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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第三章・兵士ですか、お断りします。
28/203

28話・死んでいましたか、失敗です。

ブックマーク100件いってました。

本当に有り難うございます。

何かやりたい気持ちでいっぱいですけれど、何をすればいいか分かりませんね。

 ―武元曹駛―


 目を覚ます。

 世界が開かれた……なんて格好つけて言ってるけど、生き返っただけ。

 まぁ、それ言ったら、格好をつけることすらできなくなるから、仕方ないだろ。体感的には久しぶりの登場なんだ。なんかやらせてくれ。目立たせてくれ。

 なんて、冗談。

 うっそでーす。

 とか、言っとけば和むかな。いや、なんか、そんな雰囲気じゃないかな。

 目の前の惨状は、予想以上だったかもしれないし、もしくはそうじゃないかもしれない。

 まぁ、死人は俺だけか。全然いい結果じゃないか。


「曹駛……じゃ、なかった、グルック、その、大丈夫?」

「ああ、知っての通り、大丈夫じゃなかったが、今は大丈夫だ」

「その……」

「サキか?」

「うん……もう、助からないかもしれない」

「お前の魔法でもか? と、言おうともしたが、どうやら魔力切れか」

「うん」

「そうか」


 さて、どうしたものか。

 困ったものだな。


「その、曹駛は、なんか、魔法とかで治すことができないの?」

「うーん、そうだな、可能不可能で言えば、可能だが……まぁ、少しばかしきついかな」


 治すって、つまり、腕を生やすか、くっ付けろということか?

 まぁ、出来なくはないけど……。今は、やりたくないな。というか、いつでもやりたくないな。


「でも、その……助けは、られるの?」

「まぁ……」


 言葉を濁す。

 確かに、助けられなくはないんだが……。というか、なんというか。


「じゃあ……」


 はい、ストップ。その先は、駄目です。


「だから、少しきついっての、今は無理と言った方がはっきりしていていいか?」


 無理と言えば、納得するだろ。


「な、何を言っているの? そんな場合じゃ……だって、サキは、もうすぐ、死んでしまうかもしれないのよ」


 納得しなかったか。

 じゃあ、ちょっと付け足し説明をするか。


「そのな、サキは大丈夫だ」

「は? こんな時にふざけている場合じゃないんだけど」

「別にふざけてはいないぜ」


 まぁ、そりゃそう思うかもしれないし、信じられないかもしれないか。


「まぁ、事実だし、サキは大丈夫だ、落ち着け」

「落ち着いているわよ、だからこそ、助からないと言っているんじゃないの」

「いやいや、助かる。と言うか、もう助かってる」

「もう助かってる?」


 ああ、もう既に助かっている。

 まぁ、ネタばらしでもしてみるか。


「そのな、腕は生えてこないし、修復もしないが、その程度では死なない」

「どういうこと……?」


 訝しむなよ。信じろよ。


「まぁ、俺が死ぬ前に、ちょっと小細工をさせてもらったからな。腕がとれただけで死ぬわけないだろ」


 めちゃくちゃ寿命使う最終必殺技みたいなものだけど。

 名前も何もない術式というか技というか。

 今回は大体百年分くらい。


「そのな、今のサキは、心臓が砕け散ろうと、首を()ねられようと、死なない」

「は? 何それ、まるであんたみたいじゃない、それ」

「似たようなものだが、基本的な不老不死の能力だな。まぁ、回復力は普通の人並だから、いずれ死ぬけど」

「それじゃあ……」

「いや、大丈夫だろ、止血とかしておけば、とりあえずは死なないだろ。右肩から下はもう存在してないみたいだけど、それは、自己責任という事で、諦めてもらいたい」

「その、それは本当なの?」

「ああ、超高濃度の俺の命を送りつけておいたからな、一日は持つ」


 三万と六千五百倍まで濃縮したものである。早々死なれて困る。

 この、技というか術というか……その、この、これは、一日当たり百年分の寿命を使うから、割に合わないっちゃ割に合わないが、仮の状態ではあるが、他人に不老不死に出来るという優れたやつだ。……優れてるか?

