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第1話 男子校のオタクたち

-星ヶ丘高校2年、帰宅部歴5年で別に特技もないですね。いや、ある!アニメのキャラと声優さんを覚えること!-


「えーっと、葉山翔さん?」

面接官が顔文字にありそうな冷や汗顔を浮かべたあとにっこり笑って一言。

「冷やかしなら帰れえ!」

こうして俺こと、葉山翔の初めての面接は見事?失敗した。

「あのメンヘラ女…。許さねえ…。」

俺だって受けたくて受けた訳じゃない。こんなバイトの面接落ちたくらいで悲しくなるわけねえだろ。こっちは親に無理矢理バイトしろって言われてきただけだし。辛くねえし。いや、辛くはないんだけども…あれなんだろ。涙が出てきたぞ。うん。正直泣きそう。いやもう涙出てきてるしな。あー。あー。あー。


最初に言っておく、俺はメンタルが弱い


心の中でぼやきながら歩いていると女の子がいた。なぜか彼女はお姫様のような格好をしていてこの日本においてはあり得ないような格好である。

突然、女の子が走り出した。なぜか誰もいないはずの後ろを何度も見ながら走って…おい、これ俺にぶつかってくるんじゃないか。いや、この展開はアニメだとぶつかって恋に発展する黄金パターン!俺にもそんな時代が!男子校生活5年目にしてそんな奇跡が起き…

「どけぇー!」

妄想してにやけてぼーっとしていた俺にぶつかると気づいた彼女は僕に向かって

「ぐはぁ!」

エルボーしてきた。これは痛い。

「何すんだぁ!」

流石に女の子と5年間喋ってないコミュ障な俺でもこれは女だろうが怒る。

「ごめんねー。」

彼女は走りながらてへぺろして謝って何処かへ行ってしまった。そのとき彼女の顔をはっきり見た俺は見とれてしまって怒る気も失せてしまった。彼女が何から逃げていたのか、という疑問も忘れるくらいに。


作:葉山翔



「なんだこれはぁぁぁぁ!」

大山健は葉山の作品のコピーを盛大に破った後に一息ついて

「なんで作者の名前と主人公の名前一緒なの!?なんでヒロインが主人公にエルボーして始まるの!?そしてお前のメンタルの弱さの描写マジでいらねえから!」

と談義が始まった。男ヶ丘高校の漫画研究会はいつもこんな感じである。

男ヶ丘高校は名前に男とあるように男子校である。男子校では彼女ができる確率は限りなく低い。この漫画研究会は元々は漫画の面白さを伝えていこうという単純な理由から生まれたらしい。だが今では僕らが究極のヒロインとは何かについて語り尽くすだけとなってしまいつつある。

構成メンバーは部長の大山健、自称ノベル作家の葉山翔、そして執筆してる僕、平屋政樹である。僕らは全員世間でいうオタクと呼ばれる人種であり、男子校歴は5年と長い。

正直言うともう現実の女の子と話せるかすら不安でしょうがない。この物語は漫画研究会の日常を淡々と……

「お前、それ以上はまずい。」

大山に執筆を止められた。何がまずかったんだろうね。

「やっぱり政樹に執筆は無理だ。ノベル作家の俺に任せろ。」

葉山はどや顔で僕の席を奪う。

「葉山、悪いことは言わない。それ以上その執筆に関わるな。」

「なんでフラグみたいに言ってんの!?政樹怖い…。」

こいつの文章の独創性は誰が理解するんだろってレベルで特殊だ。早くなんとかしないと。考えろ僕…。考えるんだ。

「まあ、政樹よ。葉山に任せてみてもいいんじゃねえか?」

大山…口元がにやついてるよ。絶対ネタにしたいだけだよね。

「よっしゃー!任せな。」

ブチン

「あれ?画面が真っ暗…。」

最終手段…それは主電源を切ること!

