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■最終話 キタジマ シュン エンド


 

 

数年後。


キヨとミチが紅白に飾り付けられた村の小さな集会所で、背中を丸めお茶を

すすっている。

 

 

 

 『いつ始めるのかね~?』

 


 『ほんとに始まるのかね~?』 

 

 

 

そんなふたりは黒留袖姿だった。


高齢で曲がった背中に重そうで厳かな袋帯があるも、それは嬉しそうに幸せ

そうに存在感を醸し出す。

 

 

 

 『まさか、親戚になるとはねぇ~。』

 

 

 『これだけ長く生きてても、


  まだ驚かされる事があるんだねぇ~。』

 

 

 

その時、紋付袴姿のキタジマがマコトの腕を引っ張り叫んでいた。


祝儀を執り行う部屋の隣の部屋から、その張り上げる声は響いて丸聞こえの

状態で。着付け担当の叔母が困り果ててキタジマへと苦笑いを浮かべている。

 

 

 

 『コレ着なきゃはじまんねーだろ!!』

 

 

 『あたしは、このままでいいってばー!!』

 

 

 

白無垢を着せる為に躍起になっているキタジマと、ジタバタと暴れるマコト。


もう開始の時間は過ぎているというのに、マコトは突如白無垢に着替える事

を拒みだし、叔母が着せようと羽織らせたそれをスルリと脱ぐと再びTシャ

ツを頭から被って着なおした。

 

 

 

 『俺だけこんな格好で・・・


  どんな羞恥プレイだ!


  お前だけTシャツっておかしいだろっ!!』

 

 

 『あたしは気にしないってばー!!』

 

 

 

中々、始まらない挙式。


着替え室から思い切り響いているすったもんだのそれに、参列者が待ちくた

びれて欠伸をしはじめた。

 

 

 

 『まだまだ掛かりそうだから、キヨさんトコで飲み始めますか?』

 

 

 

参列者のその言葉に、ぞろぞろと集会所から徒歩で数分のキヨ宅へ移動する

一同。家紋が入った黒紋付きで片手に閉じた扇子をパチパチと打ち付けなが

ら会場を後にする。

 

 

みな呆れ顔だったが、そこにはあたたかい笑みが溢れていた。

 

 

 

 

 

 

やっとの事で式がはじまり、その後は一同での写真撮影があった。

 

すでに挙式前に飲んで赤ら顔の、黒紋付きの参列者の面々。女性陣も心なし

か正装の着物がくたびれ、それに負けじと疲れたような顔をしている。

 

 

そして当の新婦はなにが気に入らなかったのかふくれっ面で、なんとか無理

やり着せた白無垢はよれて着崩れている。


そんな新婦の隣で、疲れ呆れ果てて大笑いをするキタジマ。

 

 

昔あんなに嫌忌していた写真撮影だったはずが、なんだかもう可笑しくて可

笑しくて気付けば大掛かりなカメラに向かって思い切り笑っているその横顔。

 

 

もう、めちゃくちゃな記念写真だった。


皆が皆、一様に好きな方向を向き好きな表情をし、全くじっとしていないも

のだから撮影する写真屋が仕舞には怒りはじめる。


一同の最前列の真ん中で、新郎新婦は揃って左手をグウにして前に突きつけ

ている。

 

 

そんなふたりの薬指には、まばゆい光の環が在った。

 

 

 

 

 

数日後、ハガキの束がポストに投函された。

 

 

 

  ”私たち、このたび結婚しました。


   これから、二人で力を合わせ


   明るくて楽しい家庭を築いていきたいと


   思っています。 


   今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

  

 

                キタジマ シュン


                     シュン ”

 

 

 

 

連名のシュンの結婚報告ハガキに、幸せそうに大口あけて大笑いするふたり

が写っていた・・・

 

 

 

 

                              【おわり】



引き続き、【眠れぬ夜は君のせい】番外編(コースケ&リコ)をUPしていきます。暇つぶしにでもどうぞ。併せて【本編 眠れぬ夜は君のせい】も宜しくお願いします。

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