4話・エルフ、連れ帰りました。
20150214.編集しました。
なんか凄い文字数が増えている。
―武元曹駛―
例の超高額なエルフ購入から、数日が経った。
まぁ、とりあえず、エルフとこいつの部屋の中身を全て、引っ越し業者に運んできてもらった。あらかじめ、こいつの部屋は決めておいたのもあって、引っ越しはそれなりにスムーズに終わった。
そして、その例のエルフはいま、俺の前で座っている。
最初は椅子に座らせようかとも思ったのだが、「座れ」と言ったら、勝手に床に座った。まぁ、女の子を床に座らせると言うのもなかなか経験することのない、随分と背徳的な行為だったので、あえて、そのまま座らせておいた。
「そう、久しぶりだな」
俺は主人で、こいつが奴隷。つまり、俺の方が立場が上なので、こんな美少女に馴れ馴れしく話してもなんら問題ないのだ。
いや~、いいね。
「………」
なんて思っていたんだけど、返事が返ってこない。
「なんだよ、無視かよ……お前、ちゃんと分かっているのか? 今日から俺がお前の主人だ」
「………」
え~。
なんだこいつ。
なんで無言なんだよ。別に喋れない訳じゃないだろ。
というか、初対面の時めっちゃ喋ってたじゃん。というか、攻撃すらもしてきたじゃん。
「ま、まぁ、聞こえてはいるよな」
「………」
「と、とりあえず、顔を上げろ」
「………」
ずっと俯いたままだったので、首輪を付けるために、顔を上げさせようとした。
奴隷には奴隷の証が必要だからな。
だが、目の前の少女は一向に顔を上げようとしない。
「顔を上げろと言ってるんだが……」
「………」
はいはい、また無言ですか。
そっちがその気なら。
俺は、エルフの顎を掴み、無理やり顔を上に向けた。
「……何をするつもり?」
やっと口を開いたか。
だが、声が震えている。
もしかして、もしかしなくとも、俺の事を恐れているのか? まぁ、いまや、俺の奴隷だからな。そして、俺の奴隷となる前、俺に魔法をぶっ放したりもしたからな。俺に何か仕返しをされるのが怖いんだな。
何だ、そんなことか。
「なんでもいいだろ、お前はもう俺の所有物なんだ」
「私はっ! ……物じゃ……ありま、せん……」
声を荒げて否定をしようとしたのだろうが、頭では自分の立場を理解しているのか、最初こそ勢いのあったその声は、徐々に弱くなっていき、最後には消え入るほどに弱々しいものになっていた。
確かに、人はものじゃない。俺もそう思う。
「だが、一般的には奴隷は主人の物だ。お前に戸籍は無い、人権もない。人の物としてでなければ、外を出歩くことも出来ない」
「そ、それが、どうしたと……おっしゃるのですか……」
俺に敬語を使うのがそんなに屈辱的なのか? 急遽取り繕ったかのような敬語を声を震えさせながら言うなんてよ。恐怖か恥辱か、感じるならどっちかひとつにしてくれよ、というか、お前の中で俺はどう見えているんだ? そんな強面でもないだろうに。
「まぁ、心配するな、そんな変なことをするわけでもない。ただ、お前にそとを出歩く権利を与えようと思っただけだ」
「どういうこと……ですか?」
「ああ、お前に首輪を付ける。それには俺の名前とマナが入っている」
「首輪? 一体、それのどこが普通だと? あなたはふざけているの?」
「ふざけてなんかいない」
というか、敬語はもう止めるんだな。それと、恐怖じゃなくて恥辱のほうが勝ったんだな。なんというか、微妙にショック。俺の下がそんなに嫌なのか。
まぁ、でも、首輪は仕方のないことだ。
首輪が無ければ、戸籍もなければ、人権もない奴隷の持ち主もなくなってしまうからな。
そうしたらどうなるか。奴隷は、一般的には『物』として見られる。外にあるその『物』に、もしも持ち主がいなかったら。
