175話・そして……
久しぶりの更新で申し訳ないのですが、次話から章が変わりますので、プロット作成のため、来週に更新できるかどうかは未定です。再来週には更新いたしますので、暫しお待ち下さい。
―レフィ=パーバド―
曹駛は今何をしているだろうか、私の事をどう思っているだろうか。
私はもう死んだと思っているだろうか。それとも、まだ、生きていると思っているだろうか。
曹駛と会うことは、ここにいる限り出来ない。もしくは、出来ても、大きな被害が出るかもしれない。だからと言って、ここから離れることは出来ない。この村を出ていくなんて、きっと出来ない。
そう、普通なら。
だけども、一つ、ただ出るだけでもなく、曹駛のためになって、その上、曹駛と出会える可能性も高い方法が一つ見つけた。私は、チャンスにつながるその一本の糸を掴むことが出来た。だが、ここから、その糸を手繰り寄せることが出来るかどうか、それが大事だ。
「どうした、パーバド。ぼーっとして、話があるのではないのか?」
この村で陽々に会うのも既に3回目。私は、今日、彼を呼び出したのはほかでもない。
「私も仲間に入れてもらいませんか?」
そうだ、私が、ROJFOHCに入る。
「それは、つまり、どういうことだ?」
「私をROJFOHCに入れて、私はエルフだし、それに、あなたたちの仲間も一人倒している。力は十分なはずよ。それに、そんなに大きな目的を持っているのだったら、私があなた達の仲間を倒した事だって、些細なことのはず。どう? わたしをROJFOHCの一員に入れてはくれないかしら」
「仲間に入れるも何も、エルフの村に所属している以上、お前はもう既に仲間のようなものだろう」
「違うわ、そうじゃない。私が言っているのは、エルフの村の一員としてじゃなく、私個人をROJFOHCに入れてほしいって言っているのよ。そう、あなたのようなメンバーにね」
陽々は、考え込むような仕草をして、数秒。
「そうか、まぁ、お前がそういうなら、多分なんとかなるとは思うが、だが、お前の思っているほどいいところではないし、なにより、それは、お前の主人が悲しむんじゃないか?」
主人と言うのは曹駛の事だろう。確かに、最初は曹駛もあまりいい思いをしないかもしれない。だけれど、私が本当に動くのは入った後、そうしたら、曹駛も分かってくれる。それどころか、きっと曹駛の役に立つ。
「大丈夫、そんな悪い活動をしている訳じゃないことは分かったし、曹駛だってちゃんと説明すればわかってくれると思うわ。ただ、あんまり強引な手を取るのはそこまで賛成はしていないけどね。だけれど、それさえやめれば、もしかしたら曹駛だって参加してくれるかもしれないわよ。まぁ、そうでなくても、私は参加させてもらいたいけどね」
私がそう言うと、陽々はまたしても考える仕草をした。そして、またちょっとして、彼は口を開く。
「分かった、上と交渉しよう。先ほども言ったが、多分入れると思うから……そうだな、本部への帰還の際、お前も連れて行くとしようか」
どうやら、連れて行ってもらえるらしい。まずは、一段落。陽々の話では、どうやら入れそうなようだ。ならば、その後について、どうするか考えよう。
この後彼らがどういった行動をするかなどといった情報収集はもちろんのことながら、発足の理由や、先ほど陽々が言っていた上というのも気になる。この一段落は、ほんの出出し、私がすべきことの一歩目に過ぎない。
「用事ってのは、それだけか?」
「ええ、そうよ」
「そうか……」
陽々はぼそりと呟いてから、こちらに背を向けて、その場を去って行った。
実際、陽々が過去にやったことは許されることでは無い。けれども、彼自身は悪には見えなかった。彼もまた、曹駛と同じで、何かの理由をもってして……彼の場合、自分が生きる為、国を滅ぼそうとしたりしたのだろう。曹駛が、私たちの村を滅ぼしたように。だから、曹駛側に立っている私は、決して、彼の批判が出来る身ではない。いや、そもそも、復讐とはいえ、何も知らないような国民を巻き込むくらいに国を責めた、そんな村の一員である。陽々に何か言う資格なんて持っていない。だが、それだからといって、彼が過去にやって来たことが無くなるわけでもない。もちろん、曹駛がこの村にしたことも、この村がフォルド王国にしたことも。
今の私は思う。
世界が平和になったら。そんな大きなことは望まない。ただ、全てが終わったら、そのあとは、私達だけでも平和に暮らせますように、と。
そうして、次の日の早朝。
私は、家を出ようとした。
朝とはいえ、まだ早く、日も出ていない。なので、シェイクちゃんもまだ寝ているだろうし、起こさないようにこっそりと外に出たのだが、そこには、シェイクちゃんがいた。
「行くんだね」
「ええ」
なんとなく分かった。シェイクちゃんは私がどこに行くか分かっている。
「でも、なんで、知っていたの?」
素朴な疑問だ。なぜ、シェイクちゃんは私が、ROJFOHCの本部に行くことを知っていたのだろうか。
「そうだね、まぁ、ボクは情報通だからかな」
「ふふ、それじゃあ、答えになっていないよ。でも、シェイクちゃんらしい。かな」
シェイクちゃんは地震に関する情報を余り多く教えてはくれない。謎多き存在だ。それは、今なお健在のようで、別れの時ですら、そう言ったキャラを突き通すらしい。
「まぁ、今生の分かれってわけでもないし、また会おう。その時までには、もっと可愛くなって待ってる」
「うん、分かった」
「じゃあ」
「じゃあね」
私は、シェイクちゃんに見送られながら、村の外れまで向かった。そこには、大型のドラゴンの背に腰をかけた陽々がいた。
「準備はいいのか?」
「ええ、特にすることはないもの」
なにせ、唐突にこっちに連れてこられたのだから、持っていくべきものも、特段これといってすることもない。だから、出発そのものはすぐ出来る。
「じゃあ、出発するぞ」
私がドラゴンの背中に乗ったのを確認すると、陽々は何か合図をだしたのか、ドラゴンは羽ばたき始めた。
その風圧はとてつもなく、周りの木々は倒れるか否かと言うほどに揺れている。大きく揺れるその背から落ちぬように、しっかりと腰をつけた。
今から、ROJFOHCへ潜入する。その結果がどうなるかなんてわからない。だけれども、これが、私に出来ることだから。これが、曹駛に会う駄目の最善策。
待ってて、曹駛。
私は、必ず、あなたともう一度出会って見せるから




