8話・決闘、備えました。
20150318:編集しました。かなり短くなりました。
―武元曹駛―
目を覚ます。
目に映るのは女の子の泣き顔。耳に届いてくるのはすすり泣く声。
「レフィ……ここまで、運んでくれたのか」
ここは、俺の部屋だな、多分。
あの後、レフィが運んでくれたのだろう。
「そ、曹駛……?」
まるで信じられない物を見る目で、こちらを見ている。まぁ、そうだろうな。
「夢……じゃ、ないよね……」
「ああ、そうだ……夢じゃない、俺は生きている」
俺は、手を伸ばし、レフィの頭をそっと撫でた……なんか、撫でたくなった。このレフィを見ていたら……。
瞬間、レフィの顔が崩れる。
「し、死んだかと思ったわよ……こ、この……ばかぁ……」
「悪かった……」
俺は、レフィが落ち着くまで、頭を撫で続けた。
「意外と、泣き虫だな」
やっと泣き止んだレフィに対してそう言う。
なんか、イメージと違うというか、まるで、最初に家に来た時のようというか。
「……忘れてよ、その、恥ずかしいから……」
顔を真っ赤にしたレフィがもじもじとしながらそう言う。
可愛いな。いつもこうなら……いや、それはそれで面倒くさいかな。いつもと違うから可愛いんだろうな。いわゆるギャップ萌えというやつだろう。
まぁ、今の状況はあまりよろしくない。このレフィの可愛さを堪能していられる状況ではないんだよな。
俺の意識は、少しだけあった。あの時な。
ミットに放り投げられた時、地面との衝突時のショックで、一時的にだが、朦朧とはしていたが、意識が戻った。その後、また気を失ってしまったのだが、聞いてしまった。
聞こえてしまった。
決闘だ。と。
平和的ではない。実に暴力的な考えだ。だが、安直でいいとは思う。
「レフィ、決闘、申し込まれたんだよな」
「……知っていたの?」
「ああ、微妙に、聞こえていた。ただ、日時と場所が知らん」
「………」
「教えてくれ」
「いやよ……」
「頼む」
「だめよ……今度は、今度こそ死んでしまうじゃない」
「大丈夫だ、あんときは不意を突かれただけ……って、あの日からどれくらい経った?」
「一日よ、だから、無理よ、もっと無理よ。傷だって治ってないはずよ」
一日か。うーん。まぁ、久しぶりだし、そんなものか。
最近はこう言った痛みも無かったからな。
「大丈夫だ、だから教えろ」
俺は、服をまくり上げ、自分の腹を見せながらそう言った。
「あ、あれ? そ、曹駛、き、傷は?」
「まぁ、なんだ、ちょっと、特殊な体でな、治りが早い」
まぁ、嘘っちゃ嘘だ。本当っちゃ本当だけど。
「で、どこだ」
「……それでも、言えない……」
「……はぁ……なかなか意固地だな、お前も」
レフィは、口を一文字にし、何も言わないという意思を表している。
だからといって、レフィ……俺は、お前の口から聞く他にも、お前に聞く手段は持っている。
「でも、俺は、どうしても行かなきゃいけないんだ」
「………」
「だから、先に謝る。悪い……」
少し気絶するかもしれないからな。先に謝っておいた。
俺は、また手を伸ばし、人差し指をレフィのおでこにそっとあてる。
すると、レフィは、力を失ったかのように、倒れてくる。
よし、分かった。
まぁ、久しぶりにしたけど、成功したぞ。
久しぶりに使った魔法が、これか。せっかくだし、もっとかっこいい魔法が良かったな。
記憶強盗。
名前こそなんやら凶悪染みているが、やっていることはただの覗き見だ。
本当に記憶を奪い去ってしまうのは、記憶強奪のほうだ。一応、記憶強盗の上位交換の魔法なのだが……あれは、使う側も使われる側も大きな反動があるって聞いたし、ここで使う意味もないから、こっちで十分だろう。
魔力と体力の消耗を感じる。
やっぱ、非戦闘魔法は苦手だ。
息を切らしながら、俺は、無駄遣いによる産物の大量にある不要物で出来た山をかき分け、随分と懐かしい、巨大なランスと、これまたでかいタワーシールド。それに、安っぽい服と鎧を見つけだし、装備した。
日にちの指定は無い。だが、修練場を指定してきたと言うことは、何時でもいいということだろう。
なら、今日の内に行かせてもらおう。
一日でも早い方がいいからな。
この装備は、もう型落ちレベルで古いかもしれない。まぁ、魔法や機会でもないんだし、また流行るかもしれないけど。武器の流行は、変わるだろうしな。まぁ、それでも、古いっちゃ古いけどな。まぁ、鎧と服はともかく、武器と盾の見た目だけは、新品同様だけどな。
「ああ、その……まぁ、行ってくる……」
格好つけようとはしたけど、まぁ、格好悪い台詞だな。というか、いつも通りというか。
俺は、せめて見た目だけでも格好つけようと、後ろを振り向かずに片手を上げ、家を出た。
20150318
レフィ視点を全てカットしました。
なので、かなり短くなっております。ただし、大まかな内容的はあまり変わっておりません。