それは、ただの落ちている『物』だ。
ただ落ちているものを誰が拾おうと、誰が壊そうと、何をしようと、普通文句は言わないだろう。
だから、持ち主をはっきりとさせるために、首輪を付けるのだ。それと、俺がこいつに付ける首輪には魔封じの効果もちゃんと付いている。こいつに勝手に魔法を使われる心配もなくなるし、いくつかの問題が一気に解決するってわけだ。
「あなたは、私を人と思っているんじゃなかったの?」
「あれ? そんなこと話したっけ?」
「ええ、あの奴隷館の内の一人がそう話していたわ」
「ああ、あの子か」
最初に会ったあの子。
そんなこと話したのか。こいつ、最初は恐怖していたみたいだし、あいつはもしかして、俺が奴隷を物とは思っていないという事を話して、こいつの事を慰めていたのだろうか。随分と優しい奴だな。
ああ、やっぱあいつの事、買っておけばよかったかな。ちょっと後悔。
「そうだな、確かに。俺は奴隷を物とは思っていない」
「じゃあ、なんで首輪なんて……」
「それとこれは別だ。いくらものと思っていないからって、首輪の付ける付けないとは、関係がない。むしろ、お前が人の暮らしに近づけるように、首輪を付けるんだ」
「どういうことよ」
「おまえ、奴隷なのに、何も分からないんだな。お前、もしも奴隷に持ち主がいなかったら、どうなるか分かっているのか? きっとまた誰かに捕まって売られるってオチが待っているだけだと思うぞ」
「……そんなことは」
「あるね、人生はそんなに甘くない。それに、次にお前を売る店が、Jakirall`sShopとは限らないんだぜ。変な期待をするな。次の主人がお前をメイド代わりにするために買うとも限らないし、人として扱うとも限らない。もう一度言うが、人生はそんなに甘くない」
そう、人生は甘くない。そんな甘い人生を送れるなら送ってみたい。
まぁ、そんなに甘い人生なら、宝くじを当てた俺は今頃、モテモテのハーレムうっひょいだろうし、そうなっていないという事自体人生が、人生が甘くない事の証明になるだろう。
「それでもいいなら、首輪を付けなくたっていいんだ……あ、前言撤回。良くない、やっぱりよくない。俺、お前に3億。いや、3億2千万弱のお金を使わせているから、良くない。一般の人が一生掛けても無理な金額を掛けているから、絶対に良くない。お前を手放したくない」
こいつが別の男に奪われるビジョンが浮かんでしまい、思わず、抱きしめた。
ふわり、柔らかな感触と、甘い甘いメープルシロップのような匂いが鼻孔を通じて、俺の脳味噌を刺激する。
ヤバい。これ、ヤバいよ。ずっと抱きしめていたい。
「ちょ、ちょっと、な、なにを、メイド代わりって、これじゃ……」
そうだ、ヤバい。早く離れないと、俺の理性がヤバい。
俺は、赤く染まった顔を斜め上に向けている少女から、急いで離れた。
「ごめん、ちょっと、恐怖のビジョンが見えちゃって、つい」
「つい、って……」
本当に、つい。
でも、なんか、目の前のエルフから緊張とかその他諸々の良くない感情が、今、俺が抱き付いたことによって抜け落ちたみたいだな。なんか、この場も最初に会った時と似たような雰囲気になって来たし。結果オーライということで。ただ、気になる事といえば、こいつが顔を赤らめていることと、なんか俺が下に見られている気がする事かな。
でも、きっと気のせいだし、気にすることは無いだろう。思えば、最初に会った時もこんな感じだった気がするし。
「で、なんだっけ、そうだ、首輪付けないとだ。お前には3億2千万弱を使わされているからな」
「3億はいいとして、2千万は何処から来ていんのよ、3億からしたらそんなものでもないかもしれないけど、盛るんじゃないわよ」
なに?
