込んでるのだろう」


ヴァニーユとリモーネの表情に不安が滲む。


ショコラは再び目を閉じて、リモーネに体を預けている。


「鬼ごっこはお終いだね」


音もなく、近づいていた。


涼しげな顔をして、ヒルトが立っている。


「狙い通りに罠にかかってくれて、嬉しいよ。感情的な女性は引っかかりやすいよね」


「お前が首謀者か」


ヴァニーユが剣先をヒルトに向けた。


「凄い魔法だよね。大賢者にも引けを取らないと思うんだ。この世界を作り出すなんて」


ヒルトは空を仰ぎ見る。


「ナルシストか?随分自分に自信があるんだな」


「ボクを褒めてるんじゃないよ」


ヴァニーユの嫌味にかすかに笑う。


「ヒルト!」


そこへペールがやって来る。


「お前はまたそう自由に…」


「怒らないでよ、君を褒めてたんだ」


ヒルトは自分の右手の平を開いたり、閉じたりする。


「君の魔法は最高だって。ボクがもっと上手に使えたらいいんだけど」




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