勇者になった少年
思い立ったらすぐ行動!
突発的に小説を書き始めました。
第一作目となる今回で文章力をつけられればと思います。
駄作ですがどうぞ覗いていってください。
追記……予想通り没作となりました。
ただ、消すのも勿体無いと思い、残すことにしました。
僕が有名な作家になったときに、初めはこんな駄作を書いていたんだということを皆さまに知ってもらい、他の作家さんたちがこれを見て自信をつけてもらえればと思います。
遡ること3年。
突如現れた謎の龍によって放たれた魔力によって、この世界における魔物の勢力が増大した。
そして今、世界は滅ぼされようとしている。
この龍は、古くから人々にクロムと呼ばれ、親しまれていた世界の守り神だった。
だが今、世界の守り神だったはずの龍を皆恐れ、そして討伐しようと何人もの戦士が竜に挑み、散った。
そして今日、現存している数少ない村であるスノア村で、勇者を決めるための占いが行われようとしていた。
今日は村の歴史上初めての、生贄を用いての占いが行われる日。
目的はシンプルで、クロムを倒すための勇者を、村の守り神に選んでもらうためだ。
守り神とは、スノア村を創設したとされる竜のことで、村に代々伝わる歴史書には
『村に危機が訪れた時、生贄を捧げて竜に導きを乞えば勇者が誕生するだろう』
と書かれている。
もちろん本当に竜がいるかどうかは定かではないが、他にどうすることも出来ないので歴史書を信じる他ない。
こうして今日、儀式が行われるわけだが、村の少年ハヤトは生贄に選ばれてしまったのだった。
昔から他人と比べて体力が無いこともあって、生贄が彼であることに反対する者はいない。
このご時世、強い者が偉いのだ。
村長はこの村で一番強い者が任命され、下克上式で代替わりする。
当然、村の中同い年の友達との力比べでも、最下位争いをしていたハヤトは生贄に最適だった。
彼の親ですら一切反対しない。
と言うのはハヤトは捨て子であった。
物心ついた頃には彼の産みの親はすでに行方しれずで、ハヤトは自身の親を知らない。
育ての親曰くハヤトは村の滝のほとりに大切に置かれていたそうだ。
そして彼らは村長の指示でハヤトを育てているだけであって、一切ハヤトのことを大切に思っていなかった。
そういうわけで両親はハヤトが生贄にされることになんの反論もないのだ。
実の子供ではないからそれも仕方の無いことだろう。
結論としては彼がこの生贄の役目を避けることは出来ない。
ハヤトは生きることを諦めていた。
儀式は正午に行われる。
昼前にハヤトは両親に連れられて儀式が行われる場に着いた。
場所は滝の上で、生贄はそこから飛び降りるのだ。
正午になり、ついに儀式が始まった。
ハヤトはというと生贄に選ばれたと聞かされ、初めこそ泣き叫んでいたものの今は諦めたような表情で滝の上に立っている。
怖くないわけはない。
それでも、諦めてしまえば気持ちは楽になった。
開き直りのようなもので、死ぬ覚悟も出来ていた。
儀式が始まって30分ほど経ち、それは終わりを迎えようとしていた。
ハヤトは耳を疑った。
生贄に選ばれたと聞かされたのだ。
「なんで……」
村人は約200人。
生贄はその200人から1人選ばれる。
そしてそれに選ばれてしまった。
親は冷たかった。
ハヤトが生贄に選ばれたことになんの反応もせず、どうせすぐに死ぬのだからと彼にご飯を与えない始末。
夜は空腹と孤独と恐怖で眠れない。
その日ハヤトは一晩中泣き続けた。
儀式が始まってかなりの時間が経った。
占い師のおばあさんが何やらぶつぶつと、つぶやいている。
ハヤトの心は自身でも意外なことに、かなり落ち着いている。
もうすぐ死ぬんだなあ、なんて呑気に考えている。
ふと、おばあさんの声が聞こえなくなる。
ああ、ついに。
村長の合図があり、親に別れを告げてハヤトは滝から飛び降りた。
大きな水しぶきを上げてハヤトは滝壺へ落ちる。
滝壺は深く、高さ20メートルはあるであろう滝から飛び降りても足は底に届かない。
そして運がいいのか悪いのか、気も失っていない。
一命は取り留めたものの、溺死するとなると相当苦しい思いをしなければならないだろう。
しかし泳ぎの得意でないハヤトはどうすることも出来ずそのまま水の流れに身を任せ、水中にある洞窟へ吸い込まれていった。
「ぷはあ!」
空間に出た、生贄失格だ。
「真っ暗で何も見えないな」
岸があったのでとりあえずよじ登る。
何も見えないことは分かっているが辺りを見まわす。
そう言えば、なぜ水の流れができていたのだろう。
洞窟はここで行き止まりだから水の流れはできないはずなのに。
などと考えていると、
ゴクゴク……
なにやら生き物が水を飲む音。
ハヤトがそちらへ目をやると、赤い光が見える。
「んー?」
光の方へ歩み寄る。かなり大きな丸い光だ。
つついてみると……
ギャアアアアアアアア!!!
