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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第五章・元兵士は戦う。
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81話・準備は上々。

 ―武元曹駛―


 俺は、今、城のてっぺんにいた。

 理由としては、ここがこの国というか、この町の中心地かつ、一番高い場所だからだ。

 で、文字通りてっぺんにいる。物凄く足場が悪いので、今にも落ちそうである。

 まぁ、一言で言って、死にそう。


「で、曹駛、こんなところに何のようで登ったんじゃ?」


 隣に立つ透がそう尋ねてくる。

 えっと、怖くないの? 落ちたら死ぬよ。お前に関しては、本当に死ぬよ。突風とか急に吹いてきたら、運動神経とか鍛えているとか関係なしに落ちて死ぬよ。


「えっと、まぁ、何故お前がそこまで冷静でいられるかは置いておくとして、まぁ、目的は二つ」

「二つ?」

「ああ、まず、一つは、スミ=キ=フォルジェルド姫を攫いに来た」

「はぁ!?」


 透の怒声が飛んでくる。

 やめろ、びっくりして落ちるところだっただろ。というか、今の声で、城のやつにばれたらどうするんだ。俺がわざわざテレポートでばれないように登ったのが、無駄になるじゃねーか。


「お前、何をいきなり言っているんじゃ、それは、国家反逆罪になりかねんというか、普通に色々罪が重なるぞッ! 相手が王族とか関係なしに犯罪じゃッ!」

「ほら、大丈夫だ、あの確信犯とかいうやつだ、まぁ、罪とかに問われるとは思うけど、必要なことだからな。この国の事を考えたなら、結果的に一番いい行動っつーとどうしてもこうなる。あ、そうか。透は、姫を攫うのには参加しなくてもいい。良く考えたら、お前立場あるもんな、そう簡単に行動は出来ないか」

「いや、立場云々というレベルでなく、それは少し協力できんぞ、お前の説明が足りな過ぎて、それが正しい事なのかどうかも判断できん」


 遠回しにだが、説明を求めているっぽいな。

 説明しているうちに、誰かに気付かれて、二つ目の目的が果たせなくなるのは、あまりよろしくないし、まずは先にもう一つの要件を片付けるか。


「あー、まぁ、そっちは、ともかく、先に二つ目の目的を達成したい。実のところ、そっちの方が大事だからな、姫攫いはついでのようなもんだし」

「はぁ!?」


 またしても、怒声が……だから危ないって。


「ついでに姫様を攫うってどういうことじゃ!」

「いや、まず、落ち着けって、すぐに熱くなるのはいけないこととは言わないけど、状況を良く考えてみよう」

「その上で、ついでってなんじゃ! ついでってっ!」


 うるさい爺さんだ。こういうのを老害って言うんじゃないのか?


「まぁ、二つ目の要件について説明をしよう」

「おいッ! 無視するな、話を勝手に進めるな!」

「で、二つ目の要件なんだけど、それは、この町に特殊な細工をする」

「だから無視して進めるな……って、細工?」

「ああ、細工。小細工」

「何をするつもりだ?」

「この町をこの世界から切り離す」

「……は?」

「だから、この町を切り離して、この町から出る事が出来ないようにする。まぁ、入ってくることは出来るけど、これは、奴らを逃がさないためだ」


 まずは奴らと戦う場所を作る必要があるからな。そのためにも、必要なことだ。


「いや、まて、小細工というレベルではないし、さらっと言っているが、それはやっていい事なのか?」

「あー、まー、大丈夫なんじゃね?」

「適当ッ!」


 だって、こんなことしたことが無いから、やっていい事かどうかは分からない。けど、やらないと駄目な事だけは分かるから、やるってだけだ。


「それでだ、やつらが来たら、次元転移ディメンションテレポートを使う」

「だから、無視するな。で、その次元転移とはなんじゃ」

「ああ、名の通り、別次元の同位置に飛ぶ、または飛ばす」

「どういことだ? つまり、別の次元に行くということか? だが、行った所でどうする、そこに閉じ込めるのか?」


 閉じ込める……確かに、それもいい案かもしれない。けど、俺が開発できた魔法である。数年かければ、奴らも開発できるだろう。そしたら、戻って来るし、より厄介な状況になりかねない。