 「おいいい!パソ子を大切にしろよおおお!ぶち切りは体に良くないんだよおおお!」

長年の男子校生活の末か、ついにはパソコンまで擬人化してしまい名前まで付けるようになってしまった葉山翔(16)である。

 「流石にぶち切りはよくないぞ、政樹。」

 「エロゲーしかやってない大山には言われたくない。」

 「お前も俺の洗礼を受けたんだから同罪だ。」

 洗礼というかお前が勝手にこれをやれ、とか言い出したんでしょうが…。結局やってしまったけど…。

 「ありとあらゆるライトノベルを読破した。俺には勝てんよ。」

 葉山がどや顔で腕を組んで言う。お前はなーにを張り合っとるんだ…。


 ーーーキーンコーンカーンコーンーーー


 「おっ、もう下校時刻か。」

 大山は時計を見上げて言う。

 「本屋で味噌煮込みうどん食べたい先生の新作が出たらしい。これは行かなければ…。(使命感)」

 葉山はスマホでいつも通り情報アプリを見て新刊を確認する。

 「使命感とか。会話に出すんじゃないよ。」

 そう言いながら僕も帰宅の準備をする。

 漫画研究会の教室をきっちり施錠して、僕らは校門を出た。グラウンド1では野球部が男ヶ丘ファイ!ファイ!と掛け声をしながら走り込みを行っている。この学校は校風が自由であり、ルールなどがほとんどなく生徒個人個人は己の行動に責任を持つことを要求される。だが、ぶっちゃけ緩い。だから生徒はかなり怠慢である。だが、恐ろしいところはやるときはやるところである。運動部はかなり強いし、様々な部活が実績を残している。まあ、だらだら説明口調になってしまったが簡単に言うと自分が好きなこと、打ち込みたいことをとことんすることのできる学校なのだ。男ヶ丘高校…名前はあれだがまあいい学校だとは思う。

 「美少女降ってこねえかなあ…。」

 男子高生らしいというかオタクらしいというか…。そんな大山に対して葉山が

 「俺は路地裏で不良に絡まれた女の子を助けて恋に発展…」

 「お前そんな強くないだろ。」

 「………。」

 僕が彼の言葉を止めた。

 今度はサッカー部がグラウンド2で試合をしていた。僕は彼ら二人を見る。

 今考えた設定だろとか言われそうだが実はこのエロゲーマー大山は中学まで水泳をしていた。しかも全国までいったらしい。そしてこの自称ライトノベル作家は実は……。

 <ただの厨二病の成れの果て>

 「おい!なんか失礼なこと考えてるだろ。」

 「お前が中学の時俺に話してくれたエターナルクロスドラグニルフレイム伝説(笑)のこと考えてた。」

 「やめろおおおおお!」

 「あー、あったあった。なんか箒持ってこれは…伝説クロスソード!?とか言ってたな。」

 大山も便乗する。僕たち3人は中学の頃からクラスがずっと一緒だった。それにしても改めて思うとクラスずっと一緒ってすごいな…。前の学校は男山中学校というこれまたなぜか男子校であった。なぜ高校受験でまた男子校に入ったかって?まあ、今はそのことは執筆する時ではないだろう。

 「着いたな。」

 葉山が立ち止まる。その店は僕らが漫画研究会の本(もちろん漫画だが)の宝庫である。この店の名前は岡弘書店。大抵の漫画はあると言っても過言ではない。自動ドアが開いたそのとき…

 「健んんんん!!!」

 店員のキックが飛んできた。葉山はほげえ~!?と意味の分からない声を上げて吹っ飛ばされ、そのキックは大山の顔めがけて…。

 「ぐはっ!」

 大山は倒れそうになるが耐える。

 「佳奈美てめえ!今日は水泳の大会だろうが!なんでいるんだよ!」

 超ド級キックを放った岡弘佳奈美は腕を組んで

 「水泳の大会は明日!てか大会に応援に来ない気だったの!?潰すわよ!」

 葉山は倒れている…。まあ、いいや。このショートヘアの可愛い少し日焼けした女の子は、岡弘書店の店長の娘、岡弘佳奈美である。大山の幼馴染だ。こんな可愛い女の子が幼馴染にいるのになぜ彼が二次元にハマったのか…。それは彼女のこの凶暴性に現実の女の子に恐怖を植え付けられたから…だっけか。なんかあやふやだな。とにかく彼、大山健はエロゲにおいても幼馴染ルートはあまり好まない。仕方ない助け船くらい出してやるか。

「岡弘さん、大山には僕から大会行くよう言っておくから。」

「ほんと!?ありがと、平屋君!」

佳奈美は笑顔を見せる。ああ…。こんな子が幼馴染みとかくたばれ…。大山健…。

「おい、てめえ、政樹!俺は絶対行かねえからな!」

「なんですってぇ!?」

佳奈美は得意のジャイアントスイングで大山をぶんまわし始める。

「ああああああああ…………!!!」

さて…。僕は新刊探すか。はやく読みたいしな。

ぶんまわされてる大山健、ノックアウトした葉山翔、そして執筆者である平屋政樹の3人の日常は続く。

男子校に通ってた自分を思い出して書いてます。

共学の男子の皆さんが、男子校ってこういうところなのか。女子がいることってありがたいことなんだな。ああ、ありがとう神様!と思ってくれれば幸いです。また、男子校にも男子校の良さがあるというところを理解してもらえると嬉しいです。


鯖の味噌煮

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