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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第十二章・これからとここから
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193話・説得と方針


 説得するのに2時間くらいかかった、もうほんと馬鹿じゃないのかと。対話の方向性で進んだのはいいが、なんか戦いとは別方面で無駄に疲れた気がする。


「それで、話をするんだよね。さっさと話そう」


 とりあえず二人の少女の怒りや戸惑いは静めたが、本当にとりあえずレベルで、静まったというよりは蔑む方向に大きく偏った結果静かになったという形に近く感じた。

 二人からミカン箱の中の腐ってかびたミカンを見るような目で見られながらとはいえ、会話は出来そうだ。


「まずは、君たちの目的は? エルフの里に何の用があって目指しているの?」


「そうだな、詳しくは言えないが、調べ事って言った所だ」


「調べ事? できれば、その調べている事を教えてくれるとありがたいけど。知っている内容なら、私がそれを伝えれば済む話だし」


「話をするといっても、完全に信用したわけじゃないしな、詳しいことは言えないが、組織についてだ、お前たちと関わっている可能性があると思ってな」


 あえて、レフィの事は伏せておく。そこから何か察せられても困るからな。


「組織? ああ、そうか、確かにいるよ、他のエルフでも何でもなく、人間の集団と関わっているのは確かだよ。名前はROJFOHC。そのうちの一人、名前は……鷸陽々。その男の人はいろんな飛行モンスターに乗ってよくエルフの里に来るね」


「そうか」


 確定だな。そのロージフォックとかいう組織が俺がレコンストラクションJと仮称していた組織だろう。


「それで、その組織の事の何を知りたいの?」


「そうだな……色々と知りたいことはあるが、まずは、本拠地だな」


「まさか、乗り込むつもり? やめておいた方がいいと思うよ、私は」


「確かにな。かなりの無謀だ。それは分かっているけど、それでもやらないといけないと思っている」


「ふぅん……でもね、残念、その場所は私も知らない。それと、その組織についてもほとんど知らないかな。でもね、確かに里にはいろいろ知っているだろう人はいる」


「そうか、じゃあ……やっぱり里に」


「いや、それはやめた方がいいと思うよ、曹駛さん」


「なぜだ?」


「思えば自己紹介とかしてなかったよね、私達。私の名前はシェイク=ポーポートよろしくね、曹駛さん」


「ん? このタイミングでか、少しは空気を……いや、おまえ、今」


「話はある程度聞いてるよ、レフィちゃんからね」


 レフィの名前も……!


「お兄様!」


 麻理は体を翻し、杖を構えた。


「ああ、ちょ、待って待って、杖を閉まって、ステイ、ステイ」


 あわてた素振りで両手を前に突出しぶんぶんと振りながら後ずさり。確かに、これは戦いに向いていない。


「違うんだって、違う違う。別に戦うつもりもないし、君たちの正体を知っているからといって、同行するつもりもない。当然組織とか、他の皆にも知らせる気もないよ!」


「それを信用しろと?」


「う、うん、信用してとしか私は言えないけど。レフィちゃんの話では、悪い人に話思えないからさ、エルフの里には出来るだけ入ってほしくないんだ……あそこは、人間にとっては凄く危険な場所だからね」


「人間にとっては危険? それは、入った人間は殺されるということでしょうか? 確かにあなたはあの先は危険だとか最初にもいっていましたものね」


 そう言えば、最初に言っていたな、この先は危険だとかなんとかと。あれは、俺達をエルフの里に向かわせないための物だと思っていたが、実際に危険でもあるのか。


「うん、そう、エルフの里付近に近づいた人間は殺されるんだ。だから、定期的に何らかの方法で近づく前に追い払ったりはしているんだけどね、それでも今のところ効果はまちまちで、近づいてきちゃう人はいるし、もちろん死んでしまう」


 なるほどな、それはそれで人間を守れてるって事か。


「でも、お前そんなことをして大丈夫なのか?」


 人間を助けているって事がバレたれ不味いとは思うのだが。


「うん、大丈夫だよ。だって人間と積極的にかかわろうとしているエルフなんて里では私一人くらいだし、ばれたりはしないよ。もしばれたって、逃げ道としての言葉の一つや二つあるし、大丈夫なつもりだよ」


「そうか」


「うん、エルフは、基本的には人間を恨んでいるというか、敵視しているからね。中には少数とはいえそこまで敵視しなくていいんじゃないかって言う者もいるけど、やっぱり私の里全体の意志としては敵対の姿勢を取っているからあまり立場は強くないかな。そして、その中でも、人間とかかわって生きるなんていうことしているのは私くらいだよ。だから、人間の街にいる限りは、割と私自体は自由かな」


