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蛍が丘高校野球部の再挑戦 ~悪夢の舞台『甲子園』へ~  作者: 日下田 弘谷
第2章 『蛍光祭』開催 そして夏大へ
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プロローグ

さて、第2話のストーリーですが、野球をしていません

よって野球バカ・日下田のテンションがダダ下がりとなっています

ですので読まれる方は、ストーリー自体よりも、

テンションどん底・日下田弘谷が四苦八苦しながら書いている様を想像しつつ、

松永久秀ばりの暗黒笑みを浮かべながらお楽しみください

 かれこれしている間に、蛍が丘高校野球部は春季大会において2回戦で敗退。夏の大会でのシード権を得られず。後は特別な事もせず、練習をしながら夏を待つだけなのだが、本業の高校生活ではそうもいかない様子。


 5月中旬のある日の場合。


「さてと、そろそろ公式戦も始まるか」


「そうだねぇ。頑張らないと」


 少し早めに授業の終わった4組メンバーは一足早くグラウンドに出ると、陰のベンチに腰かけて雑談を始める。


「時にみんなは期末試験どうだった? 今日で一応は全部のテスト返ってきたわけだけど」


「新田は……もう上位者発表で出てるんだよな。毎度の学内1位で。僕は政治経済が8位に入ったのがベストで、あとは全部平均以上ってところ」


「私は少し英語と化学が平均下回っちゃったけど、後は全部平均以上だったよ?」


 蛍が丘高校自体のレベルが低いこともあり、4人中3人は赤点とは程遠い成績を叩きだしている。そこで視線は残った1人の近江へと集まる。


「近江は?」


「えっと、その……」


「どうだった?」


「……お尻ぺんぺんとかする?」


「僕はしないけど?」


 春馬のニッコリ笑顔に近江は安堵のため息を漏らすと胸を張る。


「ほとんど30点以下だった」


 その途端、春馬が彼女の両手を合わせて握る。


「楓音。こいつのけつをしばけ。10回」


「は~い」


「ま、待って、待って。さっき言ったじゃん。お尻ぺんぺんしないって言ったじゃん。嘘つきぃぃぃぃ」


「『僕は』って言ったけど、楓音に関しては保証してないから」


「そんなのない。そんなのないからぁぁぁ、ふぎゃぁぁぁ」


 楓音が近江にお尻ぺんぺんを開始。手を春馬に握られていることで、逃げることもできず、防ぐこともできず。楓音も近江の素直な反応に微妙に心の隅に秘めてあったドS要素が目覚めたのか、次第に容赦なく力を加えていく。


「ひゃだ、ひゃだぁぁ。痛い、痛いからやめてぇぇ」


「ラスト、じゅっ、かいめぇぇぇ」


「ぎにゃぁあぁあぁ」


 楓音に尻を叩かれ続けた近江は最終的に足に力が入らなくなったようで、地面にへたり込んでしまう。


「はうぅ、春馬君も楓音もひどいよぉぉ」


「酷いのはお前だ。いったい、何回呼び出さればいいんだよ」


 近江が赤点を取るたびに、野球部監督の春馬も呼び出されている。その回数は、去年度2学期の中間、期末。3学期の学年末。そして2年に上がって中間と今回で、計5回目。あえて言うなれば、先輩が選手兼任監督を務めていた去年度1学期も2回赤点で引っかかっており、近江は今現在、全定期テストで何かしらの教科で赤点を取っている。


「いい加減にしろよ? 次、赤点を取ったらまたケツを引っ叩くぞ? 20回くらい」


「うぅ、さわったらセクハラで訴える」


「案ずるな。ハリセンでやるから『さわる』ことにはならない」


「痛いのは嫌だぁ」


 本当に痛かったようで涙を目にためながら訴える。むしろこれを覚えてくれさえいれば、今度の定期テストで赤点を取る可能性は低くなるであろう。


「と、言いながらも春馬くんはなんだかんだでやらなさそうだよね」


「と、思うだろ? やらないとこいつ、赤点取っても叩かれないと思って調子に乗るから、近江限定でマジの話。場合によってはまた楓音に任せるかも」


「仕方ないよね。春馬くんだって大変なんだし」


「というわけで近江、今度の定期テストはしっかりしろよ?」


「勉強嫌だもん」


「僕と最上あたりが勉強見てやるから。現代文と古典は因幡に任せてもいいし」


 蛍が丘高校の野球部で頭がいいと言えば、当然ながら学年主席の春馬。そして2番手は意外な事に因幡。それも現代文に限れば学内順位10番目以内に入ることも珍しくはなく、今回のテストでトップ10に入れなかったのは、上位陣があまりにも絶好調過ぎたからである。なお、野球部内でのワーストは言うまでもない。


 お尻を押さえて不機嫌そうな近江に、春馬は顔を覗く。


「分かった?」


「勉強嫌だ」


「勉強とお尻ぺんぺん20回はどっちがいい?」


「……痛いのは嫌だから勉強。でも、春馬君……お尻ぺんぺんは体罰……」


「同級生に体罰もへったくれもないだろ」

「はうぅ、勉強する」


 高校球児としては、特に無謀にも甲子園を目指すチームとしては練習も大事なのだが、高校生として普段の勉強も必要である。


 さて。では、学内主席の春馬、国語が大得意な因幡、野球バカの3人を除いた他のメンバーはと言うと。最上は割と上手く立ち回っており、上位陣に入ることはないものの、中堅陣の上位層。楓音はセイバーメトリクスの関係で数字に強く、大崎、猿政は結構な努力家で勉強は問題なし。寺越が少し不安定なものの、それでも赤点は取らず。そして野球で地味な皆月は、勉強でも地味にほぼ平均点。つまり近江以外は学力的な危険性が無いのである。


「うぅ、プロになるのに勉強なんていらないもん」


「赤点取りすぎて部活停止食らったら、その時点で野球部が詰むんだが……」


 もちろん1人の赤点で部活自体が活動停止にはならないが、9人ピッタリの野球部は、1人の離脱が出場停止を意味することとなるのは言うまでもない。


 このように、野球部だから野球だけをしておけばいいというわけではなく、普通の公立高校である蛍が丘高校には、活動を阻むあらゆるイベントがあるのである。


 そして、野球部監督兼選手でありながら、もう1つの肩書を持ってしまった新田春馬には、そのイベントが迫っていたのだ。

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