2千万がそんなでもないだと。
「ふざけるなっ!」
「わっ……だから、急に叫ばないでってば……びっくりするじゃない」
「別に盛ってるわけじゃない。本当に2千万もかかったんだって、別途でだけど。というか、2千万をそんなでもないって言うな。お前に全財産の大半を使ったんだ。残った金がそんなにあるわけないだろっ!」
確かに5千万あった。あったよ。……一昨日までは。
だって、だってさ……
首輪が高かったんだよぉ……
確かに、デザインも良し、魔封じの性能も桁違い、ルビーダイヤモンドとオリハルコンで作られているから、強度もまず壊れることは無いくらいになっている。
けど、だけども、2千万はたけぇよ……残り財産の4割が吹っ飛んだぞ……。
値段も聞かずに買った俺が悪いんだけどさ、だけどさ、なんで首輪がこんなに高いんだよ。絶対に奴隷用じゃないだろ……。
確かにさ、これを買うって言った時さ、大手だから詐欺られることもないだろうと、必要なお金書いといてって言って、値段も聞かずに小切手を渡したよ。そして、確かに詐欺られることは無かったよ。
でも、この値段は想像つかなかったんだって。めちゃくちゃ高いとして、7ケタだろうと思ったんだって。まさか8ケタ突入するとは思ってなかったんだって。
だけども、だけれども、小切手に記入されていた数字は2千万だったんだよ。2千万。
待って、待って、いや、それ0が一つ多くないですか? って感じだよね。
最初は本当に200万だと思ったよ。でも、何度見ても200じゃなくて2000だし、念のため店長さんに尋ねたけど、2000万だった。
道理でこの首輪を買うって言って、無記入の小切手渡した途端、店長の機嫌がかなり良くなった訳だよ。急に他の商品も進めだすし、しかも、かなり格安にしてくれるし。
後に聞いてみれば、店側としても、この価格は買う者が現れないが、仕入れ値的にこれ以上安くするのはふかのうで、困っていたみたいだし、そりゃ売れれば機嫌もよくなるよ。
最初にあった5億は何処へいったんだろう。本当に、どこへ……
あ、全部ここにあるか。
「で、そう言うわけだ、首輪を付けるぞ。別にキスをするわけでもないし、いかがわしいことをするわけでもない。ただ、首輪を付けるだけだ。」
ただ首輪を付けるだけってのも、俺からしたらおかしな事なのだが。まぁ、必要なことだし。
「いかがわしいことしないって、でも、さっき急に抱き着いて来たじゃない、ちょっと怖かったのよ……」
「うっ……それを言われると、何とも言えないが、大丈夫。首輪を付けるだけだから、ちょっと上向いていてくれれば、すぐに終わるから」
「まぁ、いいわ……さっき抱き着いて来たときだって、そ、その、なんか、告白されたみたいで、怖かったと言っても、ほ、本当にちょっとだけだったし……」
「あっ……」
思えい返せば、確かに告白っぽい。ああ、恥ずかしい恥ずかしい。俺は何と言う事を言ったんだ。
「そ、それは、忘れろ、いいから、上向いてろ、首輪を付ける」
「まぁ……仕方……ないわね……」
あ、すごく嫌そう。
でも、俺は恥ずかしさを誤魔化すためにも、首輪を付けようとした。
「それ、首輪だったの? てっきり、カチューシャかなんかだと思っていた」
彼女がそれと指したものは、俺の右手に握られている、金属の弧のことだ。
確かに、カチューシャに見えなくもない。首輪には少々大きすぎるし、首に嵌めたって自然に外れて落ちてきそうだからな。
「ああ、そうだ、これが首輪。大きさは嵌めると自動調整してくれるようになっている」
「それは便利ね。高かったでしょ、なんか、豪華だし」
「ああ、すごくな……」
人よりも高いであろう装飾品だ。
目の前にいるエルフの少女は例外として、普通にお高い奴隷でも何人か買えるだろう。
本当に高かった。
「じゃあ、付けるぞ」
「ん」
少女は、上を向き、首を差し出すようにこちらに向けている。