 人間を敵視している者が多いからこそ、逆に人間の街だと誰かに見られル心配もないということか。


「そう言えば、お前さっきレフィの名前を出していたが、それってつまり、お前はレフィと会ったことがあるって事か、それもつい最近」


 だとしたら、やっぱりレフィは生きているということになる。


「うん、そうだよ。そして、レフィちゃんがどこにいるかも分かる。まぁ、場所とかは分からないけど」


 ここに来て、一つのでかい情報が手に入るとは。それに、ほぼノーリスクで。


「なに? レフィは今何をしているんだ?」


「レフィちゃんは今、ROJFOHCの本部にいると思うよ。多分だけどね」


「な、なに?」


 帰って来た言葉が予想外すぎて、こちらの言葉が続かない。

 レフィがROJFOHCに? 一体なぜ?


「それは攫われたということですか?」


 麻理が尋ねる。


「いや、違うかな、レフィちゃんは自分の意志で向かった。色々と調べたいとか言っていたけど、詳しいことまでは私も知らないよ」


 レフィが自分の意志で?

 レフィも何か考えがあってのことなのだろうけど、なぜROJFOHCに。だが、目的は一つに定まった。ROJFOHCの本拠地の場所を知る。まずはそれをしないことには何にもならなそうだからな。


「でも、ROJFOHCの場所は分からないんだろ?」


 それは、さっき彼女自身が言っていたことだ。


「うん、残念ながらね」


「そして、エルフの里には知っている者がいるんだろ」


 村に鷸が来ていて、よく交流しているのなら、知っている奴がいてもおかしくない。それに、鷸が来るのを待って、直接聞きだすと言う手もある。


「まぁ……」


「なら、やっぱり」


 エルフの村に入るしかない。そこで、なんとかしてその場所を突き止めるしか。


「いや、入るのはやめておいた方がいいよ。特に君はね。私でも知ってるくらいの有名人なんだからね。それに、魔力で人を感じするのに長けた人もいるから、どちらにせよ君は里に来ない方がいい」


「なに?」


 確かに、それもそうだ。俺が過去にしたことを考えれば、当然なのだが、それでも行かなければ、これ以上の情報元はなかなかない。なんとしても情報を掴んでおきたい。


「変装しても多分無駄だし、どうしても来るとしても、君……たしか、麻理ちゃんだけ来る方がいいと思うよ」


 シェイクは麻理を指差してそう言った。


「私ですか?」


 そして彼女は俺の方を見て、言葉を続ける。


「うん、本当は、麻理ちゃんもあまり来てほしくはないんだけど、君を見る限りどうしても来るって顔をしているからね。本当の本当に危険だから、どちらであろうと来ないに越したことはないんだけど、それでも麻理ちゃんの方が幾分マシって感じかな。あっ、もちろん変装はしてもらうけどね。耳とかは絶対にね」


「私一人で……ですか……」


「うん、さっきも言ったし、何度も言うけど、危険だよ。来ない方がいいのは確か。ひとりだと、もし誰かに知られて戦いになった際のリスクも高くなるしね。私自体は敵対しないけど、加勢は出来ないからね。まぁ、加勢したところでたかが知れて入るんだけどさ」


 ちらり、麻理がこちらを見てから、シェイクの方を向きなおした。


「ええ、それしかないのなら、私が向かいます」


「うーん、どうしても来るんだね」


「ええ、確かに危険なのは間違いないでしょうが、私達にとっては貴重な情報を手に入れられる場所ですので」


「うーん、じゃあ、仕方ないか。潜入の手伝いくらいはするけど、ばれちゃったときとかそういった厄介ごとになった際は手助けできないから、そこのところはほんとお願いね。あと、出来るだけ無茶はしない方向で、こっちまでなんか面倒事に巻き込まれるのは本当にごめんだからね」


「分かりました。こちらとしても、戦いなどは避けたいので、気を付けますわ」


 麻理が単独で里に入ると決まったあたりで、部屋の電話が鳴った。


「あー、時間か」


 思ったより早いとも思った、良く考えたら、ここに居た時間の大半は二人の説得で使っていた事を思い出した。あの時間はかなり無駄だったような気がしないでもない。


「まぁ、とりあえず、ここから出よっか」


 お金を支払い、ホテルを出た。


「さてと、じゃあ、私達は、これからさっそく里に向かうことにするけど、君はどうするんだい?」


「ああ、そうだな……」


 目標を失ったといえば失った形になるな。付いて行くわけにもいかないし。かといって、他に怪しいと踏んでいる場所も今のところはない。麻理がエルフの里に行くので、戻って来るまであまり遠くへ行くわけにもいかないからな。最終手段としては、俺も突入するってのは考えておかないといけないからな。


「まぁ、とりあえずはこの町で待機しておくぜ」


 こう返すことくらいしか出来ないな。

 さて、本当にどうするかな。


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