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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第十二章・これからとここから
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188話・なかまとみんなと

暫くどころじゃないほど期間を開けてしまったような気がします。だいぶ申し訳ない。

とりあえず、プロットだけは書きましたので、話しが思いつかないとかそう言う心配はご無用。

ということで、12章スタートです。

 ―武元曹駛―


 顔を合わせ、頷き合う。

 世界の終わりが来るでもなし、だが、それでも、俺達の中では、大きな何かを変える一歩目だと思った。

 相手は大きな組織である。とてつもなく。

 各地方全てを総べるかのような勢いで、勢力を広げている。それに、傭兵センターはおそらく、奴らの関係するものだ。そう考えると、世界の終わりではないが、世界に立ち向かっていくかのような気分にもなる。

 英雄が大群に向かって行くときというのはこういう気持ちなのだろうか。兵士の時には結局、そう言った事はなかったし、もし、あったとして、ここまで大きな相手を敵にすることなんてなかっただろう。だから、この気持ちは、きっと、英雄の通る道だ。

 不安ではあるし、迷いもある。これでいいのかっていう迷い。でも、それでも、不思議と恐くはないと思うし、やらないといけないという気持ちだけは、どうあってもねじ曲がることはない。そう考えると、俺が奴らに立ち向かうのは運命であったのだろう。間違いなく。

 確かに、俺が英雄になれるかどうかは分からないし、これから行うことは真逆の行為かもしれない。

 でも、それだとしても、この運命に終わりが訪れるとしたら、もう、すぐそこなのだろう。

 この戦いの運命。

 一度は逃げたこの運命と、また向き合って、そして、戦う。


 勝てば、俺は英雄になれるかもしれない。

 一般的にどうとかじゃない。俺の中で俺は一人の戦う者として、今度こそ完成するかもしれない。道半ばで終わった兵士では無く。最後まで戦いきった英雄として。そうして、死に行けるだろう。

 みんなを危険な目に合わせてしまうのは、少し悪いとも思うが、誰もが、死を恐れていても、この先の道を進むことを間違いとは思っていない。なればこそ、俺は、皆を頼る。



「曹駛」


 透が声を掛けてくる。


「なんだ?」

「姫様達が、言いたいことがあるらしい」


 コイチ姫とスミ姫の方を見ると、その手には、一枚の紙が握られていた。


「それは?」


 そう尋ねると、待っていましたと言わんばかりの勢いで、スミ姫が言葉を発する。


「私の近衛たちが集めてきた情報。もしもの事があればこの国に来るようにって、手紙を出してたのが、上手く回ったみたい。ここに向かう際中、エルフを見かけたらしいの」

「エルフ?」


 そのエルフがレフィでないにせよ、情報としては結構大き目な物でもある。

 なんせ、消えたレフィとフォルド王国を襲ったエルフの集団が関係していないとは思えない。

 それに、気になることもある……。


「大体この辺りで見かけたというのを地図に記したそうですので」


 その紙を手渡される。

 開いてみると……なるほどな。この辺りは、山が多いからな、もしくは気付かなかった、いや、集落に入ったら殺す成りなんなりしていたのだろう。だが、この近くの国なら一度言った事があるし、転移の魔法陣もある。行くとしても、大幅なショートカットが出来る。


「まずは、じゃあ、この辺りの探索って事でいいか?」


 みんなに向けて言う。

 特に反対の意見もなく。次の行先が決定した。


「この国には行った事がある。国というには小さい場所ではあるが、そこに転移の魔法陣がある。だから、まずはここに飛ぼうと思う。その後、俺と麻理が周囲を探索する。その間、皆はその国でのしばらくの拠点確保と、情報収集を頼む」


