178話・君は一体なぜここに。
更新頻度落ちててすいません。最近地味に忙しめです。更新は不定期気味で行かせていただきます。申し訳ありません。
―レフィ=パーバド―
知らないことばかり。知っている事の方が少ない。
知っていても何かある訳じゃないかもしれないけど、でも、知らないと何もできないこともある。
重要なことほど、多くの人が知らない。
ここに来て、得た情報は少なくない。むしろ多すぎてついて行けるか怪しいくらいの量。
世の中の大半の人は知らないであろう情報。それを、この組織は大量に保有している。いや、それも少し違う。本当ならば、世の中の半分くらいの人は知っている事なのかもしれない。
この土地は、昔大きな国だった。そして、それよりも大きな国もそれなりにあった。その多くは、もう既に昔のような生活をし始めているらしい。
私は、今日も特別やる事もなく、情報を収集していた。
ここの施設にある書籍は自由に読んでもいいらしいし、沢山あるよく分からない機械もそれに詳しそうな人に声を掛ければ、それがどういうものでどう使うかを教えてもらえる。
純粋な知識欲も少なからず働いてきている。間違いなく。
多くのものが面白い。多くのものに興味深い。
それに、ここにいる人たち自体は、あまり悪い人のようには感じない。特殊な能力を持った人の他にも、行き場を失った人たちなどもいる。もちろん、そういった人たちは、流石に私が今いるような場所には来られないのだけれども、この巨大な施設の居住区域で済むことは可能であった。
そこでは、多くの人達が住んでおり、さながら町のようにも感じられる。店だってあるし、仕事もある。働き口が見つからなければ、補助金として、お金が月ごとに一定量貰えるらしいし、その他にも、色々な場面でお金が付与される。福祉の面でもなかなか良いもので、住みやすさで言えば、多くの国よりも上かも知れない。
一方、私が今いる場所は、研究をしたり、戦闘訓練をしたり、資料を保管したりとする場所だ。ここには入れる人は限られてくるが、色々な物を見ることが出来る。
多くの本だけでも、普通はまずは入らない情報が信じられないほど多く得ることが出来る。
戦闘訓練だって、ここにいる人たちで訓練する人達と言うのはかなり強いから、真面目に取り組めば、自分をかなり鍛えることが出来るはずだ。
だが、その二つよりも、何よりも、研究。
機械のことや、動植物、人間の事、歴史。その他にもいろいろ。非常に多くの事柄について研究されている。
そして、そのどれもが他のどこよりも発展している。
ここはある意味国のようなものかもしれない。
上がいて、研究施設があって、戦う者がいて、そして、民がいる。
ここはある意味国だ。
それも、非常に優れた。
私はどんどんと分からなくなっていった。
ROJFOHCが本当に悪い集まりなのか。いや、悪い集まりではないということ自体は分かっていた。でも、やっていることが許されるわけでもない。
多くの人を助けていても、何よりも人間の未来の事を考えていても。
その裏で、より多くの人たちを傷つけていたら、それは、悪でないにしても、全ではないだろう。
悪いこととまでは言えなくなってきた私でも、これは分かる。その行為が正しくないということを、侵略にも等しいそれが、いいことでは無いことくらいは分かる。
交渉と言う手だってあるはずだ、何も武力で国を制圧する必要性なんてない。そうも思う。
でも、彼らからすると、長が二分割されるのはどうも良くないらしい。
だから、最低でもその国の長は殺す。どんなに最低でも国をものにする際一人は死ぬ。
それは絶対に悪い事とは言えないかもしれない。でも、悪いことだと私は思う。
きっと、二人のお姫様と関わり合いを持ってしまったからこそ、そう思うのかもしれない。でも、やっぱり、何かを成そうとしても、その裏で悲しむ人は少なくあるべきだ。一番いいのは、誰も悲しまないこと。でも、それは限りなく難しい。
今日は、少し気になるものがあって、私はそこへ向かうことにした。
