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悪夢フラストレーション  作者: 源小ばと
28/54

28.スィートピー

「逃すか!」


瞬時にショコラが反応し、右手をかざした。

赤い鳥の進行方向に木の壁が出現し、鳥は急いで方向転換する。


「ショコラさん、あんまり夢を作り変えるとマーガレット嬢を見つけるのが困難になる」


「わかってるわよ!」


リモーネの苦言にショコラが噛み付いていると、赤い鳥は扉が外れかかっている暗い部屋へと消えていった。


ショコラを先頭にその部屋へ入り、彼女の魔法でその空間が照らされる。


すると。


薄い紫色の毛を持った大きな獣が横たわっていた。

それに群がる数十匹の赤い鳥。

鋭い嘴で獣をついばみ、凄惨な状態ー。


「スィートピー!!」


悲鳴に似たショコラとリモーネの驚きの声が混じる。


イコは両手で口元を抑え、かろうじて叫び声を抑える事ができた。


「落ち着け、お前ら」


ヴァニーユは素早く剣を抜くと、獣と赤い鳥の群れに勢いよく振り下ろした。


すると、煙のようにその姿は消える。


「…奴らが送り込んだ悪夢だ。ショコラ主体の夢のはずなのに、もう侵入できている。対応力が早いな」


「しかも、スィートピーの飼い主の俺たちの為に、わざわざこの映像か…良い性格をしてるな」


剣を納めながらヴァニーユが言うと、リモーネは眉間に皺を寄せた。


「…大丈夫か?ショコラさん」


青い顔をして固まっている彼女をリモーネが気遣う。


「…大丈夫に決まってるじゃない。随分舐めた真似をしてくれるわね」


威勢の良い言葉とは裏腹に表情は優れない。

スィートピーを可愛がって世話をしてきた事が、イコには良くわかった。


「とにかく、早くマーガレットを探そう」


雰囲気を変える為にヴァニーユは明るい声を出して、部屋を出る。


「キャー」


遠くから女の子の悲鳴が聞こえた。


「急ぐぞ」


4人は小走りになり、廊下を進む。

時折、腐った木の板が足の邪魔をする。


「ショコラ、正確な位置を確認できるか?」


「その階段を下りたら右!3つ目の扉」


「了解」


階段を下りきり、廊下を右に曲がろうとすると…。


兎頭がいた。


3体、それぞれ手に大きな肉切り包丁、ハサミ、槍を持っている。


「イコはさがってろ」


ヴァニーユは兎頭から目を逸らさずに剣を抜いた。


「1人、1匹でいいな」


リモーネは腰から短剣を2本取り出し、構えた。


「…ぶっ飛ばしてやる」


ショコラは小さな金属の杖を取り出す。


そして3人同時に動き出した。


ヴァニーユは振り下ろされる包丁を受け止めると、兎頭の腹を蹴り、体勢が崩れたところを切り裂いた。


リモーネは巨大なハサミの刃の間に一本の剣を差し込み、もう一本の剣で胴体を突く。


ショコラは杖から光線を発し、兎頭の動きを一瞬封じる。

すかさず背後に回り込み、首の後ろに杖を突き立てた。

激しい光が生まれ、兎頭の体が包まれる。


あっという間に3体は消え失せた。


イコは思わず拍手をしそうになった。


「もう兎頭も侵入してきやがる…」


ヴァニーユが小さく舌打ちをすると。


「うっ…うぅっ…」


ショコラが示した部屋の中から、少女の泣き声が聞こえてくる。


4人は顔を見合わせ、すぐさま扉に駆け寄り、部屋に飛び込む。


部屋の中央にうずくまった少女が体を震わせながら、泣いている。


「怖いよぅ…助けて…怖いよぅ」


「もう大丈夫よ」


ショコラが部屋に灯りを灯した。


ハッとした様子で、少女は顔を上げた。


長かった髪はざんばらに適当に切られ、体中のあちこちに傷があり、洋服も汚れている。


「助けて…兎が…兎が来るの…」


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