新たな仲間
ちょっと集中力が切れてきました……
一回リセットしよう……
「君、名前は?」
「私はサラ。勇者様は?」
「僕はハヤト。よろしくね」
「よろしくお願いします」
酒場へ向かう途中、二人は簡単に自己紹介をする。そういえば、あの時少女のこと何も聞かなかったなと思いつつ歩みを進める。
酒場へ到着し、二人は中へ。そこで店員にマスターを呼んでもらう。
「勇者様。この度はどうされましたか?」
「実は、シグレさんが……」
「え……シグレが、死んだ?」
シグレの死に、マスターは明らかに動揺している。無理もない。元々親友だったらしい二人だ。付き合いの短いハヤトですらああだったのだから、親友の死を伝えられた彼の悲しみは計り知れない。
「すみません、僕のせいなんです」
「……いや、冒険者の死は珍しくもなんとも無い。仕方の無いことだ」
「そう、ですか……」
「それでは、別の冒険者をさがしますか?」
「お願いします」
シグレの死を知った瞬間動揺していたマスターだが、その表情はすぐに消え、いつも通りの接客をする。だがハヤトには分かる。彼の表情の、その裏の心が。
「ごめんなさい」
ハヤトは彼に聞こえることの無い謝罪をもう一度呟いた。
新たな仲間は魔法使い回復型の女性だ。ニコニコと、子供っぽく笑う彼女はハヤトよりも二つ三つほど歳上か。そして、その顔はどこかで見たような気がして。
「あ! 教会の神官の方!」
「名前はメル。どう? 心は落ち着いた?」
「はい、さきほどはすみませんでした。」
ハヤトは先ほどの取り乱した様子を見られていたことを思い出し、少し気まづく思いながらも平常を装って受け答える。
「よかった。でもよくこの短時間で落ち着きを取り戻したものね」
「それはこの子が……」
「サラです! ハヤト様とクロムを倒すために冒険しています」
「へぇー。こんな小さな子にねぇ」
小さな女の子に助けてもらったハヤトをニヤニヤとした目つきで眺めるメルは人をからかうのが好きな女性だと分かる。分かっていてもやはり恥ずかしいもので、ハヤトは顔を赤くしてメルを睨んでいた。
「ま、これからよろしくね」
新たな仲間ができ、ハヤトは二人を守り抜くことを胸に刻み込んだ。
「でも、やっぱり僕は勇者をやめたいなんて言っておきながらこうなることを望んでたんだなぁ」
勇者をやめて死ぬと国を飛び出そうとしたハヤト。だが勇者の証は捨てなかった。それは心のどこかで勇者をやめたくないと、そう思っていたのだろう。
「やっぱり、僕って弱くて、優柔不断で、勇者になんて向いてないよなぁ」
肉体的にも精神的にも自身の弱さを痛感した。これを克服しなければならない。一歩ずつ、成長していけばいいのだと、今はそう思う。
ハヤトたちの去った酒場で、マスターは一人涙を流す。
「くそっ……くそぅ」
ハヤトたちの前では平常心を装っていた彼の心は想像以上に壊されていた。
「シグレ……必ず生き返らせてやるからな」