「別次元に閉じ込めるっつっても、何もない場所ってわけじゃない。ただ無数にある世界の内の一つってだけでな。だから、きっと閉じ込めても、いずれ奴らは返って来るし、俺は、倒そうと思う。その場所でな。で、別次元は、俺が用意する。無数にある世界の内の一つを犠牲にするのは、その世界のやつらに迷惑がかかるし、俺が、この世界と全く同じ世界を作る。と、いっても、丸々は無理だから、せいぜいこの町くらいだけど……まぁ、そこでなら、周りを気にせず戦えるし、奴らを倒すことが出来るだろ」


 誰もいない世界なら、もしもの時も万物爆弾化(オールボンバー)で、奴らを道連れに出来るしな。


「作るといっても、作れるのか?」

「ああ、まぁ、いい案が有るからな。まぁ何より、まずは、この町を隔離するところからだな」

「その隔離ということに意味はあるのか? どうせ別次元に飛ばすなら、何も隔離する必要もあるまい、逃がすも何も無いじゃろ」

「ああ、それは、簡単だ、だから、俺は、この世界と同じ世界というか、コピーみたいな世界を作る。そこは、この世界が動けば、同じように動く世界にするつもりだ。で、何をするかというと、俺の作ったその町と、この町を、丸々入れ替える。だから、正確には、俺達が、転移するのではなく、俺達と、この町が転移するということだ。で、後にこの町とその町のリンクを切れば、反映はされなくなり、俺は暴れ放題って手だ」

「はぁ?」


 今日は、やたらその言葉を聞くな。主に透から……なんだ、カルシウム足りないのか? 俺の骨でもあげようか。クリム辺りはきっと喜んで食べるぞ。


「まぁ、町の人は何も気づかないだろうな、気づいたら閉じ込められていて、気づいたら解放されていた程度にしか思わないだろう」

「それは、大丈夫なのか?」

「ああ、大丈夫。数日街に噂は流れるだろうし、人々は不安になるかもしれないが、滅ぼされれるよりいいだろ」


 まぁ、滅ぼすとしたら、奴らだけじゃなく、俺が滅ばす可能性もあるからな。


「で、隔離といっても、どうするんじゃ」

「ああ、魔法をこうポイっとやる」


 俺は、パチンッ、とフィンガースナップをする。まぁ、ちょっと格好も付けたかったし。

 同時に、この町は霧に包まれた。

 この隔離魔法は……あの、白銀の竜に会う前の深い霧を元にした魔法だ。そして、この魔法は、あの霧とほぼ同じ効果を持っている。いや、きっと同じ物なんだろう。

 そして、俺は、その場に倒れた……えっと、疲労だ。

 これは、当然戦闘魔法ではない、それに、規模が規模だから、きつい。大変きつい。


「曹駛、大丈夫か! 何者かに、やられたのか?」


 ああ、心配はしてくれるんだ。

 まぁ、大丈夫。


「ひ、疲労だ……気にするな……」

「そ、そうか……にしては、かなりきつそうだが」

「ああ、かなりきつい、今に吐きそうだし、気絶しそうだけど、今からがんばって、姫を攫う理由を説明する」

「いや、無理せんでも……」

「えっと、その、姫を攫う理由は……まぁ、姫の安全のためだ……奴らもしものことがあったら、多分、スミ=キ=フォルジェルド姫を人質に取るかもしれないし、人質ならまだしも、すぐに殺すかもしれないからな。多分スミ=キ=フォルジェルド姫派閥の人は、ほとんど操られているだろうし、攫うというと、聞こえは良くないけど、要は保護だ。それに、コイチ=キ=フォルジェルド姫に続いてスミ=キ=フォルジェルド姫まで消えたら、きっと奴らもう動くだろ、な。よし、説明終了」

「なるほどな……」


 どうやら、納得はしてくれたようだな……


「なら、仕方ない、協力しよう」

「ああ、有り難う」

「じゃあ、さっそく……」

「待てっ!」


 俺は、出来る限り力を込めてそう言った。


「なんじゃ、何か問題が……」

「ああ……」


 このままじゃ、確実に失敗するからな。

 まず、ある事をやる必要あある。


「まずは、休憩としよう……俺が動けない……」


 そう、それは、休憩だ……せめて、吐き気は何とかさせてもらいたい。


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