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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第三章・兵士ですか、お断りします。
29/203

29話・こいつですか、ドリアードです。

「私はドリアードです。名前はまだありません」


 俺の前に立っている少女もとい幼女はそう言った。

 みんな唖然。

 みんなと言っているのだから、サキとレフィだけではない。

 俺も唖然だ。

 レフィに関してはゴミを見るような目で俺を見ている。


「お前、喋れたのかよ」

「はい」


 そう、前まではこいつが喋っている所を見た事がないのだ。自己紹介と言いつつも、俺がしょうかいするつもりでいた。そしたら、こいつが急に喋りだすもんだから、俺もかなりびっくりした。

 こいつの声、今、初めて聴いた。

 意外と可愛らしい声してるな。


「まぁ、正確には、ちゃんと喋れるようになったと言うのが正しいのでしょう」

「そうなのか?」

「はいっ!!」


 なるほどな、元気は良し。


「ところで、その呼び方は何だ?」

「『お兄ちゃん』っていう呼び方の事ですか?」

「ああ」


 その呼び方はテンチェリィと被ってるし、なんかレフィの視線がより痛いものになった気がするから、出来れば別のにしてほしいかな。


「それは、特にないですけど、嫌ですか?」

「ま、まぁ、別のにしてくれるとありがたいかな」


 視線が痛い。凄い痛い。

 痛い痛い痛い痛い痛い。

 いや、凄いね、これが魔法の力か……(※彼が勝手にダメージを受けているだけであって魔法ではありません)


「うーん」


 ドリアードが唸っている。

 考え中かな。

 それにしても久しぶりに召喚したな。

 まぁ、召喚したくなかったから、意図的に召喚してなかったんだけど。

 とりあえず、抱っこするか。


「よいっしょ……と……」


 軽いな。

 精霊だから、余計に軽いのかもしれない。

 それと、レフィのゴミのようなものを見る目が、有るだけで周囲に毒をばら撒くゴミ以下のものを見る目に変わった。

 とりあえず、ドリアードを顔の前まで掲げて、レフィの視線をガードしよう。

 顔の前まで掲げるために、ドリアードのお腹に抱き着くようにしていた手を、脇の下まで移動させる。


 ふにっ。


 あ、柔らかい。

 何がとは言わないけど。

 あと、レフィの視線に殺意を感じる。

 気のせいだろうか。

 気のせいだろう。

 そう信じよう。

 そう……今は、それを信じよう。


「あ、思いついた」


 と、ドリアードが声を上げる。

 MP(mentalPointメンタルポイント)が少し回復した。

 流石、回復系統の精霊なだけある。


「ねぇ、ねぇ、私、新しい呼び方決めたよ、反論は受け付けないからね」


 と、ドリアード。

 ちなみに、なんか決めポーズみたいなの取ろうとしたようだが、俺に持ち上げられているので、上手く出来ていない。


「じゃあね、言うよ」

「うん、なになに、どんな呼び方をしてくれるの?」


 期待。

 超期待。


「そのね、お兄ちゃんは、お兄ちゃん改め、ご主人様ってことで、いいよね、さっき言った通り異論反論は認めないよ、ご主人様」


 ………。


「グルックさん」

「ハイ、ナンデショウカ、レフィサマ」

「(し・け・い)……なんでもないわ」


 ニコニコしている。

 口パクで死刑って言ってるし……。

 ああ、また残機数が減るのか……。まぁ、俺の寿命は残機システムじゃないけどさ……。


「さてと、気になっていたのだが、質問いいかな、グルック」

「ああ、何だ」


 サキからの質問だ。

 どう腕を治すのかとか、その辺の事だろ。

 まぁ、びっくりするだろうな。

 その質問が来たら、「そうだな、見ていろ、今から治してやる」と言って、直してやるさ。


「その子は誰だ。返答によっては、悲しいことだが、お前を捕まえなければいけない」


 あ、違った。

 というか、サキまで俺の事を……くそ……最近、風当たりが強い。


「で、ご主人様、今日は何? こんなに飯森に連れて来てくれて、何の用? まさか、プロポーズ? え、でも、恥ずかしいよ……こんな人前で……でも、それがご主人様の望みなら……」


