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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第一章・高慢エルフ買いました。
3/203

3話・美少女エルフ、見つけました。

20150210.編集致しました。だいぶ変わっております。それと、文字数がめっちゃ増えている気が……。

 ―武元曹駛―


 次はどの部屋にしようかな。

 とりあえず何も考えず三階まで登ってきて、軽く回って見たけど、俺好みの子は今のところは、最初に入った部屋のあの娘だけだな。

 ちなみに、あの娘の部屋以外には、普通にベッドもしくは、布団があった。

 つまり、藁と毛布で寝ているのはあの子だけだった。いじめか?とも思ったけど、そんなことは無いだろう。見て回った限りでは、その辺はしっかりしているみたいだし。

 よし、次は二階に行こう。

 二階は意味もなく飛ばしたと言う事は無い、上から順にみて行けば、恐らく最短で見て回れるだろう。これは合理的な考えだ。そう、合理的な考えで三階から見て回っただけで、別に意味もなく三階から見たわけじゃない。そう、そうなんだ。そうなんだよ。まぁ、最初に一階の部屋に入ったのは置いておくとして……。

 意味もない訳も分からない向かう先も不明な言い訳を心の中でする。

 で、二階に来たのだが、明らかに漂う雰囲気の違う扉がある。

 見た目がもう既に他の扉とは違う。

 これ、すげぇな。

 装飾がものすごい。

 精巧な金細工のネームプレートが付けられているだが、その時点で既に奴隷の部屋ではない。

 というか、本当に奴隷の部屋なのか。ここのオーナーの部屋とかという可能性は……いや、無いよなぁ……この建物全部奴隷用だって言ってたしなぁ……。

 そうなると、この部屋の持ち主というか、ここに住んでいる奴も奴隷という事になるよな。

 隠れる奴もいれば、贅沢する奴もいる。ここにいる一部の奴隷は、自分が奴隷であるという自覚が有るのだろうか?


「くしゅん……です……」


 下の階からくしゃみが聞こえた気がしたが、きっと気のせいだろう。

 それにしても、この装飾のお金はどこから出て来たんだ? これだけでどれだけ飯が食えるんだろう。その購入費もここの店主が払っているとしたら、善人っていうレベルじゃないぞ。もはや狂っているレベルだ。どちらにせよ、こんなことを許している時点で、商人向きじゃねぇのは、確かだけどさ。

 ま、まぁ、中に入ってみるか。中は意外と質素で小汚い部屋かもしれない。

 と、僅かながらにはそう思いつつ、扉を開ける。


 この部屋の主は本当に奴隷なのか?


 それが第一印象。


 僅かながらの思い、それは俺の希望だったのかもしれない。

 確かに、今の俺以上にいい環境で住んでいる者は少ないだろう。けれど、宝くじが馬鹿みたいに当たってしまう前の俺よりも、奴隷の方がいい暮らしをしているとは思いたくなかったのだ。

 だから、僅かにだが、普通の部屋に住んでいる事に期待していた。だが、そんな期待はあくまで期待、事実は期待じゃ動かない。

 ああ、そうだ事実は期待や希望じゃ動かなかった。

 内装もとても煌びやかで、いくら金がかかっているか分かったものではない。

 俺の前の部屋、いや、家と比べるまでもなく、こっちの方が凄い。絶対凄い。ここにある物全部換金したら、絶対、俺が前まで住んでいたアパートで一生暮らせる。なんだよこれ。

 本当に奴隷なのかよ。

 そんな超豪華な部屋と共に目に飛び込んできたのは、金と白のコントラストだった。

 窓から差し込む光を受け、キラキラと輝く金髪。

 シミや傷が一つもなく、透き通るように白い肌。

 それに、アクセントでピンクの小山が……ゲフンゲフン……今のはなかった事にしよう。

 可愛さの中にも凛々しさを潜めている顔。耳はとがっており、そこから、純粋な人間ではないことが分かる。

 つい、見とれてしまった。

 ああ、最高の出会いかな。相手は、奴隷だけど。

 まぁ、奴隷にしてはちょっと贅沢過ぎるように思えるけど……。

 口を開けたまま、固まった俺の視線の先には……


 全裸のエルフがいた……


 俺は、すぐに視線を逸らし、部屋の内装を見渡す。


「いやー、すごいな、この部屋、俺が前に住んでいたアパート全部よりも金掛かっているんじゃないか?」


 贅沢な奴だな……なんて……。


「へ」

「へ?」


 へ、とは一体どういう意味だ?エルフ語か?いや、そんなはずはないんだけど、だって、エルフは普通に人と同じ言葉は話すし。


「へ、へへへ、へ……」


 壊れたか?

