28話・死んでいましたか、失敗です。
ブックマーク100件いってました。
本当に有り難うございます。
何かやりたい気持ちでいっぱいですけれど、何をすればいいか分かりませんね。
―武元曹駛―
目を覚ます。
世界が開かれた……なんて格好つけて言ってるけど、生き返っただけ。
まぁ、それ言ったら、格好をつけることすらできなくなるから、仕方ないだろ。体感的には久しぶりの登場なんだ。なんかやらせてくれ。目立たせてくれ。
なんて、冗談。
うっそでーす。
とか、言っとけば和むかな。いや、なんか、そんな雰囲気じゃないかな。
目の前の惨状は、予想以上だったかもしれないし、もしくはそうじゃないかもしれない。
まぁ、死人は俺だけか。全然いい結果じゃないか。
「曹駛……じゃ、なかった、グルック、その、大丈夫?」
「ああ、知っての通り、大丈夫じゃなかったが、今は大丈夫だ」
「その……」
「サキか?」
「うん……もう、助からないかもしれない」
「お前の魔法でもか? と、言おうともしたが、どうやら魔力切れか」
「うん」
「そうか」
さて、どうしたものか。
困ったものだな。
「その、曹駛は、なんか、魔法とかで治すことができないの?」
「うーん、そうだな、可能不可能で言えば、可能だが……まぁ、少しばかしきついかな」
治すって、つまり、腕を生やすか、くっ付けろということか?
まぁ、出来なくはないけど……。今は、やりたくないな。というか、いつでもやりたくないな。
「でも、その……助けは、られるの?」
「まぁ……」
言葉を濁す。
確かに、助けられなくはないんだが……。というか、なんというか。
「じゃあ……」
はい、ストップ。その先は、駄目です。
「だから、少しきついっての、今は無理と言った方がはっきりしていていいか?」
無理と言えば、納得するだろ。
「な、何を言っているの? そんな場合じゃ……だって、サキは、もうすぐ、死んでしまうかもしれないのよ」
納得しなかったか。
じゃあ、ちょっと付け足し説明をするか。
「そのな、サキは大丈夫だ」
「は? こんな時にふざけている場合じゃないんだけど」
「別にふざけてはいないぜ」
まぁ、そりゃそう思うかもしれないし、信じられないかもしれないか。
「まぁ、事実だし、サキは大丈夫だ、落ち着け」
「落ち着いているわよ、だからこそ、助からないと言っているんじゃないの」
「いやいや、助かる。と言うか、もう助かってる」
「もう助かってる?」
ああ、もう既に助かっている。
まぁ、ネタばらしでもしてみるか。
「そのな、腕は生えてこないし、修復もしないが、その程度では死なない」
「どういうこと……?」
訝しむなよ。信じろよ。
「まぁ、俺が死ぬ前に、ちょっと小細工をさせてもらったからな。腕がとれただけで死ぬわけないだろ」
めちゃくちゃ寿命使う最終必殺技みたいなものだけど。
名前も何もない術式というか技というか。
今回は大体百年分くらい。
「そのな、今のサキは、心臓が砕け散ろうと、首を刎ねられようと、死なない」
「は? 何それ、まるであんたみたいじゃない、それ」
「似たようなものだが、基本的な不老不死の能力だな。まぁ、回復力は普通の人並だから、いずれ死ぬけど」
「それじゃあ……」
「いや、大丈夫だろ、止血とかしておけば、とりあえずは死なないだろ。右肩から下はもう存在してないみたいだけど、それは、自己責任という事で、諦めてもらいたい」
「その、それは本当なの?」
「ああ、超高濃度の俺の命を送りつけておいたからな、一日は持つ」
三万と六千五百倍まで濃縮したものである。早々死なれて困る。
この、技というか術というか……その、この、これは、一日当たり百年分の寿命を使うから、割に合わないっちゃ割に合わないが、仮の状態ではあるが、他人に不老不死に出来るという優れたやつだ。……優れてるか?
