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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第四章・俺、ですか?
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70話・街が、赤い。

 ―武元曹駛―


 俺は騒がしさに、目を覚ました。

 だが、その騒がしさの原因は、いつも荒々しく扉を開けて返って来る木尾によるものではなく。


 外から聞こえてくる、悲鳴や断末魔、それに爆音、木材の焼ける音と匂い、肉や血の焼ける臭い。

 外は、赤と黒に彩られていた。

 いや、彩られていたとは言わないだろう。包まれていた、覆われていたいや……


 支配されていた。


 燃え盛る赤と宵の黒。

 そして、それを引き起こしているのは……上空を飛び交う、多数のモンスターだろう。中には、ドラゴンも見える。これは……まずいぞ……。こんな事態初めてだ。街がモンスターの群れに襲われるだと……それも、他種多様のモンスターが争う合うことなく、ここが役割を果たすかのように、街を襲っている。

 くっそ、なんでこうなるまで、俺は目を覚まさなかったんだ。

 自分の鈍感さが恨めしい。いや、と言うより、運が悪かったのもある。今日、俺は一度死んでいたのもあって、それなりに疲れが溜まっていた。だから、こうなるまで気づかずに寝続けてしまった。それに、この場所。この兵士が主に利用するらしい、実質的兵士寮となっているこの建物は、街の中心より離れた所に位置しているのもあって、ここまで被害が及ぶまでに少し時間が掛かったという事も関係して、余計に気付くのが遅れた。

 と、自分に言い訳しても仕方ない。木尾が今帰ってきていないということは、きっとモンスターの排除に駆り出されているという事だろう。

 俺は、鎧を付け、部屋の床から天井までの距離より長いと言う事で、床に倒して置いてある、少々大きいランスと、天井ギリギリではあるが、こちらは部屋の高さよりも小さいので、天井ぎりぎりと言う感じではあるが、壁に立てかけられてあるタワーシールドを装備して、俺の装備からすると小さくて仕方ない部屋のドアを潜り抜け、外に出た。

 こ、これは……ひどいな……。

 窓のガラス越しでは見てはいたが、実際に見ると、なおひどいな……。悪臭がひどく目立つ。流石にこれは吐きそうだぜ……。

 今、一番モンスターが集まっているのは、街の中心だ。まずはそこへ向かおう。

 くっそ、あいつらは大丈夫なのか? この国に来て、色々な人と出会い。いろいろなことがあった。けど、その色々なことがあった、この国は今。ドラゴンなどのモンスターが吐く炎に包まれている。逃げ出した人もいるみたいだが……そういった人々の行く先の大半は……モンスターの胃の中だったり、地べただったりしている。

 走れ、走れ。

 もしかしたら、まだ、まだ助けられる人がいるかもしれない。

 一度は、不本意ながらこの国を落とす立場にいて、実際、落としかけてしまった。だが、今回は守る立場にいる。守れるかもしれないんだ。だから、きっと守って見せる。

 俺がまず向かったのは、例の武具屋だ。店は燃え、店内は蛻の殻だったが、路地の先。お爺さんに連れられて行った、あの場所には、書置きと、一振りの大剣が合った。

 その書置きには、完成したので使えとだけ書いてあった。ああ、使う。使わせてもらう。

 俺だって、一応、兵士だ。それも、選抜のな……武器は一通り使える。右手に持つ馬鹿でかいタワーシールドを背負い、空いた左手にその大剣を持った。

 左手にビッグランス・右手にバスタード・ソード。

 俺は、パワータイプの戦闘狂かよ……

 そう思いながら、でかい武器がまた一つ増えてより通りづらくなった路地を抜け、勇ましい声の聞こえるほうに向かう。そこでは、きっと誰かが戦っているはずだ。

 次の瞬間、俺は、壁にめり込んでいた。

 これは……体当たりか……

 右耳には唸り声が聞こえる。


「俺は、止まっちゃいられねーんだッ!」


 火事場の馬鹿力というか、風の魔法も練り混ぜて、ランスを思いっきり右に投げつけた。

 そのランスは、俺を吹き飛ばした犯人であろう、ドラゴンの額を貫いた。

 ああ、これで死んだ、だが、深々と刺さったランスの回収の時間が勿体ない。

 だから、爆破した。


金属爆弾(メタルボム)


 ドラゴンの脳みそをぶちまけて、ランスは爆散。しかし、数秒後、俺の左手には、ランスが握られていた。このランスは何が有っても、復活する。俺が、死んでも生き返るように。このランスは、どんな状態になろうと、元に戻る。それは、もちろん、鎧と盾も同じだ。

 俺は、急いで、兵士と集合しようとしたが、くっそ、群がってきやがった。

 周りには、ソードバードとシールドフライの群れ。ああ、この状況、依頼でもあったな。

 それに、さっき倒したドラゴン……

 くっそ、妙に出来過ぎている気がするぜ。

 ソードバードが次々と俺に向かって突進してくる。

 奴のくちばしはまるで槍のように鋭く、羽の上部は刃のように鋭い。だから、彼らの突進は、刃物を投擲されているようなものだ。当たったら体を引き裂かれる。

 以来の時は、後ろと右はタワーシールドで守りつつ、左と前に来たソードバードをちまちまとランスで突いて落としていたのだが、今、タワーシールドは俺の背にある。背中は守れるとして、右は……切り落とすしかないか。

 さっそく右から来たソードバードにバスタード・ソードを振り下ろした。

 自身の勢いとバスタード・ソードの重量によって、そのソードバードは、身体の刃の堅さも意味なく真っ二つになった。す、すげぇ……凄い切れ味だ……

 その隙を狙って左からまた一匹飛んできた。こいつは、ランスで突き刺してやる。

 と、ランスを突き出したのだが……ソードバードはその場でシャトルループ、俺の月は躱された。そして、俺のランスを囲うように、シールドフライが集まって来た……ま、不味い……ランスを、動かせない……

 シールドフライは、やたら堅い盾のようなものが付いている、ドでかい蠅だ。それが、俺のランスの周りに集まってきているのだから……このランスを動かすことが出来ないでいる。右に左に振り払おうとして見るも、その堅い盾で受け止められ、万事休すと言ったとこ……ぐッ……!!

 お、俺の左腕が切断された……先ほどシャトルループをした、あのソードバードによってな……

 くっそ、なんていう連携だ……他種族のはずなのに……


「そ、その腕とランスはくれてやる」


 俺は、ランスと左腕を囲って動くつもりがないシールドフライの群れから距離を置いた。


「喰らえ、人間爆弾(ヒューマンボム)金属爆弾(メタルボム)だッ!」


 シールドフライの群れは、次の瞬間、丸焦げになった下に落ちて行った。それに、急速回復する術はもう出来ているんだ。もちろん、とんでもなく魔力と体力は持っていかれるが……片腕が無いよりは、戦いやすいだろ。

 その後は、シールドフライの動きにも気を付けながら、バスタード・ソードとランスでを使い分け、時間はかかったが何とか全滅させた。しかし、先ほどまで聞こえていた勇ましい声はもう聞こえない……全滅したか、移動したか……できれば後者であってほしいな。

 俺は、先ほどまで声が聞こえていた方に向かって再び走った。


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