なんか、ドキドキするぞ。首輪付けるだけなのにな。まるで、婚約指輪を付けてあげる時のようだ。まぁ、そんなの経験したことないけど。でも、女の子になにかを付けてあげるのってドキドキするな。目の前の少女は可愛いからなおさら。
俺は、160度くらい開いている、首輪を、少し、また少しを少女の首に近づけていく。
少女は髪が巻き込まれないように、両手で後ろにまとめている。
そして、首輪の内側と少女の首がそっと触れ合った。
その瞬間、首輪の両端が伸びていき、円になり、その円が徐々に小さくなっていき、少女の首にフィットする大きさとなったところで動きを止めた。
流石にすごいな。高いだけはある。
高いだけはある。
値段は大切なことだ。
「よし、付いたぞ」
「すごいわね」
「そうだな、え、っと……」
今更かもしれんが、そういや、呼び名が無いな、こいつ。
名前を言おうとしたが、言えずにそこで言葉が止まってしまった。
「どうかしたの?」
俺が、急に言葉を止めたのを気にしてか、少女はそう尋ねてきた。
「いや、そういや、お前の名前知らないなって。その、名前とか持っているか?」
奴隷だから、名前持っていなくたっておかしくは無いだろうけど、もしも、持っていないとして、呼び名が無いのは不便だからな。
「あるわよ、失礼ね」
少女は、首輪を自分で外せるかどうかを確かめるためか、軽く引っ張ってみたり、叩いてみたり、外し口を探してみたりしている。
「その首輪はお前じゃ外せないぞ、それを外せるのは付けたやつだけだ。ちなみに、俺が死んだら勝手に外れるように設定されている。まぁ、設定を変えれば死ななくても外せるようにすることも出来るし、逆に、死んでも外れなくすることも出来るが……」
俺を殺したら、お前は『物』に逆戻りだという脅しを含ませて言ったつもりだったのだけど、自分で言った直後に気付いた。
外れた後、自分で付け直せば、状況もっとよくなるんじゃね? と。
で、でも、きっと大丈夫。きっとこの子はそんなことしない。きっと……。
「で、でだよ、な、なまえを教えてくれよ……」
首輪の事から思考を逸らせるために、急遽、名前を尋ねたのだが、ちょっと声が震えたし、少し上ずりかけたかもしれない。ああ、首輪の事、どうしようかな……。
「レフィ……」
「レフィ?」
「そう、私の名前はレフィ=パーバド」
「そうか、立派な名前だな。ファーストネームは、レフィか?」
「うん、そうよ。で?」
「で? ってなんだ? なんか不満でもあるのか?」
「まぁ、不満は色々あるけど、今はそんなことは置いておくとして、あなたの名前は? 私もあなたを呼ぶとき、名前を知らなきゃ、不便じゃない」
「いやいや、ここは、ほら、ご主人様とかでもいいんだぜ、メイドらしくな」
「殴られたいの?」
突然の殺意。
殺意コワイ駄目ゼッタイ。
というか、あれ? 俺、主人だよな。
「ごめんなさい」
とりあえず、謝っておいた。
あれ? 本当に、こいつが奴隷で、俺が主人で合っているんだよな。おかしいな。
「で、名前は」
「はい、俺の名前ですね」
「うん」
「俺は、武元曹駛。今は無職さっ……」
自分の出せる限りの爽やかさを開放しつつ、自己紹介をしてみた。
「いや、別に格好良くはないわよ……」
うん、まぁ。
だって、無職だし。
「で、あなたのファーストネームは?」
「曹駛だ。ソウシ。最近はファーストネームを後ろに持ってくる人も減って来たからな、珍しいかもしれないけど、そこは慣れてくれ」
昔はこれがここでは普通だったらしいんだけどな。いまや、そんな文化も風化して、ファーストネームを文字通り最初に持ってくる人が増えた。まぁ、俺は変えるつもりも更々ないが。
「とりあえず、今日からお前はメイドだ」
「そう、それよ、そう言えば、あなたさっきも言っていたけど、メイド代わりってどういうこと?」
「いや、実のところ、俺のお金は宝くじが当たったからあんなにあったわけであって、永続的、断続的に入ってくるものじゃないんだよ。だから、メイドさんを雇うのはいいんだけど、途中でおかねが尽きたらどうしようか、とか、そうなったら一人かな、寂しいな、とかと考えちゃってさ。でも、どれいなら、一度お金を払えば、もうお金を払わなくても済むし、いいかな~って思って、お前を買った……」