 まぁ、こんなん使ったの久しぶりだがな。

 とも、思ったけど、良く考えたら最近使ったな。あの、ミット=トールと戦った時、ミットがドラゴンに焼かれても死なないように、使ったんだっけ。

 まぁ、それが一番最近で、他に最近い使った記憶はないが、昔は、結構使っていたような気がする。

 そう、あの時もしょっちゅうサキに使ってやっていた気がする。

 そういう意味では、使うの久しぶりだし、久しぶりってことで。


「その、腕は?」

「ああ、こいつの? だから、諦めろって」

「………」


 パチンッ……


 痛い。

 いや、痛い。

 平手打ちされた。


「さ、サキは、本気であんたの事心配してたのよ、それなのに……なんで曹駛は、治せるのに、治さないの!?」


 あ、ああ。

 なるほど。

 はいはい。


 状況把握した。

 くっそ、サキのやつ……なんだこれ。俺を窮地に追い込んで楽しいか。

 というより、今気づいたけど、サキのやつ意識あるだろ。微妙に口元が動いたぞ。

 ちくしょう。そうですか。治さないとですか……。

 まぁ、治してやる。超特別に治してやる。

 だが、そのネタはもう二度と使わせない。


「おい、レフィ」

「何よ」

「あのな、おまえ、騙されてる」

「何がよ、と言うか誰によ」

「サキに騙されてる、何がについては、本人の口から聞け」

「だから冗談は……って、えっ……」


「ははは、ばれていたか」


 はい、サキがむくりと起き上がりました。


 レフィはかなり戸惑ってるけど、まぁ、無理もないか。

 さて、何故、サキがこんなにも平気でいられるかと言えば……慣れ……かな。

 小さい時からずっとこんな感じだったからな。

 その時は、まぁ、自然治癒の暴走みたいな感じで直してたから、この年齢になっても五体満足でいたのだが、それは、もう出来ないな。

 まぁ、歳が、かなり若いからできたものだし。

 今回の俺たちの中で言えば、テンチェリィが多分ギリギリ出来る。

 後は無理。

 だから、腕を復活させる方法は、一つしかないんだけど……。

 非常に使いたくない。

 どれくらい使いたくないかといえば、今封印してあるくらい使いたくない。

 それと、それの封印を解いたら、きっと二度と封印できないと思う。

 きっと対策されるからな。


「その、まぁ、な、な、治してやる……よ……?」

「なんで、そんな嫌そうなのよ」

「そうだ、前みたいに、ぱーっと治せばいいではないか」


 あ、やっぱ、そういうよね。

 うん、さっきのとおり、それは無理なんだ。ごめんね、サキ。

 と、心の中で謝っておいた。

 表面上にそれを出すと、調子乗られるかもしれないからな。


「あ、サキ、その長足自然治癒は無理だから」

「何を言っているんだ」

「いや、マジで無理。本当に無理」

「………なん………

………だと………」

「いや、そんな言われ方されたって、無理なものは無理だって」

「じゃあ、私の……この腕は……」

「いや、まぁ、それは治すから。そこは心配するな」

「どうやって治すと言うのだ」

「まぁ、見てろって、まず、紹介したいやつがいるんだ」


 そう言ってから、一回後ろを向く。


「いや、唐突だな、どうしたのだ、紹介したいやつがいるって、今言う事ではあるまい」


 背後からサキの声、まぁ、予測通りの返答だ。


「いやいや、そんなことないんだよ、さて、紹介しよう」


 待ってましたとばかりの返答と共に、俺は、何時の間にか俺の前にいた少女と一緒に、回れ右して、サキ達と向き合う。


「はい、自己紹介だ」

「分かりました、お兄ちゃん」


 俺の顔を見上げながらそう言ってから、俺の身長の半分とちょっとくらいの背の高さの少女は、サキ達の方を向き直って口を開く。


「私はドリアードです。名前はまだありません」


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