 周りを見て、頷きを確認した。


「じゃあ、みんな、各々準備だ。30分後、再集合。後に出発だ」


 この準備を追えたら、きっと、始まる。

 終わりへの一歩目が……






 そうして、時は経ち、30分。

 短い時間だが、長くも感じられた。でも、一瞬のようにも感じられた。

 時間の感じ方がよく分からない。気持ちのせいなのだろう。


「それじゃあ、行くぞ」


 辺り一帯が、光りだす。

 光が俺達を包み込む。

 世界は白に呑みこまれ、反転する。

 流れゆく。

 体が引っ張られる感覚。

 混ぜられる感覚。

 強く揺さぶられるそんな感覚。


 もう慣れたはずの感覚が、凄く新鮮にも感じられた。


 気にも留めない感覚だったはず。それが、今になって、こうも気になるとは。


 白は少しずつ欠け、削れ、ぼかされ、にじみ、そして、霧のように消え去った。



「大きくなったものだな」


 俺が、前来た時は、やや大きな村といった印象だったのだが、それなりにしっかりした街のようになっていた。


「それじゃあ、俺と麻理は、森に向かう。みんなは、予定通り頼む」


 ここで、俺達は一旦別れる。

 俺と麻理は、エルフを見たと報告のあった付近の森を目指すことにした。


「それじゃあ、こっちの方は頼むぞ」


 森に出る前に、透に声を掛ける。

 ここに残る中では最大の戦力である。もしも、何かあった際は、全て任せることになる。


「うむ、任せておけ。お前らも気を付けろ。もしも噂が本当なら、森は危険だからな」


 そう言って、透はその場を去って、国の中へ戻って行った。


「さて、行くか」


 麻理に声を掛けたつもりだったのだが。


「森に行くの?」


 帰って来たのは、意図しない返答だった。

 それに、その声の主は、麻理ですらなかった。


「森に行くなら、私も連れて行ってよ」


 一人の少女がそう声を掛けて来た。


「うん、丁度、私も森に用事があるしね」


 彼女そう言うものの、俺達がこれから向かうのは明らかに危険な場所だ。一般人を連れてはいけない。

 彼女の見た目からして、戦えるとは思えないしな。というのも、彼女の服装はやたらひらひらのついたスカートに、派手な服、ファンシーなアクセサリー。アイドルか何かなのかといったような服装。森に何の用だよって、思ってしまう。

 それに、もし戦えたとしても、無関係な者を巻き込むわけにはいかないだろう。まぁ、戦えるとはやはり思えないのだけれども。


「いや、森は危険だって聞くし、君はここにいた方がいいと思うぞ。なぁ、麻理」

「ええ、そうですね、この先は、少々危険と聞いておりますので」


 そう言って、断ろうとはしてみるものの、彼女は、言葉を続ける。


「そんな話、聞いた事ないけど。そりゃ、森の中である以上、一定以上の危険はあるし、帰って来ない人だって、そりゃあたまにはいるだろうけど、そんな必要以上に怖がる理由はないと思うけど……」


 彼女はそう言う。

 なるほど、この国では、エルフの村云々の話は別にないのか。だから、彼女は森をそこまで恐れていない。その話が合ったとして、エルフを恐ろしいと思うかどうかは分からないか。俺達が敵対しているからエルフが人間を敵対視しているって分かるだけで。


「あ、もしかして、よそから来たね。君たち。なら、なおさら、一緒に行こうよ。私はこの辺の森良く知っているし、案内にはちょうどいいと思うけど」

「いや、でも……」


 よそ者ということがばれたわけだが。それでも、彼女を連れて行くのはちょっと難しい。


「君たちは私をモンスターから守る、私は君たちに森の事を教えるって感じで、ウィンウィーンだと思うんだけど」

「まぁ、だが……」


 断り文句なんて考えていると……


「じゃ、決定、行くよ」


 彼女は森の方へ行ってしまう。

 一人で行かせてしまうわけにもいかないので、俺と麻理は仕方なくついて行く。


「お兄様、押しに弱い……なんやかんや」

「ああ、まぁ……」


 麻理からのダメだし。いや、普段はそうでもないと思うが。なんというか、今回は状況が状況だったからな。でも、押され切ったからには文句は言えないんだけど。




 そうして、森に出てから、地図を手に、大体の方向へ向かってしばらく歩いた。


「さてと、君たちは、森に何か用があるのかい? 私は、色々と収集するという用事だけど」


 歩いていると、行く先を歩く少女は周りの草や、木の皮や葉、落ちている物を拾いつつ、そんなことを聞いてくる。


「まぁ、探索だな」


 本当の事を言うわけにもいかないので、嘘ではないがぼかした返答をした。


「そっか、じゃあ、まぁ、私は付いてきてよかったってわけだ。なおさらね」

「どういうことだ?」

「はい、ここまで……」


 少女はピタリと足を止めた。


「ここまで?」

「君たち、さっきから地図を見て動いているみたいだけど……ここから先は、危険区域だよ。多分君たちが言っていた森の危険な場所とかそう言うところ。地図の示す場所が何処かは分からないけど、宝探しなら諦めた方がいいと思うよ」


 少女は適当な木と木の間に足で線を引いて、そこを指差してから、両手でバッテンマークを作りそう言った。


「ここから先に進むって言うのなら保証はしないよ。止めはしないなんて言うつもりもないから、言っておくけど、行かないでいてくれる方が好ましいかな。どちらにせよ、もしも、その先に進もうとするのなら、今日はやめてね、私も帰らないといけないし」


 少女はそう言うと来た道を引き返し始めた。

 俺と麻理は顔を見合わせる。そうして頷き合った。


「ちょ、ちょっと待て」


 引き返す少女を呼び止めた。


「うん? なに?」

「この先が危ないって言ったな……」

「うん、言ったよ」

「この先、なんで危ないんだ?」

「簡単だよ、この先に行った人たちはほとんど死んでいるから。行って、帰って来る人が極端に少なくなるラインが大体あのあたり、だから、危ないラインだって言ったんだよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 そう言って、少女は返した踵を再び動かし、来た道を戻り始めた。

 少女を一人で行かせるわけにはいかないので、またしても俺達は追いかけた。


 国に着くと、少女は「護衛をありがとう」とだけ、お礼を言ってすぐに去って行った。

 護衛も何もモンスターと一度も遭遇してないから何もしてないけどな。結局winwinというよりは、losewinの関係になったような気がしないでもない。いや、少女も少女でモンスターが出なかった以上、勝ったのかどうかわからないんだが。

 名前も知らない少女の言葉とはいえ、良く森に入る者の言葉で、あの森の危険な場所が聞けた。その先はきっとエルフの里があるはずだ。必ず。

 ならば、情報共有の後、再び出発しよう。





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