「その、そのさ……」
「なに?」
「言いにくいんだけど……」
「うん」
「言ってもいいかな……?」
「うん、いいよ」
「じゃあ、言うけど……」
「なに?」
「わたしを買うために使った3億あれば、メイドさん十数人を一生分雇うくらい出来ると思うんだけど、本当に私で良かったの……?」
あ……。
そう言われると、そんな気がしなくもないけど。
考えれば、考えるほど、そんな気がしてきた。超してきた。
一般人が3億年働かなきゃ手に入らないほどのお金だし、多分、可能だよな。家も広いし、住み込みのメイドさん数十人を雇うくらい……。
ああ、なんかすごくミスった気がする。
いや、ミスってないって思い込みたいんだけど。
うん、ミスってない。ミスってないよ。
だって、ほら、こんなに可愛いエルフが自分の物になったんだもん。メイドさんは雇うだけであって、自分の物になる訳じゃないし。ほら、もしも劣情がさ、ほら、こう、ほらね、出て来たとするじゃん。男だしさ、ほれ、でもさ、ほら、その時にね、ほら、もしも、もしもだよ、ほら、もしもの話だだけどさ、そんなことはしないけどさ、ほら、もしもの話だけどさ。
感情の赴くままに襲っちゃっても法に引っかからないじゃん。
まぁ、ほら、もしもの話であってさ、そんなことは絶対にしないけどさ、あと、ほら、ね、もしも、そのね、問題が起きても法に引っかからないじゃん。
だから、俺は選択を間違っちゃいない。メイドさんの中にこんなに可愛いエルフの子がいる訳が無いんだ。
そう、この選択は最良の未来への一歩なんだ。
「あ、あ、ああ、そそそ、そうだよ、お前で良かったんだよ」
「う、うん……」
そうだ、俺はポーカーフェイスが全くできないんだった……、詰まる所、何が言いたいかと言うと……普通に何思っていたか、バレてるぅ……。
「そ、その、私が言うのもなんだけど、なんかごめんね……」
何も悪いことをしていないはずなのに、しょんぼりとしている彼女を見て思った。
あ、可愛い……と。
やっぱり、この子を買って良かった。間違ってはいなかった、と心からそう思えた。
俺は、ポーカーフェイスは出来ないけど、心の切り替えは早いんだ。
「いや、いいさ、別にお前を買えたからな、後悔なんかしていないぜ! だって、お前、すっげぇ可愛いし」
「当たり前でしょ、エルフなんだから」
「それでも、その中でもだ」
確かに、エルフには美男美女が多い。
しかし、そのなかでも、この子は一番可愛い。俺が今まで見た女性エルフのなかで、一番可愛い。
それに、この子から強い意志が感じられる。なにか大きなことを果たそうとしているような。そんな意志が感じられる。けど、どこか情緒不安定で……。そんなこいつにすごく庇護欲がそそられた。
俺が、3億も払ってこいつを買った理由は、買った時は、いや、さっきまではよく分からなかった。けど、いまなら少しだけ分かった気がする。
きっと、俺は、こいつを助けたかったんだろう。
こいつの支えになりたかったんだろうな。
「よし、とりあえず、メイドさんはメイドさんらしく、こいつに着替えてもらおうか」
「ふーん、メイド服……ね……」
「ああ」
俺は、メイド服セットをどこからともなく取り出して、レフィに押し付けた。
俺が、こいつを支えたいと言うのは嘘じゃないが、メイド代わりに買ったのも嘘じゃない。だから、仕事はしてもらおう。
「じゃあ、着替えてくるから、ちょっと待ってて」
と、メイド服セットを抱えたレフィが、部屋の扉に手を掛けたのを見て、少し、意地悪をしたくなった。だから、声を掛けてレフィを引き留めた。
「おい、待て、どこに行くつもりだ?」
「どこって、私の部屋に……わざわざ、用意してくれたんでしょ」
「何を言っているんだ? ここで着替えろ」
「あ、あんたが何を言ってんの!? 馬鹿言わないでよっ!」