「うおっ!?」
なに今の、びっくりした! と少し後ずさり。
「あ、あんた……なんてことすんのよ」
「だ、誰ですか?」
「私はセレン、この村の守り神よ、一応」
なんか語尾が怪しかった気がするけど。
「本当に神様ですか?」
「ええ、そうよ」
と言うがその自慢げな喋り方は神様のイメージと掛け離れている。
「全然神様っぽくないですね」
ハヤトは思ったことは口に出すタイプだ。
「ちょっと、本当だって。何なら姿見せてあげるし」
自称神様の彼女?がそう言うと、途端に辺りが明るくなった。
そして彼が見たのは……
大きな大きな龍だった。
光は体から放たれていて洞窟内が明るく照らされる。
黒くて大きな体に硬そうなウロコがびっしりと並び、羽が生えている。
ベタな龍だ。
そしてその姿は……
「……クロム!」
「違うわよ。それは私の夫」
「クロムの妻……こ、殺される!」
「そんなことしないわよ! 元々クロムも優しい龍なのよ」
「じ、じゃあなんで世界を滅ぼそうとしてるんですか?」
「100年くらい前、突然彼の様子がおかしくなったの。そしてたくさんの国の守り神たちを殺していったの……私たちの親友の龍のキセノンすらも殺してしまってね」
「そうなんだ……で、でも妻ならクロムとも戦えますよね?」
「残念だけど、私は戦いは苦手なの。雑魚相手でも厳しいほどに」
「それはさすがに弱すぎません?」
「そ、そんなことは置いておいて、なんでここに来たのよ」
ハヤトは、誰が勇者にふさわしいかを教えてもらうために生贄として滝から飛び降りたことを伝えた。
「あー、なるほどね。ちょっと待ってて」
セレンは洞窟の奥へ行き、こちらに背中を向けて何かをしている。
しばらくして、こちらへ戻って来た彼女が占い結果を伝える。
「えーと、ハヤトってやつね。あんたが村のみんなに伝えてきな」
……ん? ハヤト?
この村にそんな名前は1人だけだ。
「それ……僕だ」
「はあ!?」
セレンも驚きの声を上げる。
と、ハヤトの体に異変が起こる。
とは言ってもハヤト自身が強くなったのではなく、剣や鎧、兜などの装備を体にまとっただけだ。
「うわっ」
ガシャーン
それはハヤトには重すぎた。特に鎧。
「なに、どうなってるの」
「嘘でしょ……あんたみたいなヘナチョコが勇者って」
え、僕が勇者?
「ちょ、ちょっと! 取り消すことは出来ないんですか!?」
「ええ、無理ね。何度やっても結果は同じよ。もうあんたに頑張ってもらうしかないね。」
冗談じゃない。
「これ、重すぎて歩けないんですけど……」
「ああ、すぐにあんたにあった装備になるわよ。あとであんたの思った通りに装備の形や大きさ変えられるからそれも試してみな」
すると彼女の言う通り、装備が変形していく。
剣は細く軽くなり、その他の装備は……消えた。
「はあ!? あんた力なさすぎでしょ。防具消えちゃったじゃん」
「そんなに弱くないですよ! 握力10kgはあるんですから!」
…………。
「……世界が守られることは無かったのでした」
「ちょっとぉ!」
「だってあんた弱すぎ! なんであんたが勇者なのよ!」
「僕の方が聞きたいですよ!」
「……。まあ何とか頑張るしかないわよ」
そんなこんなで僕は勇者になった。
おそらく過去最弱の勇者。
「あ、それとこれが勇者の証。持っていきな」
ハヤトは運命を呪いつつ、それを受け取った。
ハヤトは勇者になった。