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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第一章・高慢エルフ買いました。
5/203

5話・残り財産、考えました。

今回は短いです。


20150306 編集致しました。


 ―武元曹駛―


 あいつ(レフィ)が家に来てから、はや一ヶ月。

 残り財産は、五百万ギジェ……あっるうぇ~?

 おかしいな。最初は五億会ったはずなのに。今は五百万。

 五億を100%として、現在手持ちは1%の五百万……あっっっっっるぅぅぅぇぇ!?

 早い。早すぎる。お金の減りが。というか、なんでこんなに金使い荒いんだ? 俺達。

 確か、残り千万ギジェになった時……


 大丈夫、大丈夫、まだまだ平均年収の千倍もあるし、少なくとも千年くらいは暮らせる暮らせる、余裕余裕。普通に暮らしていくには絶対困らないはず。


 とかなんとかと、俺達はのたまっていた気がする。

 けど、それは、つい先週だった気がしないでもない。

 何が千年だよっ! このままだと、あと一週間も暮らせねぇよっ!

 やばい。これは、マジでやばいぞ……

 これからは、残ったお金の使い道をよーく考えて生活しないと、本当に不味い……

 毎日どんちゃん騒ぎしたり、欲しいものを次々に買ったり、一日中お金を使って遊び呆けたりしていないで、普通に暮らさないと不味い。本当に不味い。

 俺の金は永続的な物ではない。それは、最初に自分で思ったことじゃないか。

 とりあえず、会議だ、会議。

 二人会議だ。

 俺は、レフィを自分の寝室に呼ぶことにした。

 椅子もあるし、外から気づかれることもないし、会議にはピッタシだろう。




 思えば、俺の部屋には椅子は一脚しかなかった。

 本当は二脚あったのだが、一昨日、俺の着替え中に部屋に入って来たレフィが、ぶっ壊しっていったんだった。理不尽だ。おかしいだろ。俺は、何の非もないはずなのに、椅子でぶん殴られた。結果、椅子と俺が壊れた。くっそ。理不尽だ。

 まぁ、仕方ないから、残っている椅子にはレフィを座らせることにして、俺は、ベッドに腰を掛けた。


「で、今回は何のようなわけ? というか、今何時だと思っているの? 正直もう眠いんだけど……」


 レフィは、そう言って、目を擦りながら、部屋に入って来た。

 あー、一ヶ月で、大分態度でかくなったなー……

 会話する度に思うんだけど、日に日に態度でかくなっていっている気がする。そのうち、主従逆転するんじゃね?

 来た当初のレフィは何処へ行ってしまったのか。実は別人とかではないのだろうか?


「まぁ、その、大事な用件だから……」

「そう、で、なに? 出来るだけ早くしてね」


 レフィは、大きな欠伸をしながら、そう言った。

 どう考えても主人に対しての態度じゃないだろうという言葉は呑み込んで、話を進めることにした。俺も微妙に眠いし。


「まぁ、立ち話もなんだし、腰かけろ」


 レフィは、少しそこで戸惑った様子を見せてから、俺の隣に座って来た。

 いや、なんで。そこに椅子あるじゃん。椅子に座るかベッドに座るかで迷ったかもしれないけど、なんでそれで迷った末にベッドに座ったんだよ。普通に考えろよ。


「で、で、そ、その、よ、用件はなに?」


 いや、テンパりすぎだろ。つーかおかしい。お前、顔赤いぞ。熱でもあるんじゃないか? それなら、眠いって言っていたのものなんとなく分からないでもないな。体調が悪い時は寝るに限るからな。


