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悪夢フラストレーション  作者: 源小ばと
25/54

25.誰かの仕業

落ち着いたベージュの壁紙のシンプルな部屋。


ベッドに横たわる三体のアンドロイド。


一体は男性でもう一体はまだ少女だ。

そして、三体目はリーグ。


皆、身体からチューブが伸び、なんだかわからない機械に繋がっている。


ゼムは一つ一つ確認をしているが、管轄外のヴァニーユとイコは壁際のソファーに座ってその様子を眺めている。


「うーん」


軽く首を傾げるゼム。


「アンドロイドたちは製造元…つまり〈出生地〉が違うし、性別タイプも成長サイズも違うし、共通点がないね。共通点がないものの、脳部分にあたる所にアクセスされたかなぁ」


「やつらの実験は成功したってことか?」


「いいや、まだ実験中ってところだね。試作段階。この二体は、リーグ氏ほど深くスリープモードに入ってないかな。これで成功したら、もっと沢山のアンドロイドにアクセスしてくるだろうね」


「…なるほどね」


ヴァニーユは頭の後ろで両手を組んで、背もたれによしかかった。


バタバタ…


廊下から忙しない足音が響いてくる。


「…だ」


「…っと待って下さい!」


それと男性2人の話し声。


ノックもせずに乱暴にドアが開けられた。


「図々しく戻ってきたか、小僧」


髪を綺麗にオールバックになでつけた、線の細い男性がゼムに鋭い声を投げかけた。


「私が、私が頼んだんですよ、ナオム博士」


その背後で年配の男性が狼狽えている。

声を聞く限り、ゼムに電話を掛けてきた人物だろう。


「僕が戻ってきたらトップじゃなくなるから邪魔なんでしょ、ナオムちゃん」


ゼムはポケットに両手を広げ入れて微笑む。


「…なんだと」


「大丈夫、今だけだから。解決したらまた出て行くよ」


「解決、ね。これはお前が仕組んだことなんじゃないのか?」


ナオムは鼻をふん、と鳴らした。


「夢を見てるような状態で倒れたアンドロイド。夢の魔法使いの所へ行った天才博士。人間になりたいなんてぬかすお前はアンドロイドがどうなると知ったこっちゃない。堂々といろんな実験ができる。違うか?」


「…考えすぎだよ」


「そう考えてるのは俺だけじゃないぞ」


「じゃあ、みんな考えすぎだね」


微笑みを絶やさずにゼムは刺すような視線を受け止める。


ナオムは今度は隅にいるヴァニーユとイコをちらりと見た。


「この貴重な施設に人間どもを連れてくるとはな」


「言葉に気をつけなよ。偉大なる魔法使いと、大賢者の孫娘だよ」


「大賢者の…?」


その名は効果絶大だったようだ。

ナオムはそれ以上2人には絡まず、


「これ以上犠牲者を出すなよ、小僧」


と言うと部屋を出て行った。


「申し訳ないです、ゼム博士。この研究室には誰も入れないよう、徹底的に管理致しますから」


年配の男性は体を小さくしながら、頭をペコペコ下げた。


「なんかごめんね、マギーさん」


「いいえ…元気そうで良かったです、博士」


そこでマギーと呼ばれた男性は、初めて笑顔を見せた。


「何か用事があったら連絡下さい。協力させて頂きますので」


「ん、ありがと」


再び三人だけになり、ヴァニーユはおもむろに立ち上がった。


「ちょっといいか」


手鏡を取り出し、男性と少女、それぞれの頭付近に近づけた。


「確かに…まだきちんと夢の形をしてないな。このままだと忍び込めないかな。こちら側から魔法で補助してやらないと」


「お手伝いしてあげよっかぁ〜」


お菓子みたいな甘い声。


三人がハッとして振り返ると、入り口に一組の男女が立っていた。


筋骨隆々の男性と少女のように小柄な女性の組み合わせー。


「ショコラ、リモーネ。どうしてここに?」


「あの後、あんたたちの動向を探ってたわけ。人が出入りするタイミングでちょこちょこっと」


ショコラは腕組みをして、ドヤ顔を見せる。


「俺たちも情報が欲しい。一体、何が起こってるのか」


リモーネの声に切実なものが混じった。


「いいじゃないの〜使えるものは使ってこ」


「…あのなぁ、ゼム」


「僕は合理的な方が好きだなぁ」


ヴァニーユは何か言いかけようと口を開いたが、結局閉じてしまった。


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