 エルフが「へ」という言葉を連発させている。一体何を言おうとしているんだ?


「へ、へへへへへ」

「………」


「ヘンタイッ!!」


 エルフの少女は蹴りを放った。

 それは、疾風の蹴りである。

 疾風のように早いとかではなく、文字通り疾風の蹴りである。

 どう説明すればいいのか分からないが、離れたところで放たれたはずの蹴りが、俺に当たった。

 えっと、本当にどう言ったらいいんだ。エルフが(くう)を蹴ったら、強烈な空気の砲丸が放たれて、それが俺に直撃した。とまぁ、強いて言うならこんな感じだろうか。

 で、その蹴りの時、見えてはいけない女の子の楽園(パラダイス)が見えた気がするが、きっと気のせいだろう。気のせいだと思う。気のせいじゃないと困る。でも、でも、もし、もしも、見えたとして、それは内緒のお話である。

 それに、もしかして、さっきのは魔法か? だとしたら、魔法を使える状態のままこいつを生活させているってことだよな。せめて魔封じのアイテムくらい装備させておいてほしい。俺じゃなかったら危なかったはずだ。一般人相手に使ったら下手したら致命傷になる魔法だってあるんだから……。


「いてぇ……何すんだよ、てめぇ……」

「何をするも何も、人の裸を勝手に見たあんたが悪いのよ」

「それは、お前が勝手に裸になったからだろ」

「着替えている途中だっただけじゃない」

「知らねーよ、そこは自己責任だろうが」

「そんなことないわよ、せめてノックくらいしなさい」

「それこそ知るかよ、お前は商品。俺は客。なんで、ノックなんかしなきゃいけねーんだよ」

「女性の部屋に入る時はノックするものよ」


 ハァ……。

 随分と気の強い奴だな。

 と思っていたんだけど、少し撤回。

 俺の目の前のエルフの少女は急にモジモジとし始めた。


「そ、そんなことより、ね、ねぇ、み、見た……?」

「な、何を……い、一体何のことだい……?」


 きっと楽園の事だろう。実際見てしまった俺は、しどろもどろな返答をしてしまう。


「そ、その、私の、えっと、お、おまたの……ところ……」


 ……か、可愛い。

 裸に毛布を纏っただけの首輪を付けられたエルフの女の子は、顔を赤らめ、もじもじしながら、そう言った。

 これは反則級の可愛さだ。

 先ほどの蹴りが許せてしまうほどのな。


「買いだっ!!」

「きゃっ! きゅ、急に大きな声出さないでよ……」

「なぁ、お前首輪見せろ」

「な、なに? か、買うつもりなの?」

「ああ、そうだ、文句は無いな」

「文句はあるけど、その前に、言っておくわ、私を買うのは無理よ。無理。諦めなさい。今までそうやって首輪の番号を見た人の中で私を買えたのは誰一人いないのよ、無理に決まっているじゃない」


 先ほどまでの恥じらいは少し薄れ、また少し気の強い彼女が表に出てき始めた。

 よほど、値段に自信があるようだな。いや、実際にも値段は高いのか。これほどまでに、可愛いというのに、誰一人買うことに成功していないと言う事は、そう言う事だろう。

 だが、しかし、俺なら買える。その自身が、勇気が、お金がっ!!俺にはあるッ!!