「まぁ、そのことについてなんだが……きっぱりさっぱりストレートに言おう」


 まぁ、遠回しに言っても仕方のない事だしな。

 二人で、じっくりと、よーく話し合って、決めなきゃならないことだしな。

 俺は、レフィの両肩に手を置き、目を合わせ、見つめ合った。


「う、うん」


 ゴクリ……隣から唾を飲む音が聞こえてくる。そこまで緊張することでもないだろ。まぁ、凄く大事なことだけどさ。


「………」

「………」


 数秒の沈黙。

 あー、俺まで緊張してきた。大事なことだけど、そんな緊張するようなことじゃないはずなのに。


「そ、そのな」

「う、うん……え、えっと、な、なに……?」


 レフィは、顔を真っ赤にして、目を逸らした。

 ふわり、甘い匂い。レフィの匂い。

 ぐ……なんか、なんか、なんか、緊張してきたぞ……な、なんだこれ……


「そ、その……」

「は、はい……」


 レフィが、再びこちらを見た事によって、お互いの視線が、再び交わった。

 それに、れ、レフィが……敬語を……な、なんだ、これ、き、緊張感が、と、とてつもねぇ……なんだろう、これ……


「えっと……」

「………」

「あの……」

「………」


「か、金がヤバい……」


「うん……うん?」


 あれ、どうやらうまく伝わってないようだ。


「え、っと、もう一度言うぞ」


 次はもうちょっと分かりやすく言おう……


「う、うん」

「うちの残り財産がヤバい……」

「………」


 レフィの顔から、火照ったような赤色が抜けていく。代わりに、燃えるような赤色に染まっていく……


「そ、その、お、お金がヤバいです」

「………」


 れ、レフィが、ぷ、プルプルと震えだした……あれ? も、もしかして……怒ってらっしゃる……?


「えっと、れ、レフィさん、その、今、私たちの残りの財さ……」

「何度も言わなくてもいいわよっ!」


 レフィが、急に怒鳴った。

 や、やっぱり怒っていらっしゃった。

 レフィは、何が原因で起こるか分からないし、怒ったら怖いからな。まだこの部屋に椅子が三脚あった時の話だが、たまにはプレゼントでもと思って、指輪あげたら俺のベッドの中で寝てしまったので、仕方なくゲストルームで寝たら、次の日、自分の寝室に戻ったところを待ち伏せしていたレフィによって椅子でぶん殴られ、椅子と俺が壊れた。

 理不尽だ。くっそ。

 でも、まぁ、ここでレフィの機嫌を損ねても悪いし……下手に出ておこう。


「え、っと、その、ごめん」

「で、あといくらあるの?」

「五百万ギジェ」

「なんだ、結構あるじゃない、なら、大丈夫よ。後五百年は生きれるわ」

「いや、その、似たような言葉を先週も聞いたような……」


 その、今の二倍くらいの金額の時に……二倍くらいの年数暮らせるって……


「………」

「その……どうします?」


 というか、どうしよう。


「………」

「………」


 暫く、無言の状態が続く。

 そして、レフィが口を開いた。


「いや……その……む、無駄遣いには気を付けるわ」


 ああ、うん。そうだね。

 俺達、まず、無駄遣いがひどいもんね。


「う、うん……そ、そうだね、俺も、それには気を付ける……」




 ―レフィ=パーバド―


 この家に来てから一ヶ月くらい経った。

 この家と私の主である男……曹駛は、やさしい……というか、腰が低い。

 こう言うと、なんか弱そうね。

 ちょっと可哀そうにも思えるから、やっぱり優しいと言う表現に戻しておこう。


 私は三回買われた。

 一回目はオークションの時。

 あいつらは、酷かった。優しさのかけらもないような連中だった。

 隙を見せたら、何をされるのか分かったものじゃないので、常に気を抜くことが出来ず、非常につらい日々だった。

 私は、彼らに抵抗して魔法をぶっ放していたのもあって、私の事を無理やりにでも調教しに来た。

 食事に薬を盛られたのだ。

 食事にはいつも気を付けてはいた。魔法をかけ、何か私に害を及ぼすような薬が入っていれば、それに手を付けず、もし探知できなくとも、一応解毒魔法の応用である、解薬魔法をかけてから食べていた。

 いつも通り、薬の探知、無力化をして、食べた。だが……その薬は、薬は薬でも、毒薬だった。

 つまり、解毒魔法でない、私の魔法では、解毒できなかった。

 全身から力が抜け、筋肉が痙攣を始めた。

 私には手を上げないと思っていた、それが慢心だった。

 男たちの手が伸びてくる。いつものように抵抗しようとも、力が入らない。

 なされるがままに、脱がされ、脚を開かされる。そして、すんでのところで、二度目の購入。

 あの時、私が買われていなければ……考えただけでも恐ろしい。もう少しで、私は大切な物を失うところだった。


 二回目は、あの、ジャキラル=オオヤナギという奴隷商だ。

 あの人も、優しい人だ。無駄にね。

 一年間あそこで過ごしたが、不自由はほとんどなく、むしろ欲しいものを買い与えてくれる、快適な空間だった。ただ、唯一文句があるとすれば、ノックもなしに、あの店の客が入ってくること……まぁ、それは仕方ないとして、異様に快適な空間であった。


