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あのときの記憶
「ねえ君、大丈夫?怪我はない?」
わたくしは差し伸べられた手を取った。
「ええ、大丈夫ですわ。」
わたくしはカ-テンシ-をして、綺麗な青空の下を二人で歩いた。彼は美しい人、瞳の色はこの雪国の透き通るような空の色。吸い込まれてしまいそう……。
「今日は良いお天気ね。」
「本当に良い天気だよね。…嫌なことだって忘れられるぐらい、ね。」
「…そうね。」
本当に綺麗な空だった。市場の活気が伝わってきて、生まれて初めての光景に胸踊らせる私がいた。
「僕はドリューゼル。君の名は?」
「フローリア・ブランディーヌですわ。」
わたくしは名乗ったことを後悔した。『フローリア・ブランディーヌ』という名前は大変珍しい名前……似た名前ならいくらでもあったのだが。
「あ、そうだ!君、暇かな?」
『…実は私、お屋敷をこっそり抜け出してきたの』なんて口が裂けても言えなかった。
「ひ、暇よ。」
「じゃあ、市場を回ろうよ!」
ーこれが不思議な出会いだった。