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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第五章・元兵士は戦う。
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85話・再会は久しい。

 ―武元曹駛―


「満曳……久しぶりだな……」

「本当に久しぶりだね。恩とは会ったみたいだけど」

「まぁ、お前が不在だったしな、出来ればお前にも会いたかったんだけど、結局帰ってこなかったし」

「まぁ、そうだね、その日はちょっと忙しくて帰れなかったんだ、そして帰ってみればビックリ……」


 満曳は言葉を止め、後ろを振り返る。

 そこには、姫様(スミ姫ではない)とサキがいた。


「あ、曹駛様……」

「曹駛」


 二人は、あれ? なんで、ここに? と言った表情をしていた。まぁ、当分は、会えないって言ったし、実際ここに来るつもりもなかったからな。スミ姫をこっちに連れてくるということ自体、思いついたのはフォルド王国に付いてからだし。

 満曳は再び俺の方を向いて、苦笑い……


「だって、家に、二人も知らない女性がいるんだもん。しかも、聞けば、たまたま僕がいない日に、曹駛君が来ていて、二人を置いていったって恩が言うし、もう、何が何だか……」

「わ、悪い……」


 それに関しては、謝るしかない……


「で、事情を説明してよ」

「恩から聞いてないのか?」


 一応伝えたはずなんだが。


「あえて聞いていない。恩は説明してくれようとしたけど、本人に直接聞くって言って、断ったから」


 頬を膨らませ、両手を腰に当てて、「ぷんぷん」と口で言う満曳……おまえ、なんか悪化してね? 何がかは言わないけど……


「で、この二人は誰? 何が目的?」

「えっと、まぁ、今すぐにも説明したいところだけど、あの、まずは、満曳たちの家に行ってもいいか? その、もう一人……」

「もう一人? って……どういうこと?」


 満曳の声のトーンが下がる。


「えっと、もう一人、しばらく泊めてほしい奴がいるんだ……」

「……… ど う い う こ と ? 」


 さらに下がった。

 本人の見た目に反して、満曳の周りに漂うオーラは、実に怒りに満ちた恐怖的な物だ。


「あの、曹駛様、(わたくし)も気になります、もう一人とは、一体……」

「はい、姫様もよく知っている方です……」


 と、言った所で、俺の「姫様」という単語にスミ姫は反応した。


「姫様って誰よっ! 私だって、姫だもん、姫だもんっ!」


 先ほどまで開く気配すら感じられなかった、その瞼はあっさりと開いた。

 スミ姫は、身体を起こし、これまた「ぷんぷん」と口で言っていた。……あの、流行ってるの? それ。


「……えっと、す、スミ?」

「あれ? お姉ちゃん……生きてたんだ」

「当然です、勝手に殺さないでください……というより、曹駛様……(わたくし)にも説明していただきたいのですが……」


 あれ? おかしいな……姫様からも怒りのオーラが……


「私もついでに……」


 あ、サキもオーラを放ち始めた。まぁ、こいつは、自然と出た物じゃないし、怒りのオーラと言うよりは、殺気だしな。

 って、余計よくない。周りのついでで、そんなものだすな。というか、ついでだよな。そうだよな。信じてるぞ、サキ。


「私も説明してほしいかもー、なんでお姉ちゃんがいるの? そして、どういう関係?」


 スミ姫まで、そんなことを……


 前方に満曳。

 左に姫様。

 後ろには、スミ姫。

 そして、右は開いていたはずなんだけど、それに気づいたサキが、サッ、とそこへ移動した。いやだから、周りの雰囲気に合わせなくていいから。……合わせただけだよな。本当に、信じているぞ……

 で、俺は、四方を囲まれ、四面楚歌……さて、どうしたものかな……


「じゃあ、曹駛君のお望み通り、家に招待してあげる。だから、そこで、じっくりゆっくり、説明してもらうよ」


 四人に囲まれて、逃げ場なし。そのまま、満曳邸に向かった俺は、きっと周りから見たら、捕まって連行されている犯人のようにも見えたかもしれない。さっきまで、裸Tシャツのスミ姫を抱っこして街を歩いていたし。それもあって、本当にそう見られていた可能性はある……ああ、もうやだ……

 おい、こら、そこ、聞こえているぞ。

 あちこちから、「ロリコンが捕まった」とか「ああ、さっきのロリコンが捕まったんだ」などと聞こえてくる。

俺 は ロ リ コ ン じ ゃ な い。

 なんか、テンチェリィがやってきて以来、ロリコン扱いされることが、何回か……いや、違うな……良く考えたら、最初にロリコン扱いされた時は、確か……

 サキの方を見やる。俺の視線に気づいたのか、サキもこっちを向いて、ニコッと笑顔を見せる。その時、後ろから、なんか不満のオーラを感じたから、正面を向き直した。

 まぁ、いいや、忘れよう。ロリコン扱いされたことでいい思い出なんか、有るわけないし。

 俺は、街の人々の声を聴かないためにも、目的地に着くまで、前を歩く満曳のうなじを見続けていた。


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