 チャキ……。

 首元に槍。

 その槍の持ち手はサキ。

 というか、怖い。やめて。みんな俺を殺そうとしないで。


「「説明してもらおうか」」


 レフィとサキがそう言う。


「い、いや、まって、落ち着いて」


 怖いよ、怖いよ。

 俺が、そう震える。そんな時に、ドリアードは「しゅらば~」とかなんとか小声で呟いていた。

 まぁ、あながち間違いでもないのかもしれないが。

 死ぬ方の修羅場だ。

 なんでこんなことに。


「よし、まず槍を下ろそうか」

「断る」

「そうか、じゃあ、そのまま聞いてね」

「断る」

「なんでっ!?」


 刺す気か。貫く気か。殺す気か。


「あ、すまん、断らない。そのまま続けてくれ」


 びっくりした。

 サキまで狂ってしまったのかと。


「ああ、説明する」

「手短にな」

「まず、誤解を解きたいが、これは人の子じゃない」

「「えっ……」」


 またしても、二人の声がハモった。


「「じゃあ、曹駛の子なの」か」

「ちげーよっ!!」


 どんな勘違いだ。

 そういう意味じゃねーよ。


「そういう意味じゃない。もう、ストレートに言うが、こいつは俺の精霊だ」

「え?」

「ああ、精霊。ていうか、ドリアードって言っただろ。なんで気づかないんだ」

「え、いや、ドリアードっていう名前かと……」

「右に同じく」


 いやいや、なんでだよ。


「ていうか、名前は無いって言ってたじゃん。ドリアードが名前でない事くらい分かるだろ」

「いや、ジョークかなって」

「右に同じく」


 いやいや。


「まぁ、だから、そういうことだ、大丈夫」


 自分で言っておいて、何が大丈夫なのか分からないが、大丈夫。うん。


「さてと、じゃあ、今から、腕治すぞ」

「ああ、頼む」

「うん? ご主人様、この人の腕治せばいいの?」

「ああ」

「えー、プロポーズじゃなかったの~」

「そんなわけないだろ」

「まぁ、いっか、これからいっぱい食べれるんだよね」

「ああ、好きなだけ食べろ」


 これから、サキの体の欠損部分を完全修復する。

 治癒なんてもんじゃないから。

 修復って言った方がしっくりくるほどにな。

 ただ、それが、こいつの呼び出したくない理由のひとつでもある。


「いただきます」


 ドリアードが、おれの右手の指を食いちぎった。

 その後も、俺の体のいろんな箇所を食っていく。

 なぜ、こんなことをしているかと言えば、生命力を得るためだ。

 その完全修復は、俺の死からの復活と似たようなものだ。

 寿命を使い完全に元に戻す。

 通常は、そこまで強力な回復は出来ない。

 なぜなら、ドリアードが回復の術を使う時に使用する生命力は、通常、周りの草木から少しずつ貰い、それを使うのだ。

 その回復量は、俺からしたら、微妙である。

 といっても、切り落とされた腕も、腕の部分さえちゃんとあれば、くっ付けて、完治させることは出来るので、普通に使うなら、微妙と言うわけではない。むしろ、強力過ぎるくらいだ。

 だが、今回は欠損部分が残ってないから、それは無理だ。

 まぁ、出来たとしても、やらないんだろうけど。


「ごちそうさま。今回もとってもおいしかったよ」


 やらない理由はこいつが俺の血肉大好きだから。

 どうしても食いたいらしい。

 一度呼ばれたら、せめて血だけでも飲みたいらしい。

 これがこいつを呼びたくない理由である。

 せめて血飲むまでは、とかなんとか言って、召喚するのはいいが、俺を食べさせるまで帰ってくれない。

 痛いのは嫌だからな。だから、あんまり呼びたくない。


「じゃあ、治すから、じっとしてて、お姉ちゃん」


 みるみるうちに、サキの失われた右腕が治っていく。

 うん。やっぱチート的な回復呪文だ。


「はい、完治」

「ああ、どうも、ドリアード」

「うーん、それなんだけど、今度来る時までには名前考えておくから、その時は名前で呼んでね」

「わかったよ」

「うん、じゃあね、ご主人さま」


 そう言って、ドリアードは消えた。

 まぁ、この辺は、イフリートと同じで、精霊だから、こういうことが出来るのだ。




 それと、レフィに一回殺された。


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