そこは、射撃場。
別に弓で矢を放つ訳ではない。銃を打つ場所である。ここではあまり弓を使う人は多くない。どちらかと言うと、銃を撃つ人の方が多い。
ここでは銃の研究もかなり進んでいる。いや、どちらかと言うと復元に近いかもしれない。過去は、今以上に銃が発展していたらしい。そして、その多くを今の時代に復元した。だから、ここでは銃を使う者が多い。
銃は弓と比べて使いやすい。それに、ここにある獣の中には、小さい物もあり、腰に着けておけるタイプの物も少なくない。曹駛の話だと、銃は基本的に大きく、両手で撃つものが多いと言いたのだけれど、ここの人たちを見る限りだと、小さい物と大きい物の比率は一対一と言った様子だ。
曹駛は確かに多くの事をしていたけれど、恐らく、ここは曹駛以上に情報がたくさんあるし、曹駛の知らないことだって沢山ある。
そもそも、ここは一般から大きく離れた場所だ、常識は通用しない。
「おう、お前が新入りの嬢さんじゃねーのか」
サングラスをかけた、黒い肌をした男が私に向かってそう声を掛けてきた。
「まぁ、確かに、新入りではあるけど……なにか用?」
「いんや、別に大した用はないけど、初めて会話するだろ、俺達」
「初めて会うわけだし、それはそうだろうけど、それで?」
「めずらしいなと思ってな」
珍しい? なにがだろうか。
「いや、ここに来るのがさ」
「そんなに?」
ここは、武器が見れる場所でもある。戦闘をするものならば、ここに来てもおかしくはないのではないだろうか。
「ああ、珍しい。自らが能力を持ってるやつがここに来るのは珍しいさ。能力が比較的に弱いとかなら、まだ分かるし。獣が向いているとかもまだ分かる。でも、お前は、エルフ型の新人類だろ。それならば、強力な魔法が使えるはずだ。魔法ってのは遠距離で殴れるのも多いはずだし、わざわざ銃なんて思いもん使わずに杖一本持ってればいいと思うんだがな。だから、珍しいって思ったわけよ」
「へぇ、そうなの。まぁ、私は色々と気になっていたりしているだけだから、そう言う面では少し珍しいのかも」
「なるほどな、知識欲の深いお嬢ちゃんってわけだ。なに、ここに来たのはいい判断でもあると思うぜ、ここは面白いもんも多い。あ、そうそう、自己紹介まだだったな、俺はM・D・B、多分あんたと同じ戦闘要員的な奴だ」
「戦闘? まぁ、いいわ。私はレフィ=パーバド。恐らく戦闘する係よ」
彼は手を差し出してきたので、挨拶代りの握手を交わした。
「よっしゃ、そっちは、多分魔法だろ、能力は」
「能力? まぁ、能力と言うほどのものでもないけど、強いて言うならそうなるわ」
魔法の一点に置いてみても、私より上の者は数多くいる以上、能力と言っていいのかどうかは自信はないけど。
「ああ、じゃあ、俺の能力も紹介するぜ」
能力と言うのは仲間内でならそんな簡単に明かしてもいい物なのだろうか。確かに、ここに来てから教えてくれる人も何人かはいたけれど。
「おれっちの能力は、物を直すのが得意。それだけだ」
「え?」
能力のようには感じなかった。
「まぁ、そう思うよな、実際能力でも何でもないしな、そもそも俺に特別な能力なんてないぜ、実際は。ただ、人よりちょっと物の修理が得意なだけ。ほんとそれだけ」
「それで戦うの?」
気になってそう尋ねた。それじゃあ、実際にはどれほどに戦えるか分からない。相手は、一流の兵士や、強い力を持った人たちだ。到底勝てるとは思えない。
「そうだな、そうみたいだ。まぁ、実際戦ったことなんてないから、どの程度戦えるかなんてわからないんだけどな」
「そうなんだ……」
戦闘要員の中にも、こういった人たちがいるんだ。そう思った。
この人が、なぜ、戦闘要員になったのか、なれたのか。それは分からない。でも、こういう人たちもいる。それが分かった。
「まぁ、せっかくだ。銃。見てけよ」
私は、その後、彼の説明を聞きながら、いくつかの銃の知識を得た。
今日、得られた情報は。
武器について。
戦闘要員の内情について若干。




