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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第六章・決戦。
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94話・魔法。

 ―レフィ=パーバド―


 メアリーが玄関に向かってから、10分は経っただろうか。頭の中に声が響いた。


「レフィさん……大事な話があります」


 それは、メアリーの声だった。


「あ、すいません、声は出さないでください、それに、何か念じても私は分かりませんから、会話することは出来ません。これは一方通行のテレパシーだと思ってください」


 メアリーはどうも焦っているように感じる。


「今から、テンチェリィさんを裏口から屋敷の外へ、そして、レフィさんは……戦闘準備をしてから、こちらに来てください……出来るだけ早く……」


 戦闘準備……ということは……どうやら、お客さんってわけではないようだ。

 キスの方がいい。本当に。……そう思った。この場には、曹駛がいない。それにメアリーの焦り具合からして、その辺のごろつきや強盗ってわけでもなさそうだし……

 私は、テンチェリィの部屋に向かった。そこでは、テンチェリィが寝ていた。

 良かった、ここにテンチェリィがいないとしたら、屋敷中探さないといけなかったし。


「テンチェリィ、起きて……」


 小声でそう呟きながら、ここでも藁の上で寝ているテンチェリィの肩を揺すった。


「む……あ、むぅ……」


 完全に目が覚めたわけではないようだが、とりあえずは起きてくれた。


「ちょっと、付いてきて……静かにね……」

「な、なんですか?」

「なんでもいいから、早く、今は緊急時だから……」

「そういうなら、分かりましたです、黙ってついて行きますです」


 テンチェリィは素直ないい子で良かった。ここで、訳をくわしく聞いて来ないのは、ありがたい。

 私達は、玄関を迂回する形で裏口まで走った。


「じゃあ、テンチェリィ、私は行くから、早く逃げて……」

「……分かりました……です」


 裏口の扉を閉めた。手には、お手製の杖。お金に物を言わせて、樹齢300年位の木とか、特殊な薬とかを買って作った、なかなかすごいものだ。

 玄関に向かうと、そこには、メアリーと神父っぽい服装の男がいた。右手に持つ、その巨大な本は聖書だろうか。それにしても、大きい本だ。


「ああ、レフィさん、来てくださいましたか。この人は、宗教勧誘で来たらしいのですが、なかなかに、帰ってくれないものでして、困っていたところです」


 と、困り顔でメアリーは言う。

 本当に宗教勧誘に困っているだけのように見えるが……違うはずだ……。メアリーは、何か感じ取って、私に危険を知らせてきて、その上で協力を求めた。流石に、こんなふざけ方をする人ではないだろう。


「いやいや~、困っているって言われてもねぇ……まぁ、布教も仕事の一つだからなぁ……」


 男はそう言った。

 あっちもまた、ただ勧誘に失敗した、宗教関係の人にしか見えないが……やっぱり、違う。なぜなら……あの、大きい本……魔力が流れている。


「じゃあ、仕方ないか」


 男はそう言って、本を開いた。


「プロミネンスフレア」

「させません、次元転移ディメンションテレポート


 瞬間。男は灼熱の炎を放ってきた。メアリーは何か魔法を使ったようだが、何か変わった様子はない。失敗したのかもしれない。このままでは……


「風よ、何よりも強いその力で、我を守る盾となり、ここに現れよ」


 小声で、早く、詠唱し、発動する。


暴風の盾(オウカーンシールド)


 間一髪、風の盾で炎から身を守ることが出来たが……屋敷が……焼けて……


「偽物とはいえ、自分の家が焼けるのは気分がよろしくありませんわね……雨降らし……」


 室内に雲が現れ、豪雨が降り注いだ。スプリンクラーなんて比じゃないくらいの勢いで、降り注ぐその雨は火を全て消し去った。


「レフィさん、御心配なさらずに……ここは、(わたくし)の家のようで、そうではありませんから」

「それは? どういうことです」

「さっき、魔法を使ったでしょう、あれは次空間を移動する特殊な魔法です。そして、ここは、(わたくし)が用意した、(わたくし)の家そっくりの別の物ですから、心配いりません」


 そんなすごい魔法……使えたんだ……。この兄弟は、とてつもない人たちだ……曹駛もそうだけど、麻理さんもまた……凄い……


「照る照る」


 麻理さんがそう呟くと、雨は止んだ。


「おお、おお、おおお、よくもやってくれたもんだな」


 男はやる気があるのかないのか分からない感じで、そう呟いた。


「おかげで、服がビショビショだ」

「あら、すいません」

「せめて。嬢ちゃんたちも濡れてくれれば、良かったんだがな」


 私たちは、暴風の盾が上で雨を弾いてくれていたおかげで濡れていない。……それと、あの男の本も全く濡れていない。何らかの魔法で、防壁かなんかを張っているか、何かを纏わせているのかもしれない。


「まぁ、いいか、喰らえ、プロミネンスノヴァ」


 今度は火球が飛んできた。それも、超巨大な……

 火球は私の暴風の盾を軽く蹴散らし迫って来た。次の魔法詠唱は既に住んでいるが……止められる自信はない。


風の城(シュロスデスウィンド)


 私が使える、最大級の防御魔法……な、はずなのに、火球はそれをないかのように突破してきた。


「はぁ……ごめんなさい……お兄様……」


 麻理さんは、何かを諦めるかのようにそう呟いた……そして、何か決心した顔になった。


同期(リンク)……仮完了……よしっ……」


 そして、右手を前に突出し、魔法を唱え……あたりが真っ暗になった。敵の仕業……いや、これは……何かで包まれているから暗くなったのだろう。つまり、これは、麻理さんが使った魔法……


「レフィさん、ご安心ください。この守りは破れないはずです……これは、私が使える最高ランクの魔法の内の一つ……天岩戸……なのですから……」



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