185話・私は移動する。
更新ペースが遅くてすいません。
当分忙しいかもしれないです。出来るだけ更新は頑張りますが、週1がちゃんとできるか……。
―レフィ=パーバド―
一仕事を負え、私達は休憩をとっていた。
もうここに国はない。あるのは死体と残骸だ。もっと酷く言えば、生ごみと粗大ごみ。あえてひどく言う必要は無いのだが、心のどこかではそう思ってしまっているのだろう。そうでなければ、こんな感想は出て来ない。人間全く心にない事は考えに浮かんできすら来ないものだ。詰まる所、どこかしらではそう思っているということになる。
「はぁ……」
しかしながら、まだため息くらいは吐けるようだ。良かったのかどうかは知らないけど。
おにぎりを一口口に含むが、匂いが良くない。この人の焼けた匂いがひどく食欲を衰退させる。
おにぎりをラップに包み直して仕舞った。
「それで、どうすればいいの? これから」
各々休んでいる仲間にそう質問を投げかける。
「一旦帰るって感じじゃないのか?」
フォートがそう答えて、バリューとがそれに続ける。
「はい、確かそうだったはずです」
「じゃあ、戻らないとか……」
帰りは徒歩だっけ。面倒くさいわね、やっぱり。
距離はそこそこということらしいが、そこそこがどれくらいなのかは分からない。
椅子代わりに座っていた岩から腰を上げる。これからそれなりの距離を歩くと勘g萎えると、もう少し休んでもいたかったが、休めば休むだけ結果的にはかかる時間は伸びる訳で、出発すると決めたならさっさと出発するべきだろう。
「じゃあ、行こうか」
そう言って、出発しようとした。
「あ、いや、そう思ったんだが、少し待ってくれ」
出発しようとしたその時、M・D・Bにそう言われ、私とフォート、バリュールは足を止めた。
「なんだ? 何か忘れ物でもしたのか?」
フォートが尋ねる。
「ああ、ここで、良いようで悪いような連絡だ。目的地が近くなりそうだが、結果的に遠くなるからな」
M・D・Bが手に持った端末を見ながら言う。その端末があれば、どんな長距離でも連絡が可能ならしい。傭兵センターにある、仲介装置を使うとの事らしいので、傭兵センターが無いと使えないらしいが、どの国の傭兵センターも国の中心部からは離れた位置にあるので、あまり被害を受けることは少ないらしいので、そこはあまり心配していないらしい。
それにしても、目的地が近くなりそうとは一体どういうことなのか。
「「結果的に遠くなる?」」
二人が声を合わせて、M・D・Bに聞き返した。
「ああ、そうだな。次に行く場所が本拠地じゃなくなったってことだ。結構近くにある国だが、そこに敵がいたらしくてな、逃げられたが、もしかしたらいるかもしれないって事で、確認しに行く形だ。まぁ、要するに使いっ走りみたいなもん、移動量は増えるが、危険は少ないだろうからその点は安心できるぜ」
詳しく聞いてみたところ。
その国は既にこちらの手に落ちているらしい。それも、戦闘で奪い取ったような形ではなく、いろいろとやって王になる形でものにしたらしいので、国の機能自体は全くの無事らしい。
その国で少し問題が起きたらしい。
国の外を少し出た先に、森に擬態させたモンスターの群れ置いておいたらしいのだが、それを壊滅させられたらしい。
相手は相当な使い手で、ずっと敵対している者らしいく、それを聞いて、もしかして曹駛かもしれないと、一瞬思ったのだが……そんな都合のいいこともあるまい。
「なんやら、炎を使う剣士と槍使いだったらしい」
物凄く既視感を覚えるが、きっと違う……多分。
「名前は……曹駛と透だっけな」
ああ、違わない奴だ、これ。
確実に曹駛だ。
「どうしたの? なにかあったの? 汗凄いんだけど」
バリュールにそんなことを言われる。
曹駛との関係は、ほとんど知る者はいない。だから、私が若干戸惑っている理由を知らないのも当然だろう。
