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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第十一章・私は、ここにいる。君は……
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184話・まじかよ……

最近は二千文字あたりの更新が多かったのですが、短かったでしょうか。

今回は、若干多めですが、どのくらいの文字数がちょうどいいんですかね。よく分かってないところ有ります。

 ―武元曹駛―


 ドラゴンは炎を吐いて来るが、さて、それがどんなものか。俺と透は、軽く同じ炎で返してやる。

 まさか返されるとも思っていなかったのだろう、ドラゴンは戸惑った様子だ。

 その隙を逃すはずはない、透はドラゴンの首を一刀両断。切り落とした。


「脆い物だな」


「まぁ、ドラゴンなんて名ばかり独り歩きしてるだけだしな」


 何度か戦うと分かるが、ドラゴンは言うほど強くはない。

 確かに、化け物染みて強い奴はいるが、大抵のドラゴンはそこまででもない。数の暴力で倒せてしまうだろうし、今のようにそれなりの力を持った奴なら軽く倒せる。

 図体はデカいし、力も強い、火だって吹く。だが、それだけ、基本的には他のモンスターと同じで、戦えないことはない。


「あとは、モンスターの処理……って言いたいんだけど、どうしてだろうな」


「なにがだ」


 透が言う。疑問に思わないのは、あれか、経験の差か。主に足りない的な方向性のアレで。

 さて、おもくそに背後に強大な気配を感じるんだが、それを感じ取れない透ではないだろうし、やっぱり経験の差だろう。こういった遭遇は少ないのだろうな。


「後ろの奴ならわしも気づいておる」


「そらな。当たり前だろ。そうじゃない」


「ならなんだ」


 俺が何か行動すると、絶対厄介ごとに巻き込まれるって事だろ。まだ会うつもりはなかったんだがな。好都合というには少々早すぎる。どうして、俺の計画は全て上手くいかないのか。

 兵士になって、麻理と幸せに暮らそうと思えば、訳も分からないどこかに飛ばされた挙句、変な能力は手に入れるし。そこから麻理の元に帰ろうと思えば、滞在した国は壊滅するし、変な奴らに目を付けられるし。

 帰ってきてみれば、麻理はいないし。

 まだ奴らと戦う気があったから、精霊を二人ほど味方につけて見れば、お世話になった村を壊滅しろと言われるし。

 いろいろな物から逃れるために名前変えて動いたり、また少し稼ぐためにセンターや兵士をもう一度やったけど、それも長続きはしなくて、結局、普通の仕事をして、細々と暮らしていたら、なんか宝くじ当たって、奴隷を見に行ったらレフィがいて、買ったら、兵士をもう一度やった時の同僚に殺されて、せっかく取り始めていた歳はまた若返って、能力が発動して、厄介ごとに巻き込まれるし。

 お金が無くなって、ちょっと稼ごうとしたら、色々あって、姫様に呼ばれるし、そこにはサキがいるし。そのまま、どっか島に連れて行かれたと思えば襲われるし。

 その後だって……

 俺の知り合いがいる場所が襲撃されるし、俺は敵に操られるし、寿命は一気に使い果たすし、敵にフォルド王国は燃やし尽くされるし、レフィは連れて行かれるし……


 もう何なんだよ。本当に。ついてない。


 この世界は俺の事が嫌いなのか。


 姫様と知り合えたことや、レフィに再び会えたこと、麻理との再会、もう一人の妹にも会った、宝くじだって馬鹿げた当たりかたした。幸運だって探せばいっぱいあるけど、そのほとんどが、問題の種と直結してるし。ああ、どうしてこうも上手く行かないものなんだ。

