表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第六章・決戦。
99/203

97話・カーヴァンズ公国。

 ―サキ=フォールランス=カムラ―


 私は、あの人に追いつけない。

 努力して、努力して、努力して……次に会うときは、私が、彼を守ってあげたいと思っていた。だが、私があの人に追いつく日はきっと来ないと、つい最近、知った。

 私は二人の姫様と共に、椎川さんと奴井名さんにお世話になっていた。聞けば二人は、グルックと昔から知り合っていたらしい。話を聞く限りでは、私よりも付き合いが長いことになるらしい……む。

 それはさておき、食料持参とはいえ、居候の身である以上、手伝いの一つや二つ手伝わせてもらっている私は、今日も洗濯物を物干し竿に掛けている途中だ。この屋敷は、警備も厳重で、私兵か国の兵かは分からないが、兵士も数十人駐在している。


「おつかれさまです」


 一人の兵士が私にねぎらいの言葉を掛けてくれた。そんなもの不要だというのにわざわざご丁寧に……。


「いや、こちらとて居候の身、仕事をするのは当然です」


 私はあの人とは違う。訓練を怠れば、当然体が鈍ってしまう。なので、ここに駐在している兵士に交じって、訓練をさせていただいている。それなので、ここの兵士達とは、顔見知りであるのだ。それで……


「いえ、私達の指南だけでも十分なはず……」


 そう、知らぬ間に、指南役にされていた。

 私は、努力しただけあって。十分なほどには強かったらしい。あの人が近くにいるせいで、最近は自信を失いかけていたのだが、その自信はこの国にいるうちに戻ってきた。それもまた、この国の兵士たちのお蔭だ。


「そんな、こちらこそ、訓練に参加させていただけるだけで……」

「いえ、カムラさんは、とても強く、我々では歯が立たない。そんな方が、指南してくれるというだけで光栄であります」


 まぁ、ここまで褒められると、気恥ずかしくもあるのだが……


「それでお願いがあるのですが」

「なんでしょうか?」

「カムラさんの真の得物は、そのフォールランスの名の通り、槍と聞きます、今度その槍さばき見せてはいただけないでしょうか」


 む……どこで、その話を……まさか、スミ姫様か……?

 確かに、訓練中一度たりとも槍は手にしていない。もっぱら剣を使っていた。フォールランスは、そうそう見せられた技でもないし。槍という武器自体、本当に大事な時以外は持って戦うということはしないのだが……まぁ、お世話にもなっている事だし、一度くらいはいいか。


「はい、分かりました、では、いつごろにしますか? 一度だけですので、見たい方が出来るだけ集まれる時の方がいいかと……」

「そうですね……まぁ、考えておきます」

「そうですか」


 私は、洗濯物を干しながら、彼の返事を待った。

 その後、彼が考え続けているのか、無言の時が続き、洗濯物も最後の一着となったところで、返答が返って来た。


「今……というのは、いかがでしょうか……」


 同時に、背後から微かな金属音が聞こえた。

(抜いた……)

 きっと、私の後ろにいる兵士は剣を抜いた。つまり不意打ち……ふむ、これが曹駛の言っていた……


「槍はないが、少しだけ技を教えてやる」


 私は、彼の後ろにいた。そして、背中をドンと押してやる。直後、彼は気絶して倒れた。彼の背中には、一枚の札が貼ってある。これは曹駛からこっそり渡されたものだ。強力な睡眠符らしい。


「おおっ、まさか、何時から気づいていたの?」


 お次は、上から声が聞こえた。

 顔を上げて見れば、塀に腰を掛ける女性が一人……


「気づいていた……とは?」

「ふふぅ……分かっているくせに」


 女性は、小悪魔的に笑っている。


「それは、この兵士が操られていたことですか?」

「うん、そうだね」


 女性は、軽々しくそう答える。


「そうですか……では、あなたが……」

「うん、そうだよ。いったいいつから気づいていた?」

「最初から……と言ったら嘘になります。まぁ、違和感は感じていましたが」

「へぇ……」


 女性は、少々興味深そうにそう呟く。


「……同士討ちは、失敗か」


 女性は、残念そうに呟いた。


「というか、この国の兵士で君に勝てそうなのはいないみたいだね」


 女性は、またしても小悪魔的な笑みを見せた。


「それに、なぜか私の力も効かないと……なら、仕方ない」


 女性は、小さくため息をついた。


「私が直々に、皆殺そう」


 女性は……とてつもない殺気と威圧感を放っていた……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