 そして、三回目。

 それが、武元曹駛。

 今度は、奴隷商では無く、一般人である、

 つまり、私は、正式な主人を得たことになる。それがいいことなのかどうかは分からないが……


 コンコン……


 無駄に大きいお風呂から上がり、髪を乾かしていると、部屋の扉がノックされた。

 外は暗い。というか、そろそろ日付が変わるかもしれない。私は、自然と大きな欠伸をしていた。

 それにしても、一体、何の用だろう……


「なに? なんか用?」


 主人に対して使うような言葉遣いじゃないのはよく分かっているが……時が経つにつれて、こう、ね。あの主人(そうし)の腰が低いのもあって、自然と……


「あとで、俺の部屋に来てくれ、大事な用がある」


 彼は、扉も開けず、部屋の外からそう言った。

 本当に、何の用だろう? 正直もう眠いんだけれども……どうせ、また夜食を作れとかそんなのだと思う。あいつには、変な事を期待するだけ無駄よ……そう言うやつじゃないから……

 それにしても眠い。私は、また一つ、大きな欠伸をした。




 少しして、私は、曹駛の部屋に入った。


「で、今回は何のようなわけ? というか、今何時だと思っているの? 正直もう眠いんだけど……」


 嫌味も込めて、そう言ってやった。眠いのは事実だし、時間も時間だ。悪態だってつきたくなる。

 眠気が余計に私の態度を大きくしているのかもしれない。あんまり、こう言った態度を取りつづけると、後が怖いから、直そう直そうとは思っているんだけど、今日くらいは、まぁ、いいよね。明日から直せば……


「まぁ、その、大事な用件だから……」

「そう、で、なに? 出来るだけ早くしてね」


 またしても、欠伸が出た。本当に眠い。まぁ、時間も時間だし仕方ないでしょ、そう自分に言い聞かせて、あくまでも今日はこの態度でいる事を決意する。

 だけど、私の眠気は、吹っ飛ぶことになる。


「まぁ、立ち話もなんだし、腰かけろ」


 と、ベッドに腰を掛ける曹駛が、言ってきたのだ。最初は、椅子に座ろうと思った。だけど、私は状況を判断した。

 こんな夜遅く、機密性の高いこの曹駛の部屋で、大事な用件……つまり……そう言う事なのだろうか……・

 だ、だから、さっきの言葉の意味は、私もベッドに座れと言う事なのだろうか……いや、でも、その、やっぱり、椅子も一脚あるし……でも、その、そういう、こと、なの、だろう……

 私は、覚悟を決め、曹駛のすぐ隣に腰を下ろした。


「で、で、そ、その、よ、用件はなに?」


 あ、慌てすぎ。お、落ち着いて、私。

 で、でも、その、これから、そういう、こと……

 顔が熱い。体が熱い。何もかもが熱い。もしかしなくとも、私の顔は真っ赤だろう。


「まぁ、そのことについてなんだが……きっぱりさっぱりストレートに言おう」


 キリリとした顔で、曹駛がそう言う。その両手は、私の肩をがっしりと掴んでいる。

 私の心臓がドキリッ、大きく跳ね上がる。

 な、なんなんだろう。その、やっぱり、今日は、そう、いう、こと……を……や、やっちゃうの……?


