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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第四章・俺、ですか?
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74話・よし、やったか。

 ―武元曹駛―


舞い散る砂埃があの日の霧のように、俺の視界を遮っていた。

 あれだけの物を爆破させたんだ、物凄い威力だったに違いない。

 それにしては、暗いな。俺が倒れている間に夜になってしまったのか? いや、流石にそこまで暗くはないか。

 というか、煙い。物凄く煙い。

 そういや、ドラゴンはどうなったんだ? まるで気配もないようだが、逃げられたわけでもないだろうし。

 と言うか、ここは、どこだ。砂埃がひどすぎてさっぱりわからん。

 ああ、魔法で何とかするか。


「えーと、ああ、そうだ、雨降らし……」


 名前は適当だが、何故か最初から頭にある魔法の一つで、使えそうなものがあったので、それを発動させた。すると、雨粒、一粒、二粒と降ってきて、何時の間にか豪雨になっていた。

 まさか、ここまで降るとは。あー、風邪ひきそう。つーか、痛い。なんだこの雨粒。でかいし、早いからめちゃくちゃ痛い。

 雨を降らせて砂埃を全て下に落としたのはいいけど、今度はこの豪雨で何が何だかわからない。というか、この轟音の所為で音も聞こえなくなったからむしろ悪化したかもしれない。

 えーと、どうしよう、というか、なんかおかしいぞ、これ。

 雨を降らせてからまだ少ししか経ってないが、なんか、水が溜まってきている……おかしいだろ、これ。もう既に水面は俺の膝まで来ている。って、思っている間にも少しずつ上がってきている。やべぇ、死ぬ。このままだと、水死する。なんか、なんとか出来ないのかっ!?

 あ、あった……これまたなんか脳にインプットされていたものだけど、き、きっと何とかなるぞ。


「照る照る」


 先ほどのは、雨乞い。対して、今使ったのは、晴れ乞いの魔法。こんな魔法あるんだな。大昔から有る魔法らしいことまで、俺はなぜか知っているが、まさか、こんな場面で役に立つとは。というか、俺がなぜか最初から知っている魔法は、どれもこれも古い物のようだな。

 さてと、ドラゴンがどうなっているか、かくに……は?

 結果で言えば、ドラゴンはいなかった。

 そして、代わりにどでかい、というより物凄く深いクレーターが出来ていた。あー、うん。なんとなく分かった。

 これ、さっきの万物爆弾化(オールボンバー)の所為だな。

 どうやら俺は少し張り切り過ぎたようだ。

 あの魔法のイメージとしては、物質変化で全てを火薬として、それを同時に爆破させることによって魔法によって付加した相乗効果によって、異常なまでの火力を出す。と、いう物だった。それで、出来るだけ多くの物を対象にしようと、俺は結構な長文詠唱をしたのだが……その、どうやら随分地中深くの土まで対象にしてしまったらしいな、これ。

 それと、俺の推測通りなら、この魔法の効力は、酷く恐ろしいな。

 ドラゴンは、別に逃げたわけではなく、きっと爆散し、焼失した。

 どういう事かと言うと、まず爆炎に呑みこまれたドラゴンは死なずとも無傷ではいられない。そして、火傷と言うのは、細胞の死滅からくるものである。そう、その死滅した細胞もまた爆弾化して爆発したのだろう。恐らく。そうすることによって、まずは体の妙面が内部にダメージを与え、爆散し、消える。すると、次は、その爆破によって死滅したし細胞が炸裂、そして、また次が、と言った形で段階的に爆散していった。だから、ドラゴンの死体が残っていないのだろう。で、それの何が恐ろしいかと言うと……こいつは生物以外を対象としている訳ではなく、生物もまた対象とすることが出来て、その上、その生物が部分的でも死滅したら、爆発する、時限式爆弾となる点だ。

敵も味方も関係なしに、全て吹き飛ばす。対象にされたら、もうおしまいの最終兵器みたいなものだ。こいつは、封印しよう。もう、使わない。被害も尋常じゃない。使えたもんじゃねぇ。

 暗かったのと水が溜まったのは、俺がこの深い縦穴の中にいたからだろう。

 さて、どうやって、ここから出ようかな。

 まぁ、地道に上るか、傾斜は五十度くらいでなかなかきついけど、頑張れば登れるだろう。

 よいしょ、よいしょと登っていっている途中、俺は浮いた。

 あ、あれ? う、浮いている? いや、背中掴まれて吊るされている?

 後ろを振り向くと……な、なんだ、お前。

 俺を浮かせていた犯人、それは、ドラゴンだった。もちろん、先ほど爆散させた奴とは別のやつ、中型のワイバーン種だ。そいつに俺は咥えられて、空を飛んでいた。というか、早い、高い、プラプラしてる、やめろ、落ちる。


「よお、救世主」


 上から声がした、そう、ドラゴンの上から。

 ドラゴンの背に男が立っていた。どこかで見た気がするんだが、駄目だ、思い出せない。だが、こいつ、ドラゴンに乗っている……どういうことだ? まさか、本の中の話でも有るまいし、竜騎士というわけじゃないだろうな。だが、世界は広いし、一応、聞いておくか。


「どうも、あなたは、竜騎士さんですか?」

「はんっ、ちげーよ」


 違った。

 即、否定された。


「てめぇ、どっかで会ったことがあるような気もするが、まぁ、とりあえず、死ね」


 あ、あれ?

 さっき、俺のこと救世主とか呼んでなかった? お、落とすの? た、助けてくれたんじゃないの?

 重力に引っ張られて、俺は地面に追突し、死んだ。

 おい、なんだよ、結局風邪ひくまでもなく死ぬのかよ……くっそ、風邪ひくまでは生き延びてやるつもりだったのにな……



万物爆弾化は今の曹駛さんがつかったら、実際、かなりやばいです。国一つなら、恐らく軽く吹き飛ばせるかもしれません。もちろん、彼は、自ら望んでそんなことはしませんが。

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