「ふん、それはどうかな」

「な、なに……じゃ、なくて。あなた、それほど金持ちには見えないんだけど……その、言っちゃ悪いけど、なんか背伸びして高級料理店に来た人みたい……」

「ぐふぅ!!」


 な、なんだ、このダメージは……。

 せ、精神が、精神が、ゴリゴリと……削られて……


 こ、これが魔法っ!(※違います、彼が勝手に精神ダメージを負っただけです)


「うわっ、だ、大丈夫? なんか口から血吐いたんだけど……」

「ああ、だひじょうふ(大丈夫)ほれは血糊は(これは血糊だ)

「なんで持っているのよ、というか、急に滑舌悪くなったわね」


 まぁ、いざという時のための血糊がここで役に立った?ようで何より。

 ああ、舌いてーなー。じゃ、なくて。血糊不味いなぁ……。


「さてと、で、言うが」

「何よ」

「なぁ、お前、俺に買われないか……?」

「いや、だから、無理よ。無理って言ってるじゃない。私を買えた人は誰一人いないんだって」

「だから、俺が最初で最後の一人目だ……」


 言葉の意味が分からない。

 何を言っているかは分からないが、言おうとしていることはきっと伝わったはずだ。今はそれでいい(いや、全く意味は分からないんだけど、伝わってる様子でもないんだけど)。


「じゃあ、フロントに行くから、付いて来いよ」

「待ってよ、どうせ買えないんだから、私を連れて行かないで、また部屋に戻ってくるの面倒くさいじゃない」

「いや、絶対に買う。意地でも買う。お前の帰るべきところはこの部屋じゃなく、俺の家だ。絶対にお前を連れ出してやる。絶対に、ここよりいい生活をさせてやる。だからっ……俺の物になれよ……」

「………」

「………」

「………」

「……くっ……」

「なんか、告白みたいね……」

「言わないでくれ、気づいているから……なかなか恥ずかしいから……」

「大丈夫……私も少しドキッとしたわ」


 俺は、自分の顔を見せないように、彼女を後ろにしたまま腕を掴み、前に進もうとした。


「わ、分かったわよ、い、行くわよ、だから、少し待って」

「待たない、鍵を掛けて閉じこもるかもしれないだろ」

「そんなことしないから、待っててば、ついて行ってあげるから、せめて服くらい着させてよ」

「あっ……ご、ごめん」


 すっかり忘れていた。

 そういや、裸毛布だった。

 そんな姿の女の子を外に連れ出したら、俺は捕まるんではないだろうか。奴隷だけど、めっちゃ可愛いし、事情聴取くらいはされそう。

 俺は急いで廊下に出て、部屋の扉を少々乱雑に閉めた。その衝撃で金細工のネームプレートが大きく揺れ、ガツン、ガツン、と音を立てた。

 定期的に鳴る金細工と扉がぶつかる音を聞きながら待つこと数分。

 エルフの少女が部屋から出てきた。

 白いワンピースの服はシンプルであるが、このエルフの少女自身を最大限引き立たせてくれている気がする。気がすると、最後に付け加えたのは、単純に俺にはそう言うセンスが無いので、言い切る自信が無かっただけであって、大した意味は無い。

 そのワンピースは、どうやらシルクで出来てるようで、彼女の手を取る時に風に揺れたワンピースが手に触れたのだが、それを視認していなければきっと触れたことに気付くことはなかったかもしれない。それほどまでに、自然な手触り。きっと、バカ高いんだろうな。


「行こうか」

「う、うん……」


 彼女の手を引き、フロントに向かうと、そこでは店主がコーヒーを飲んでいた。


「おっと失礼……っ……そ、そちらにするのでしょうか……? し、失礼ですが、お客様が購入なさいますのは少し難しいかと……」

「いや、俺にはきっと買えるさ」

「その自信は一体どこから来るのよ」


 金だ。

 俺の財力を舐めるな。


「そ、それなら、一応値段を提示させていただきますが……」

「ああ」

「お、お値段はこちらとなっております……」


 店主はそう言うと、購入契約書を見せてきた。

 た、たっけぇ……。なんだ、この価格。

 そこに書かれていた金額は3億ギジェ。

 なんだよ、この値段。

 成人男性の平均年収の約3千倍。

 馬鹿かよ。ふざけるなよ。なんだこれ。

 確かに、買えないことは無い。

 けど、俺の財産の大半が吹っ飛ぶことになる。

 俺が、宝くじで手にしたのは総計約5億ギジェ。家とか土地とか家具とかその他もろもろで、1億と5千万キジェといくらかを使った。

 で、残りは……約3億5千万ギジェ……。

 か、買うのか……?