 大抵の人生ってのはそうなのかもしれないが、落差がひどい以上、世界が俺を嫌っているとしか思えない。そんな幸運と不幸。

 今だって、ただ問題があるか調査しようと盛りに来ただけだって言うのに、その森はモンスターの集合体で、それを倒したと思えば……


「ふざけてんじゃねぇぞ……こん畜生」


 振り向けばその先に一人の男性。見覚えがある。この国の人たちから、教えてもらったからな。俺の記憶に直接その顔は刻まれていないが、その顔を知っている。

 むしろ、透に聞いたほうが早そうだ。


「透……知ってるだろ、あいつのこと」


 俺に言われて、透も振り返り奴の顔を確認した。


「……ああ、ということは、そう言うことなのか」


「そうだ、そういうことだ。面倒くさい奴に会ってしまったって事だ。いや、森なんて放置してさっさと調査を終了させるべきだったぜ」


「儂は懐かしい顔を見れて少し嬉しいがな」


「お前も大概ふざけてるな」


「お前には言われたくない」


 振り返った先にいる男の名は……籠手崎水斗。19期の一人。とんでもなく会いたくない奴の一人だ。


「さて、どうする、透」


「戦ってもいいと思うが」


「だとして、先手は俺だな、お前はモンスターを頼む。奴の能力がなんだかよく分からない以上お前は不利だ」


「……まぁ、そうだな、初見ではお前との戦いで実質的には負けていたからな」


 ということで、モンスターは引き受けてくれるらしい。実際ありがたい。

 俺は、籠手崎と向き合う。


「困るぜ、勝手に国の森を破壊されちゃ」


「おいおい……そんな冗談が通じるとでも?」


 冷や汗が流れる。暑いからではないはずだ、この汗は。

 俺は、まだ全力を出し切れるほど寿命が溜まっちゃいない。その時会いたくない相手は、同じ化け物仲間だ。そうだってのに、会ってしまうとはな……やっぱついちゃいない。


「いや……ないな。で、どうした、久しぶりに元同僚の顔を見に来たわけじゃないだろ。きっとお前だって覚えちゃいないはずだが」


 そう言いながら、籠手崎は構えた。武器はない。格闘技のような構え、魔力の気配はない、そして、鎧などといった装備もない。って事は、肉体に関係する能力か。


「その言葉、そのまま返すぜ」


 俺は、その言葉と共に火球を飛ばす。

 火球が籠手崎を包み込む。その隙に駆けだして……後方に飛んだ。いや、吹き飛ばされた。

 腹に酷い鈍痛を感じる。どうやら殴られたらしい。喉の奥から溢れんばかりに血が湧き出た。


 気づけば、地面に叩き付けられた。どうやらいつのまにか後ろに回られていたらしい。

 頭を潰される。だが……生き返る。同時にイフリートの半憑依が解除された。

 やばい、ここでこんなやつに会うつもりなんて全くなかったんだがな。

 距離を取るが、取ったつもりになっただけだ。取れていない。だって、奴はすでに俺の行く先にいたからな。


「がっ……」


 電覇気(サンダーオーラ)を使い電気を纏った。これで、少しは物理こうげっ……


 問答無用で首を刎ね飛ばされたらしい試行は停止し、突如世界に戻される。


「だが、これで」


 ちっとはマヒして……くれちゃいないか……

 最初の火球でなんとなく気付いちゃいたが、こいつ魔法が全くきかねぇ。


「くっそ、やべぇ気がするな。相性とかそういうのが」


 せめて武器さえあれば違うのかもしれないが、そう言った物を置いてきてしまってるからな。


 籠手崎の右腕が気づけば左に在った。それを両腕をクロスさせて防ぐものの、まったく防げてない。両腕がはじけ飛んだうえ、身体も大きく後ろに吹き飛ばされた。


「っ……」


 歯を食いしばる。痛みは遅れてやってくるが、どうしようもなく耐えがたい。

 高速で後退させられながらも、籠手崎の姿を視界に留め続ける。

 すると、奴は自ら吹っ飛ばした俺を追うように向かって来た。そして、繰り出されたその一撃を受けようとしたが、もう腕は無く、ただ受けてしまう。

 内臓がすべて吹き飛んだ気もする一撃。痛いとかもうそういう次元じゃない。奴の攻撃は痛覚ごと破壊する。全て遅くやってくる痛みは精神を破壊しに来るようだ。

 十数メートル先に落下して炭化した森を滑り、身体をすりおろされ、死ぬ。そして、生き返る。


 急いで、前方を見れば、いつの間にかモンスターの処理を終えていたらしい透が、籠手崎の背後から炎皇を振り降ろしていた。それに気づいた様子はない。その刃が籠手崎の首に当たり……止まった。

 寸止めしているようには見えない。それは、透の体を見れば分かる。その腕と体は切り抜けた後を想像して動いている。それに対して、その刀だけが奴の首で止まっているのだから。


「まずっ!」


 透は俺とは違う、奴の攻撃を受けたら、そのままやられる。


「スモーク・スパーク・ウォール」


 魔法の名を考える暇もない。適当に名づけた魔法を放つ。

 煙を大量に放ち、雷撃による激しい閃光と爆音で視覚と聴覚をどうにかして、奴の周りに土壁を生やす。


「退くぞっ! とおるっ!」


 奴の反応はない。どうやら俺の読み通り、魔法そのものは効かないがその影響は受けるようだ。

 煙に紛れて逃げると見せかけて、俺と透は転移魔法でその場を離れた。そうして、なんとか麻理とミンの待つ部屋まで戻ってくることが出来た。


「お兄様!」


 やはり、寿命が減っていたことに気付いていたらしい麻理は、この場に待ってくれていたらしい。


「やべぇ、麻理、話しはともかく……退くぞ。転移魔法用の魔法陣はこの家にあるし、最悪この家がばれても、知っている場所であるから、なんとかできる可能性は出来た。だから、一旦、麻理……お前の屋敷まで退くぞ」


 そこで、俺の意識は途切れた。

 どうやら、死んだらしい。どうやら、転移の直前、壁を破壊されたのか、その破片が胸に突き刺さっていたらしい。


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