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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第四章・俺、ですか?
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72話・まじ、かよ。

 ―武元曹駛―


 俺たちは、協力して、少しずつ飛び回る虫と鳥を落とし、とりあえずは、奴らを撃退した。

 途中、動けないふりをしたソードバードによって、恩の左手首が切り落とされてしまい、満曳も痛みで気絶してしまった恩に気を取られ、左肩を深く切られてしまった。どうやら動かすことが出来ないらしく、左腕がぶらんとしている。

 これは、痛手だな。この二人は、もう戦えないぞ。


「ご、ごめん、足引っ張っちゃって……」


 満曳が申し訳なさそうにそう言う。


「いや、そんなことは無い、二人ともよく生きていた」

「で、でも、どうするんだい?」

「そうだな、どうしようか……」


 周りをよーく見渡してみる。ここがどこかよく分からない。

 周りの建物は崩壊、もしくは焼失しているため、判断が付かないのだ。

 ここは一体どこだ?


「なぁ、満曳」

「なに?」

「ここは何処だ?」

「………」


 満曳は、俺の質問に対し、悲痛に満ちた表情を見せるだけで、何も答えてはくれなかった。


「その、満曳、現在地が分からないと、これからどうするかも決められない、教えてくれないか?」

「……ここは……この場所は……―――恩の家だ、君も来たことがあるだろう」


 なっ……ここが、あの天露邸? 嘘だろ……まさかとは、思ったが、ここは今や焼けた木材や、砕けた壁の破片が転がっているだけの場所だ。

 つまり、この辺一帯は、高級住宅街だった場所か……

 あれほどまでに、立派なお屋敷が立ち並んでいたここも、今は見る影もない焼野原だ。


「まるで、戦争だな」


 目の前に広がる光景は、物語で読んだものと実に似ていた。


「そうだね……」


 本の虫と自分を称していた満曳も、そう言って俺の言葉に頷く。


「兵士はどうした? 誰かしらいないのか?」

「みんな、やられた」

「誰一人残っていないのか?」

「応援を呼びに行ったけど……もう大分経つ、ちゃんと他の兵の元に辿り着いたかどうかも怪しいけど、辿り着いていたとして、ここまでくる間に何かあったとしか思えないかな……」


 つまり……絶望的……ということか……


「これから、どうするの?」


 これからか……これから、ねぇ……

 正直、どうしようもないかな。兵が全滅とすると、もう本当にどうしようもない。

 それと、この天露邸に嫌なお客様が、来やがった。


「なぁ、満曳……生き延びれると思うか?」

「うーん、君以外はちょっと難しいかな……」


 ばさり、ばさり、大きな羽ばたき音。

 突風に、足元の小石が吹き飛んで来る。


「さて、曹駛くん。これから、どうする?」

「どうしようか、満曳」


 俺たちは、お互い顔を見合って。同時に大きなため息をついた。

 そんな俺たちの正面に、巨大なドラゴンが降り立った。崩壊する前の天露邸くらいの大きさはあるぞ。片手だけでも、七人は一握りで潰せるくらいだ……


「おい、満曳、恩を連れて逃げろ」

「うんっ!」


 ああ、素直に従ってくれたな。

 満曳は状況判断が出来る奴だからな、きっとしたがってくれると思っていたぜ。

 正直、怪我人に配慮をしつつ戦って勝てる可能性は、ゼロだろう。万が一も億が一も兆が一もない。ゼロだ。

 悪い言い方をすれば、足手まといになるんだ、この場ではな……


「パワーボールッ」


 俺は、ランスを杖代わりに、パワーボールを乱発させる。

 だが、ドラゴンからしたら、ピンポン玉程度でしかないのだろう。その証拠に、最初こそは、着弾点をちゃんと確認したものの、二発目以降は、当たったところに目を向けさえしない。時間稼ぎにもならないのかよ……


「さて、どうしッ……ようかな……」


 なんて、言えるほど余裕はないかな。

 喋っている間に、右肩から先を捻り取られた。

 それに、俺は、掴まれている。

 いきなりピンチかよ……

はぁ……仕方ないか……

俺は、バスタード・ソードを何とかして、はずして出来るだけ遠くに行くように投げ捨てた。


「喰らえよ、このビルトカゲ」


 まぁ、とっさに思いついたにしてはいいあだ名じゃないか?

 ビルのようにでかいトカゲ。だからビルトカゲ。そのままだが、なかなか似合っているぜ。

 俺は、人間爆弾(ヒューマンボム)金属爆弾(メタルボム)を使い、弾け飛んだ。

 そして、あらかじめ、用意しておいた急速復活の魔法が発動し、ドラゴンの足元に俺は復活し、現れる。

 無傷……ではないが、あの密閉空間で爆破しても、手一つとして吹き飛ばす事が出来ないのか。さて、どうしようかな……本当に……

 ランスをその大岩のような足に刺すも、分厚い皮を突破することが出来ない。肉まで届かない。


電覇気(サンダーオーラ)


 一応、電気も発生させておく。だが、これがどれほどの意味があるのか……

 大きな足が、持ち上げられ、振り下ろされた。

 まるで地震のようだったんだろうな。

 俺は、またしても急速復活魔法によって復活した。

 こいつは、どうやって倒すんだ? まぁ、でも、時間稼ぎくらいはしないとな……

 落ちているバスタード・ソードを拾って、また背中に差しておいた

 まぁ、ちまちま攻撃していくか。と、思っていると……ガキンッ……金属音が聞こえた。そして……ドスッ……大きな刃が俺の後ろの地面に刺さった。

 ボロボロで刃こぼれも酷いが……これは……見覚えがあるぞ……


「よう、グルック、大丈夫だったか?」


 先ほど落ちてきた刃の付いていた剣の持ち主が、俺にそう話しかけつつ、俺の隣に並ぶ。


「ああ、おまえ、こそな……木尾」


 そう、さっきのは、木尾の剣の刃だ。

 無事、だったんだな……


「助けに来た……って言いたいところだが、今の一撃で武器がぶっ壊れちまった」

「それなら心配ない」


 ああ、心配ない。

 むしろ好都合だ。


「これを使え」


 と、木尾に背を向けた。


「なんだ? その剣」

「ああ、話していた、お前の新しい剣だ、プレゼントしてやるから、戦え」

「おう、ありが……」


 木尾は、俺の背に担がれているバスタード・ソードを手にしようとするが、何故か触れた瞬間手を引っ込め、一向に手にしようとしない。

 早くしろよ、ドラゴンは長時間待ってはくれないだろ。多分。


「おま、なんかバチッと来るんだけど」


 ああ、なるほどな。ごめん。電覇気(サンダーオーラ)使ったままだった。


「ああ、これでいいか、早く受け取れ」

「お、おう」


 今度は、ちゃんと掴み、両手でバスタード・ソードを構えた。

 やっぱり、これは、俺が使うより、お前が使った方がよさそうだな。と、思っていると、隕石さながらに、大きな手が上から降ってきた。俺と木尾は、左右に分かれ、全力で走る。潰されないようにな……


 ドスンッッ!!


 地面が大きく揺れ動く。

 当たれば即死か……全く最悪な相手だぜ……

 さてと、バトル開始だ。せめて時間稼ぎくらいしてやる。かかってこい、ビルトカゲ。


この頃の曹駛の魔法の威力は今と比べると、かなり低かったのです。

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