 本当に買うのか?

 俺は、この狂ったとした思えない金額を本当に支払うのか……?

 ここに来て、俺は迷い始めた。


「その娘は、家具やらなんやらで、大分この店のお金を使うので、もともと高い値段だったのですが、その、家具代などを丸々上乗せしていった結果、その金額になってしまいました」


 なってしまいましたじゃないだろ。どんだけ買ってんだよ。というか、店の金使うなよ。買い与えるなよ。

 くっそ。この店の金で買っていたのかよ……しかも上乗せか……。


「まぁ一応、あの部屋の中身は全ておまけとして付きますが……その、本当にご購入なさりますか……?」


 その言葉に、俺の心の揺らぎはどんどん大きくなっていく。

 諦めるという選択肢も見えてきた。だけど……このあとの彼女の言葉を聞いて、俺の迷いは吹き飛んだ。


「ほらね、やっぱり無理でしょ……」


 彼女は少し呆れたようにそう言ったのだ。

 まるで、最初から知っていたかのように。

 期待していなかったかのように。

 彼女はまるで「どうせ」と言っているようにも見えた。

 俺は、吹っ切れた。その一言で……。

 教えてやるぜ。俺の凄さをな。


「私、もう部屋に戻るね」


「待てッ!」



 俺は、右手で少女を引き留め、左手で、300,000,000Gijeと書かれた小切手を店主に渡した。


「俺の全財産は、三億五千万ギジェだああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「………」

「………」


 フロントには沈黙が訪れた。

 いや、フロントどころがこの店全体が沈黙した。

 それは、時間が止まったようにも感じられた。

 そして、その沈黙を最初に破り、時を再び動かしたのは店主である。


「この小切手は本当に使用できますか?」

「ああ」

「確認いたします」


 店主は、3億という額を前に、冷静に行動した。

 フロントの電話を取り、通話をしている。銀行に問い合わせているのだろう。


「はい、はい……はい、分かりました……」

「どうだ、本物だっただろう」

「はい、確かに……」

「じゃ、じゃあ、わ、わたしは……その……この人に……?」


 明らかに戸惑っていた。

 決して買われることは無いと思っていたのだろう。確かに、3億ギジェも払って一人を買うという行為は馬鹿のやる事なのかもしれない。

 けど、それでも、俺は馬鹿だから買った。悪いか。


「じゃ、じゃあ、その……これから……」

「ああ、俺の物だ」

「そ、そう……」


 彼女の瞳は潤んでいたが、それには気づかないふりをしておくことにした。馬鹿な俺は、その意味も分からないしな……。


「じゃあ、明日か明後日には迎えに来るから、家に来い」


 あの部屋の家具とかを運ぶとなるといろいろ準備がいるだろうしな。

 あーあ、また金を使うのか……。

 5千万とか有ってもすぐに使い切りそうだな。あと、最初に見たあの少女は、買えそうにないな……。本当はあいつも買うつもりだったんだが……思った以上に痛い、痛すぎる出費だ。


「じゃあ、今日のところは、帰ります」

「ありがとうございました、またのご利用ご購入をおまちしております」

「………」


 俺は、かなり大きな出費から、これからの生活の予定を見直しながら、帰路についた。


この下の編集により相違点の提示は少しネタバレの雰囲気が有るかもしれないので、初見さんはご注意を。





20150210.

血糊→舌を噛んだっぽくしました。

それと、曹駛が実は涙に気付いていることにしました。

ちょくちょく混ざる第三者視点をすべて第一者視点に変更しました。

細かい描写やシーンが書き増しされました。



うっへ、誤字誤字パラダイス。

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[一言] 誤字報告です 「そんなことしないから、待っててば、ついて行ってあげるか、せめて服くらい着させてよ」
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