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フレアセカンド

燻煙帝

作者: 赤石火飛



俺の名前はシルヴェストロ・カルヴィ、転生者だ。


前世で燻製を作ってたら火事になって煙に巻かれて死んで気が付いたら行商であった両親の元に生まれた。


どうやら、この世界は前世で流行ってたVRMMO

【Million Unique Skills Online】略してムソ→無双の世界らしい。


俺もやってたし、結構上位にいたから強かった。で、そのステータスは今世にテンプレの如く引き継がれていた。



しかも、前世の死亡原因のせいか?

称号に煙を感じ取る者とか言う変な称号が付いてた。


よく分からんかった。


転生して5年経った頃、俺はこの世界に燻製が無いことを知った。地球では保存食として古くから作られてきた燻製は俺の大好物でもあったので俺はショックを受けへたり込んだものだ。

だが、すぐに持ち直し、お得意様のドワーフの小父さんに頼み燻製器を作ってもらい自分で作った。

最初はどの木が燻製のチップに適しているのか分からなかったから苦労したものだ。普通に生えてる木以外にこの世界には木の形をしたモンスターもいたからな。ある程度普通の木を試した後は、そいつらも試したくなって冒険者登録してステータスを盾に無双しまくった。


結果、1番香りが良いのがエルダートレンドってモンスターから採れるチップだった。


只管にベーコンやらチーズやらチキンやらとスモークしまくった。


自己満足のために作った燻製だったが両親の目に止まり売り出すことになった。今までとは違った味ということで意外と売れて驚いたけど、俺の燻製がこの世界に認められた気がして嬉しかった。



ある日のことだった。

13歳の時、行商で立ち寄った中央合衆国に住んでいる両親の昔馴染みの貴族の家に行った時、俺は1人の少女に出会った。

彼女はその家の次女で料理が趣味な変わった令嬢だった。


その日の夕食をご馳走してもらい、副菜をその令嬢が作ったと聞いた時は驚いたものだ。

ただ、当時はそれだけしか思わずに特に何かを話すことも無く両親とと宿へ帰った。



次の日、俺は両親と中央合衆国最大の市場で露店を出して世界を各地から買い集めた品物を売ったり中央合衆国の他の露店の品物を買ったりしていると前日の令嬢が市場を散策しているのを見つけた。


相手も俺に気付いた様子でこちらに話しかけてきたので挨拶をし、何故いるのか聞いてみると新しいレシピを練っていたらしい。

趣味の料理はすでに趣味の枠を超えていたようだった。

その証拠に彼女は売り物の中の俺のスモーク製品を見たこともないのに食材だと理解して食べさせてくれと言ってきた。


スモーク製品の布教が出来ると喜んだ俺は嬉々としてその場にあったスモーク製品全てを味見させてやった。後でやり過ぎだと父親に怒られたが気にしなかった。


初めての味と香りに驚いた彼女は製法を知りたがってたので、俺は新しいスモーク製品のレシピが作られることを期待して快く教えてやった。



その後、俺は1週間ほど中央合衆国に滞在して次の日に国へ旅立った。


道中、モンスターや盗賊に何度も遭遇したり暴風雨や熱波に遭ったりと様々な障害があったが体が成長するにつれてステータスを盾にしてのごり押しじゃなく戦闘方法も研鑽して乗り切った。

モンスターの素材とか盗賊の懸賞金で両親が念願の店舗を持った時は兄弟(10歳離れた弟がいる)揃って祝ってやった。



3年経って16歳の時、再び俺は1人で中央合衆国を訪れた。

この世界は15歳から酒が飲めるので小さな酒場で飲んでいると後ろから声を掛けられた。

振り返って見ると懐かしい貴族令嬢がいた。何故かトランクケースを持って。


再会の喜びも束の間に怒涛の質問責めにされた。同じ素材に同じチップ、同じ製法でやっても燻製が俺の燻製と同じ味にならなかったらしい。正直、前世も含めたら精神年齢30後半になる俺の考え抜かれた燻製をそう簡単に真似出来るわけがないのだがの令嬢は味覚分析のスキルを持っているので普通の料理や加工品は可能らしい。


では、何故俺のスモーク製品を真似出来ないか?

俺の固有スキル、全煙掌握(ホワイトロード)が原因だった。

このスキルは俺が煙と判断したモノ全てを操るスキルで称号の煙を感じ取る者を所持してないと取得できないスキルだ。


このスキルによって俺の作る燻製は煙が絶妙なバランスで食材に纏わり付き最高の味と香りを食材に移すのだ。



それを説明すると渋々納得したようで今度は新しいスモーク製品を催促された。

俺の生ハムが気に入ったらしく3年間我慢してたとか。宿に置いてあると言ったら部屋に乗り込まれた。

で、実物を取り出し見せると令嬢はトランクケースを開けて中身を取り出した。一瞬代金の札束かと思ったけど実際には違い中から出てきたのは2本のワインボトルと2本のワイングラスだった。


この令嬢は俺が街に来ていることを聞きつけると生ハムに一番合いそうなワインを選んで家を飛び出して来てたった1つの生ハムを食べるために生ハムが4塊は買えそうなワインを代金がわりにすることでその場で食べるつもりだったらしい。


呆れたが俺の燻製がとても気に入ってくれているようだったので俺も浮かれて便乗することにした。


ただ、令嬢は次の日もその次の日も来て生ハムを食べて結局、中央合衆国の滞在中、ずっと食べに来てた。どんだけ気に入ったんだ?



出立の日は流石に来なかったのでやっとかと言う思いと次に来る予定なのが3年後なので少し寂しいなと言う思いがあったが俺は中央合衆国を旅立った。







だがしかし道中、何気なく馬車の荷台をのぞいて見ると何故か令嬢がいた。

驚いた俺は近くの宿場町で宿に泊まり令嬢に理由を問うた。変わり者だが貴族令嬢だ。内緒で付いて来たのなら家に送り返さないとならなかったからだ。

で、令嬢曰く、3年も待ってられるか。私の伴侶となってあらゆる燻製を献上しなさい。



令嬢は肉食系女子で令嬢の言葉に放心していた俺は食われた。






令嬢は既成事実を盾に俺と結婚、双方の両親には俺が中央合衆国に滞在中に許可を取っていたらしい。6年経った今では、俺も飲食店の店を持ち令嬢は俺の嫁兼三ツ星レストランの女シェフとして日々、客に料理を振舞っている。








「シルヴェストロー!フィオーレのおしゃぶり持って来てー!」

「ヴェルディアナ、ワインを飲みながらフィオーレをあやすな。」




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