「え、えっと、ほら、今更になってだけど、さっきまでの炎が暑く感じられてきちゃってね」
特に嘘をつく必要がある訳でもないのかもしれないかもしれないのかもしれないけれども、そう言った。
実際、面倒なことになりそうだし、信頼云々もあるから、嘘をつく必要はあったのかもしれないけれど。
「曹駛さんと、透さん……か……」
フォートが呟く。
「どうしたの?」
尋ねてはみるが、そんな必要もなく、その言葉の意味が分かる。
彼もまた兵士だったのだ。ただ、一般の兵で、第何期などとナンバリングされることはないような兵士。悪く言えば雑兵。だけど、それでも時期的には19期の兵士。その力は強かったはずだ。
彼は、どうやら、消えた国軍第19期兵団捜索を命じられ、その途中、力を手に入れたらしい。
力の手に入れ方自体は、曹駛とほぼ同じ。
いや、経緯は違えど、最終的にたどり着くのは絶対に竜の洞窟だ。
その力。喉から手が出るほどに欲しい。だが、それは叶わない。私は、自分がしたいことを成し遂げる力が欲しい。
命が溶けて消えてしまうとしても、力が欲しい。世界でも何でも変えてしまえる力が、私が影響できる。私が関われる。私の力が……。
魔法が使える。
それがどうした。それがどうした。それがどうした。
その程度じゃ、それこそ雑兵に過ぎず、特別な力などでは無い。
エルフだ。
それは、嘘だ。
確かに人間よりは優れているかもしれない。けれど、その力は、優れている止まり。いくら人間よりも優れているとしても、結局のところ、強者から見たら、ただの雑兵。
私は力が欲しかった。
「なにか、その二人に心当たりでもあるの?」
我ながら白々しい質問。
「ああ、俺の憧れの中にいた二人だ。だが、そのうち一人……透さんを残して他は消えた……と、思っていたんだがな。まさか、みんな生きているなんて思いもしなかったさ」
フォートが言う。彼にとっては、19期兵団は憧れだったらしい。それが急にいなくなれば、動揺もするだろうし、創作の指令が下されれば喜んで受けるだろう。
「だが、曹駛さんとは、一度も手合わせをしたことが無かったな。結構強いらしいから、一度手合わせしたいと思っていて、遠征から帰って来たらって約束をしたんだがな、遠征から帰っては来なかった。それに、ROJFOHCにもいなかった。だから、ちょっぴり、心配していたんだが、入るどころか敵対しているとはな。最初に聞いた時は驚いたくらいだ」
フォートが楽しそうに言う。何が楽しいかは分からないけど。
憧れと戦えることの喜び……そう考えるなら……分からなくはないかもしれない。
「と、まぁ、雑談ってのもいいかもしれないが、それは歩きながらにしようぜ、正直、早く目的地に向かった方が結果的に楽でいいと思うぜ」
M・D・Bがそう言って、人差し指を指す。
あっちの方に向かうらしい。
確かに、ここでずっと話しているのもなんだし、進んだ方がいいのも確かだ。さっさと移動するとしよう。
「それにしても、近くなったって言っても、どうせ大分距離あるんだろ?」
フォートがM・D・Bに尋ねる。
「いや、そうでもないっぽいぞ、そこの山一つ越えれば、着くとかなんとか」
対して、M・D・B、端末と辺りの風景を見比べて、そう答えた。
「そうなのか? だが、その山が酷く越えるのがつらいとかないのか」
「いや、その心配もない。確かに山だし登ればそれなりには辛いかもしれないけど、迂回すれば、それほどでもないみたいだぞ、それに迂回したすぐ先に国が見えるらしいから、ほんとに楽だと思うぞ……多分」
「って事は、楽じゃないんだろ……多分」
「まぁ、結局は歩くわけだしな」
そんなやり取りをしてから、男二人はとぼとぼと歩きだした。
「さて、私達も行きましょうか」
バリュールと私もそれを追って、のそのそと歩き出した。