まぁ、こんなん使ったの久しぶりだがな。
とも、思ったけど、良く考えたら最近使ったな。あの、ミット=トールと戦った時、ミットがドラゴンに焼かれても死なないように、使ったんだっけ。
まぁ、それが一番最近で、他に最近い使った記憶はないが、昔は、結構使っていたような気がする。
そう、あの時もしょっちゅうサキに使ってやっていた気がする。
そういう意味では、使うの久しぶりだし、久しぶりってことで。
「その、腕は?」
「ああ、こいつの? だから、諦めろって」
「………」
パチンッ……
痛い。
いや、痛い。
平手打ちされた。
「さ、サキは、本気であんたの事心配してたのよ、それなのに……なんで曹駛は、治せるのに、治さないの!?」
あ、ああ。
なるほど。
はいはい。
状況把握した。
くっそ、サキのやつ……なんだこれ。俺を窮地に追い込んで楽しいか。
というより、今気づいたけど、サキのやつ意識あるだろ。微妙に口元が動いたぞ。
ちくしょう。そうですか。治さないとですか……。
まぁ、治してやる。超特別に治してやる。
だが、そのネタはもう二度と使わせない。
「おい、レフィ」
「何よ」
「あのな、おまえ、騙されてる」
「何がよ、と言うか誰によ」
「サキに騙されてる、何がについては、本人の口から聞け」
「だから冗談は……って、えっ……」
「ははは、ばれていたか」
はい、サキがむくりと起き上がりました。
レフィはかなり戸惑ってるけど、まぁ、無理もないか。
さて、何故、サキがこんなにも平気でいられるかと言えば……慣れ……かな。
小さい時からずっとこんな感じだったからな。
その時は、まぁ、自然治癒の暴走みたいな感じで直してたから、この年齢になっても五体満足でいたのだが、それは、もう出来ないな。
まぁ、歳が、かなり若いからできたものだし。
今回の俺たちの中で言えば、テンチェリィが多分ギリギリ出来る。
後は無理。
だから、腕を復活させる方法は、一つしかないんだけど……。
非常に使いたくない。
どれくらい使いたくないかといえば、今封印してあるくらい使いたくない。
それと、それの封印を解いたら、きっと二度と封印できないと思う。
きっと対策されるからな。
「その、まぁ、な、な、治してやる……よ……?」
「なんで、そんな嫌そうなのよ」
「そうだ、前みたいに、ぱーっと治せばいいではないか」
あ、やっぱ、そういうよね。
うん、さっきのとおり、それは無理なんだ。ごめんね、サキ。
と、心の中で謝っておいた。
表面上にそれを出すと、調子乗られるかもしれないからな。
「あ、サキ、その長足自然治癒は無理だから」
「何を言っているんだ」
「いや、マジで無理。本当に無理」
「………なん………
………だと………」
「いや、そんな言われ方されたって、無理なものは無理だって」
「じゃあ、私の……この腕は……」
「いや、まぁ、それは治すから。そこは心配するな」
「どうやって治すと言うのだ」
「まぁ、見てろって、まず、紹介したいやつがいるんだ」
そう言ってから、一回後ろを向く。
「いや、唐突だな、どうしたのだ、紹介したいやつがいるって、今言う事ではあるまい」
背後からサキの声、まぁ、予測通りの返答だ。
「いやいや、そんなことないんだよ、さて、紹介しよう」
待ってましたとばかりの返答と共に、俺は、何時の間にか俺の前にいた少女と一緒に、回れ右して、サキ達と向き合う。
「はい、自己紹介だ」
「分かりました、お兄ちゃん」
俺の顔を見上げながらそう言ってから、俺の身長の半分とちょっとくらいの背の高さの少女は、サキ達の方を向き直って口を開く。
「私はドリアードです。名前はまだありません」




