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その1 パンツはまだ脱いでない

 謎の声が聞こえなくなると同時に、徐々に周囲が明るくなっていく。目の前に広がるのは荒野。さっきまでいたマンションの部屋とは明らかに違う。


「ここは…」


 俺はラノベの主人公のような不自然な鈍感さは持ち合わせていない。むしろ仮面ライダーのようにベルトを渡されれば戦い方から変身ポーズまで察する人間だ。自分が今どういう状況かくらいすぐにわかる。


「異世界に!俺は異世界に来たんだ!」


 自販機でコーラを選んで出てくるのはお汁粉(冷)、インフルエンザは冬休み真っ只中にかかるもの、地面にキラリと光るものは小銭ではなくガラス片。これまでの17年の俺の人生ではこれが常識だった。

 だがそんなクソみたいな生活はもう終わり!これから俺の異世界ハーレム生活が始まるのさ!何で異世界=ハーレムみたいに結びついたのかは謎だけどまあいいや!


「よし、踊ろう!」←?


 心臓はかつてないほどに拍動する。凄くいい気分だ!今ならフルマラソンだって3往復はできる!そういえば俺は学校に行くために指定の黒いズボンと真っ白の半袖Tシャツを着ていたな。カッターシャツも着ておけばよかった。いや、魂のダンスにはこんなもの必要ない!まずはベルトを外しズボンをおろす。そして


「そこの変態、止まりなさい」


 終わった。全てが終わった。異世界生活1日目、まさか獄中からのスタートとは思わなかった。

 いや待て落ち着け。そんな初っぱなから諦めてどうする。数々の異世界転生をはたした主人公たちは逆境を乗り越えることでチート能力に目覚めたり努力を積み重ね成功を納めているじゃないか。これは「試練」だ。過去に打ち勝てという「試練」とオレは受けとった。

 誰だ?そんなことになる時点で詰んでるとか思ったやつ。戦争がしたいならはやく言え。


「待て、話せばわかる」


「そうね、話さなくてもわかるわ」


「落ち着いて、まずは俺の話を聞いて。俺にはまだ情状酌量の余地があるはずだ」


「何よ」


「パンツはまだ脱いでない」


「お話は向こうで聞くわ」


「通報だけは勘弁してください」


 この状況まずい!後ろでごそごそ何かを取り出すような音も聞こえるし非常にまずい!今はケータイだって俺を抹殺しうる凶器になる!早く弁解しなくては待ってるのは破滅の運命のみだ!

 そう決意し後ろを振り向いた。


「おい待っ刃物はよくないと思うなぁ」


「正座」


「ウィッス」


 マジもんの凶器持ってたぁぁあ!?そうかここは異世界!誰もが武器を携帯してる世界でもおかしくない!むしろケータイを持ってるほうが不自然だ!


「さて、ここで選択肢です。このままスマホで通報されるか、ここで殺されるか」


 ケータイあるんかい!持ってるなら先にそっちを出せよ!なに優先的に殺そうとしてんだ!

 くそっ、こんなひどいことをするなんて何者だ!死ぬ前にせめてどんな顔のやつかだけでも拝んでやる!


「とりあえず正座…って、どうしたのよ。急に固まって」


 俺の動きが止まったのは、彼女が某大作RPGよろしくの格好をしていたからでも、向けられた剣が思ったより大きいからでも、ましてや今日の俺が見せづらい恥ずかしいパンツをはいていたからでもない。


「…そんな」


「?」


 俺の前から消えた、消えたあいつが何で今、ここにいる。

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