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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第四章・俺、ですか?
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45、5話・老爀斎さまぁぁああああああああああ!!

今回はドット回です。

 老爀斎……刀を振るえば、フォルド最強と言われる。

 名刀・炎皇(えんおう)。彼の持つ刀の名である。

 その刀を老爀斎が振るえば、野原一面を焼き払うことが出来る。

 そして、彼は刀を持たずとも、とてつもなく強い。

 素手でも並の兵なら歯が立たない。そんな彼も、今は現役を引退しており、国の兵士の指南役としての仕事を勤めている。とは、言っても、強すぎるあまり、まともに相手をできる兵がいないため、実際は武器の使い方を教えて回っているだけで、手合わせをすることは基本的にない。たまに勘違いをした馬鹿が、戦いを挑むらしいが、その大半を素手でボコボコにして帰すので、老爀斎と手合わせをしてみて、本当の強さを知った、自分の弱さを知った、などと言う兵もいる。その中に、稀に本当に強い人もいるが、今まで彼に炎皇を抜かせたものはだれ一人といない。武器を使ったとしても、刀は使わず、その他の武器を使い倒す。それが、彼が自分に課したハンデであった。


「老爀斎さまぁあああああああああああああああ」


 老爀斎の部屋に飛び込んできた兵士が一人。


「なんだ、うるさいの」


 実際、その声は物凄くうるさかった。

 やばいくらいうるさかった。どれくらいかと言うと、あの老爀斎が耳を手で塞ぐほどである。


「そこまで耳は遠くないわい、で、何の用だ」

「は、はい、その、修練場が大変のです」


 修練場とは、先日ドラゴンに破壊された例のコロシアムではなく、新しく建設されるまでの間だけの仮設修練場のことだ。修練場とは名ばかりで、ただ空き地に柵を立てただけである。


「何があった」

「その、急に俺は兵士だとかと名乗りだした一般人が、次々に兵士をなぎ倒していっているのです」

「そいつは本当に一般人なのか?それとも、お前らが異様に弱いだけか?」

「そ、それはありません、いくら26期兵候補兵団だとはいえ、修練は毎日積んでいます、そう簡単に負けるはずは……」

「武器は?」

「大きいランスとタワーシールドです」

「ふむ……儂の昔の知り合いにも同じ武器を使う者がいたが、まだそんな古臭い武器を使っている者もおるんじゃのう」

「いえ、そんな、いまどきそんな装備を使う物はおりません、しかも、あれはただの鉄製です、重さと性能が全く比例しておりません」

「なるほどな、でもう一度聞くが本当に一般人なのか」

「はい、恐らく」

「恐らくとは……」

「それはですね、何やら紙を見せてきたんですよ、コイチ姫様直筆だとかなんとか言いながら……コイチ姫様は、今は……」

「言うな……誰が聞いているか分からんからな」


 コイチ姫は、現在行方不明である。恐らく、保守派であるスミ=キ=フォルジェルド派閥の者の仕業である可能性が高い。

 そして、コイチ=キ=フォルジェルドは自ら少々旅行をしてくるという趣旨の書置きを残し、お付の近衛兵であるサキを連れて消えてしまった。これは、きっとコイチ姫の旅行に合わせ、保守派が動いたのだろう。と、コイチ=キ=フォルジェルド派閥の者達は考えていた。もちろん、老爀斎もその一人である。


「それで、その紙とは?」

「たしか、兵士申請書です」


 兵士申請書とは、国、大貴族が、兵士になってほしい個人に対して、条件や給料などを書き、それを受け取った者が条件を飲んだら即成立の契約証みたいなものである。

 ちなみに、その逆で、個人が、国や貴族に兵士として雇ってくれと頼みこむ場合は、兵士志願書というものを書くのだが、今回は、姫様直筆の兵士申請書らしい。それが本当なら、よほど腕が立つのだろう。


「ですが、それが本物とは……それも、姫様直筆だなんて、今城がどうなっているかまるで知らないようではないですか」

「いや、その逆かもしれん。コイチ姫の行方を知っている者かもしれん」

「それは、流石に……一般人ですよ」

「まぁ、一般人と決めつけるのは、まず一回止めてみたらどうだ? 事実お主らは、其の一般人に負けたのだろう」

「それを言われると痛いですが……」

「それと、そいつは、なぜ、お前らと戦っておるのじゃ」

「は、はい、それは、突然現れて、この兵団に入れてくれと言ったのです」

「それに何か問題が?」

「いえ、そこまでは問題が無かったのですが、老爀斎会わせろだのなんだのと言っていたので、怪しいと思い、質問を色々としているうちに、さきほどの兵士申請書の事もあって胡散臭さが増してきて、その胡散臭さに耐えきれなくなった兵が手合わせを挑んだことがきっかけとなって、あそこまでの大乱闘となりました」

「そうか……」

「老爀斎様、どうかお手を貸してはいただけないでしょうか」

「ふむ……そうだな、よかろう、儂も最近は退屈をしていたところじゃ、骨のあるやつだといいんじゃが……」




 老爀斎は武器を数種持って、修練場に向かった。

 その武器の中には、炎皇もあった。




 修練場についてみれば、そこは倒れた兵達がいるだけであった。


「お、おい、一体どうした、何があったというんだ」


 老爀斎に報告に言った兵士が、近くの兵士の元に駆けよって、そう声を掛ける。


「や、やられた、あいつは本物だ。本物の強さを持っている、俺は、俺達は、自分の弱さに気付くことが出来た」


 と、倒れている兵は、どこかで聞いた事のある言葉を口にした。

 それに対し、老爀斎を呼びに行っていたおかげで無傷の兵士は、あの、自称兵士に洗脳されたのかと思った。


「で、そ、そいつは一体どこに?」

「さっき、トイレに行った」

「そ、そうか……」


 この場に、そいつがいないことに、少しホッとする。だが、それもつかの間。


 ガシャン。


 鎧の音だ。

 柵に囲まれただけの修練場にある、形だけの入り口には、例の重装備男が立っていた。


老爀斎さまぁああああああああああああああああああああ。

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