「おいおい、主人の命令が聞けないのか?」
「そ、それは……くっ……わ、わかったわよ、ここで着替えればいいんでしょ」
「ああ、そうだ、それでいい……」
レフィが、今身に着けている服を脱いでいく。
衣擦れの音が聴覚を、レフィの白い肌が視覚を、そして、レフィから漂ってくる甘いメープルシロップのような匂いが嗅覚を通じて、俺を刺激する。
(や、やべぇ……ど、どうしよう……)
確かに、言ったのは俺だ。発案者は俺だ。
でも、本当に着替えるとは思わなかったし、本当に着替えさせるつもりもなかった。何回かいやだって断られた末に、仕方ないな、特別に自分の部屋で着替えていいぞって言うつもりだった。
いや、でも、うん。
ま、まぁ、せっかくだし、拝んでおこう。美少女の生着替えだ。
レフィの足元には一枚、また一枚と衣類が溜まっていく。
そして、気づけば、レフィが身に着けているのは下着だけとなっていた。
あ、これ、無理。
恥ずかしい。俺が恥ずかしい。
なんか、どんどんと甘い匂いも強くなっている気がするし。レフィが脱いだからかな。なんだろう。脱いだ服とか下に置かれるたび、なんかふわっと風が来るんだけど、その匂いが俺の理性を全力で刈り取りに来る。
やばい、本当に無理。この場に居られない。
よ、良し、逃げよう。逃げるんだ、戦略的撤退だ。
うん、そうしよう。それがいい。
下着姿のレフィはブラジャーにまで、手を掛けていた。
えっ、下着まで脱ぐの? 目の前に俺がいるのに?
確かに、メイド服セットには、パンツとブラジャーも含まれているけど……
えっ? マジ? マジなの?
うん。
逃げよう。
今すぐ逃げよう。
すぐに自分の部屋に逃げ込むんだっ!
「じゃ、じゃあ、俺は、じ、自分の部屋に戻っているから、そ、その、掃除をしておいてくれ」
「え、ちょ、まっ……」
「そ、そいじゃな、あ、あと、よろしく」
俺は、急ぎ足で、かなりの急ぎ足で、むしろ走って、その場を去り、自分の部屋に向かって一直線。
くそっ!
俺の意気地なしいいぃぃィィィィィィィィィィィ!!!!!!!
ちょっぴり、世界観を推理はできるようになってきたのかもしれません。
かもしれません。
ルビーダイヤモンドと言うのはダイヤモンドの硬度を持ったルビーの事です。名前の通りです。こういったものは大体名前通りになるのです。
オリハルコンは言わずと知れた伝説の鉱物ですね。
それと、宝くじの賞金凄すぎね?とかと御思いの方も多いかと思います。
ええ、僕もです。
この世界の一般平均年収が1万ギジェです。つまり、そのくらいの通貨レートなんだなぁと思っていただければなんですけど……5億か……ロトはどれだけキャリーオーバーしたんでしょうねぇ……。
ちなみに、この世界にも国という考えは有りますし、海もあります。
しかし、通貨ギジェは全世界共通の通貨であるので、どこでも使えます。
そして、国ごとに平均年収が違うとかは合っても、それはあくまで職種の関係であって、貧富やレートが違うわけではないのです。
おっと、もしかして、あとがきが一番推理材料になったりしちゃいましたか……?
まぁ、次更新はいつになることやらわかりませんが、これからもよろしくお願いします。
ありがとうございました。
20150214.曹駛がパーバド性についての話をしているのを全カットしました。一部、第三者視点が混じっていたので、曹駛視点に変更しました。それと急ぎで打ち直したため、少々誤字が有るかもしれません。あと、ちょっとどうでもいいけどダイヤモンドルビー → ルビーダイヤモンドになりました。あとがきの方は付けたし意外は改変していないので、本文だけ間違っていたという……。
文字数が2500くらい増えて一番驚いているのが岩塩龍自身だったりする。
それと、編集後のあとがきまえがきですが、その時その時の報告が掛かれていた場合は消しますが、それ以外は残して、付け加えて書く形なるので、これは大事だろうから覚えておかなきゃ、などと焦らなくても大丈夫です。