「う、うん」


 ゴクリと唾を飲む音がやけに大きく聞こえた。

 わ、私、その……女に……

 で、でも、そ、曹駛になら……あいつらよりは……

 お互いが口を閉じた静寂な時間は、一時間にも二時間にも感じられた。その間、私の心臓はどんどんと運動速度を上げていく。

 そして、曹駛も緊張しているのか、先ほどよりも、締まった顔で口を開いた。


「そ、そのな」

「う、うん……え、えっと、な、なに……?」


 私は、じーと見つめてくる曹駛と目を合わせることが出来なくなり、ついには目を逸らしてしまった。

 その私の目線の先には時計。その針は、もう既に、12時を回っていた。

 つまり、昨日の私が、態度を改めようとしていた、明日になっていたのだ。

 そして、この状況……私は、わたしは……

 心の中で、もう一度、強く覚悟を決める。


「そ、その……」

「は、はい……」


 震える唇で、そう答えて、もう一度視線を曹駛に合わせる。

 それによって、また私たちの目が合った。

 しかも、私は、自然と敬語を使っていた。

 ああ、これから……私……わたし……


「えっと……」

「………」


 ドクン、ドクン。

 心臓の音がうるさい。うるさくて、うるさくって……

 身体が熱い。あつくて、あつくって……


「あの……」

「………」


 私は、目を瞑った。

 後は、流れゆくままに体をまかせよう……

 そして、私の耳に、曹駛の声が届いた……


「か、金がヤバい……」


 ……?

 え?


「うん……うん?」


 えーと……聞き間違い?

 その、私、恐怖から、曹駛の台詞を脳内で捻じ曲げてしまったのかしら?


「え、っと、もう一度言うぞ」


 次は、ちゃんと、曹駛の言葉を受け止めないと……


「う、うん」


 私は、目をしっかりと開け、そう受け答えした。


「うちの残り財産がヤバい……」

「………」


 ……。

 体が熱い。これは怒りだろうか。なんだろうか。恥辱の恥ずかしさからくるものだろうか。

 どちらにせよ、私はこいつを一回殴らなきゃ……気が済みそうにない。


「そ、その、お、お金がヤバいです」

「………」


 うん。聞き間違え無し。

 よし、鉄拳制裁。


「えっと、れ、レフィさん、その、今、私たちの残りの財さ……」

「何度も言わなくてもいいわよっ!」


 心の底から、そう叫んだ。

 ふざけないでほしい。私のドキドキを返せ。本当に返せ。そう言えば、前にもこんなことがあった気がする。

 急に、夜に呼び出されて、なんだと思ったら、高そうな指輪をプレゼントしてくれて、その、もしかして、告白、みたいな、そんなものかと思って、ドキドキしながら曹駛のベッドに潜り込み、その、その、そういった行為をされるのかと思って、待っていても来ないものだから、その、その、寝ていれば、きっと、その、寝ているうちに、えっと、してくれるかな、と、とか、思って寝て起きたら、何もなく朝だったり……ああ、あの時もドキドキしたのにな、今と同じくらいに……

 えっと……その、まぁ、思い出せば恥ずかしさは覚えるんだけど、それと同時に、怒りもまた湧き上がってくる。


「え、っと、その、ごめん」


 腰の低い曹駛が、そう謝る。


「で、あといくらあるの?」


 まぁ、鉄拳制裁は、後にして、金欠は実際大きな問題なので、残り金額を尋ねる。


「五百万ギジェ」


 五百万……なんだ……心配して損した。


「なんだ、結構あるじゃない、なら、大丈夫よ。後五百年は生きれるわ」

「いや、その、似たような言葉を先週も聞いたような……」


 ……。

 あれ、なんか、そう言えば言った事があるような……


「………」

「その……どうします?」


 えーっと……どうしよう。

 このままだと、その、結構まずいような気がしてきた……

 私の中ではもう、怒りよりも焦りの方が大きくなっていた。


「………」

「………」


 暫く、無言がまま……時間が過ぎる……

 その、とりあえず。


「いや……その……む、無駄遣いには気を付けるわ」


 まずは、そこから始めよう。

 私は、今まで買った、数々の物を思い浮かべながらそう言った。

 貯金の尋常じゃない減りの速度は、半分くらい私の所為である気がするので、私は、しばらくの間、彼に敬語で接した。



 そして、私たちは……

 この後、めちゃくちゃ会議した。







いや、卑猥なことは何もしてませんよ。

本当ですよ。夜の会議は言葉の通りですよ。


20150306

相違点ですが、特段有りません。

ただ、微妙に過去が変わっていたり、話が加わっていたりします。

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