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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第四章・俺、ですか?
40/203

40話・よし、帰ります。

 ―武元曹駛―


「みんな、帰るぞ」


 無人島生活を一週間した頃の朝。

 俺は、4人分の寝起きの顔を眺めながら、そう言った。


「今、大体一週間くらいよね、そんな早くてもいいの?」

「ああ、十分だ」


 一週間、追っ手が来ることは無かった事から、きっと、相手は俺達の居場所を突き止められてはいないことが分かる。

 行方不明扱いをされている可能性が高いだろう。

 だからこそ、今、帰るのだ。

 流石にそろそろ、ここに潜伏していることがばれてもおかしくは無い頃だと思う。

 灯台下暗し。今こそ、都市に戻る。

 もちろん、まだ姫様を城に帰すつもりもない。サキもまた然り。

 二人には、どこかに潜伏してもらう。その際、サキには姫様の護衛として、隣にいてもらう。

 そして、レフィとテンチェリィには、俺の家族の家に行ってもらう。

 俺は、その間、やる事が有るので、古い知り合いに会いにいく。


「さてと、みんな荷物をまとめてくれ」




 いやー荷物がものすごい大量。

 超大量。

 そして、その大半は食料。

 理由はご想像通り。俺とサキがちょっとやりすぎた。

 でも、獲ったものは仕方ないから、持ち帰ることにしたのだ。

 とりあえず、俺が氷系統の魔法を使って冷凍保存。それと、この一週間で新しく作った、熱保存の魔法を使って自然解凍対策。

 食べる際は、俺が触れるか、魔力を流せば、勝手に解凍してくれる。

 それと、この食材は、潜伏にあたって、お金の面で買い物が難しくなるであろう姫様たちに渡す。

 だが、姫様もサキも魔力を流すことは出来ない。

 なので、白い棒(ホワイトスティック)を渡して置いた。

 この白い棒が食材に触れれば、あら不思議、あっという間に解凍されます。

 なんと、こちら、非売品で、今回これ一本限り。

 とかなんというと、物凄いアイテム作ったな、とか、魔力流せるのか? とかと思われるかもしれないが、そんなことは無い。

 実際は、俺の骨を圧縮して作っただけの、言うなれば、俺の骨だ。

 まぁ、伝えてはいない。伝えれば引かれるかもしれないし、嫌な思いさせるかもしれないからな。

 まぁ、最初は俺の指か腕でも切り落として、それを渡そうかとも思ったが、あまりにもえぐかったのでやめた。めちゃくちゃ見た目がひどいからな。食材に切り落とされた人体のパーツを当てるという、軽く猟奇的な光景が見える。


「よし、まず、帰った後のそれぞれの取るべき行動の説明をする」


 俺が、作業中の皆に向けて話しかける。


「まずは、姫様とサキだ。最終的にはサキの家に送り届けるつもりだが、サキの家という事もあって流石に潜伏には向かない。サキはああ見えて、近衛隊の隊長だからな。住居くらい調べられてもおかしくない」

「では、どこで潜むと言うのだ」

「ああ、それについてだが、俺の別荘のようなところに送る。まぁ、ずっと行っていなかったから埃だらけかもしれないけど、きっと大丈夫だろう、あそこはかなり遠くの国だからな、流石にフォルド王国の手が届くことは無いだろう」

「そうか、了解した」


 まぁ、あそこなら、きっと大丈夫だ。

 実際、あの辺の探索という名目で、向かわせた兵団を一つ潰しているからな。潜伏しているのが分かったとしても、きっと何もしてこないだろう。


「そして、レフィとテンチェリィについてだ」

「私たちはあんたと一緒じゃ駄目なの?」

「駄目だ、危ないし、今度は俺が常に付いていられるわけではない、守ることができない」「じゃあ、どうするのよ」

「ああ、だから、俺の家族の家に送り届ける。ちなみに、俺の家族が住んでいる国は隣の隣だし、こっちも、まぁ、それなりには安全だと思う」

「そう……」

「ああ、大丈夫、別に奴隷扱いする奴じゃないし、そこは安心してもいい。あいつはある意味俺より優しいと思う。俺以外には……」


 うん、あいつならきっと突然押しかけても受け入れてもらえるはずだ。きっと金取られるけど。

 俺には優しくないけど、きっと、愛情の裏返しなんだ。きっと、そうなんだ……。


「まぁ、とりあえず、お前とテンチェリィには、そっちに向かってもらう」

「うん、分かった」

「で、お前はどうするのだ、曹駛」


 サキが訪ねてくる。


「ああ、俺か、俺はな……まぁ、会いたいやつがいる」

「会いたいやつ……?」

青石(あおいし) (とおる)ってやつに会いに行く」

「誰だ? それは」

「お前と姫様は良く知っているはずだ」

「うん?」

「だれでしょう?」


 姫様が尋ねてくる。

 なので、分かりやすく、彼の二つ名を言う事にした。


「そうですね、老爀斎(ろうかくさい)と言えば、分かるかも知れません」

「ろ、老爀斎様?」

「ご存じですね」

「は、はい、兵の指南役の」

「そうです、その老爀斎です」

「でも、なぜ?」


 姫様がさらに質問を飛ばしてくる。その一方で、サキは、老爀斎の名を聞いて、何かに気付いたようだ。


「サキは、どうやら気づいたようですが、彼もまた、(わたくし)と同じく、第19期の兵なのです。なので、知り合いと言うか、彼の立場を少しお借りしに行くのです」


 そう、彼の立場なら、第二王女に干渉できる。少なくとも、一般人である俺よりは。

 それに、彼に会う理由は有る。というより作った。

 俺はつい先日、またしても兵士になった。もちろん、一時的ではあるが……。

 だから、新入りの兵として、透に会いに行く。

 ちなみに23期の兵をしていた時は、一度も顔を合わせていない。だから、本当に久しぶりに会いに行くことになる。

 さてと、あいつはどれだけ老けたのかな。


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