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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
十章・未来。
173/203

171話・その日まで待ってほしい。

引き続き更新頻度は落ちたままであると思います。申し訳ありません。

 ―レフィ=パーバド―


 その日、村で人間を見た。それも、殺されることなく案内されている人間を。後姿だったので、どんな人物かはよく分からなかったが、身長や体つきからして察するに、男性だろう。その男性は、ログハウスの中に入った。そして、そのログハウスは……過激派の、会議で使わるもの……。

 どういうことだろうか、見た感じではだまして連れて行って、そこで殺すと言う感じでは無いと思うのだけど……。

 あれだけ毛嫌いしている人間をどうして、本拠地とも呼べるあのログハウスに案内したのか。それに、今日会議があるとは聞いていない。……なおさらあの男の正体が分からない。

 私も、あの中に入る権利はあるはずだ。あのログハウスの中で何が行われているのか確かめよう。それは、きっと私の欲しい情報に繋がっている気がする。それに……


 放置したら行けない気がするんだ。このことは……


 私は、ログハウスの中にはいると、そこには、いつものメンバーと先ほどの男性が話し合いをしている風景があった。

 突然扉を開けて入ったので、全員の視線がこちらに向いた。


「じょ、嬢ちゃん」


 皆が平然としている中で、メルメストローさんだけは、どこか焦った表情でこちらを見ていた。私がここに来ることを想像していなかったようだ。


「すいません遅れました」


 そう言うと、他の人は視線を私から外すが、メルメストローさんだけは、未だこちらを見ていた。それも、依然焦った表情のままで。

 推測するに、メルメストローさんは私を彼に会わせたくなかった、もしくは、彼を私に会わせたくなかったのだろう。

 椅子を引いて、いつもの席に座る。


「それじゃあ、話を再開させましょう」

「いや、待て」


 一人が話を再開させようとしたところ、その人間の男性がそれを止めた。私とは初対面であるから、信用されていないのだろうか。それとも、私が実は反過激派の人物であると、この短時間で見抜かれたのだろうか……流石にそれはないとは思うが、何せ相手が正体不明である以上、一応その可能性も頭にはおいておこう。


「お前、見ない顔だが、新入りか?」


 彼は無表情のまま、こちらを見る。

 何を考えているか分からない。それ故に少し緊張する。


「ええ、そうよ」


 無難な返事を返す。変に言葉を重ねてもいいことはないだろう。ここはシンプルにこの程度で答えるのがいいはずだ。


「そうか……なら、まずは自己紹介だな」


 と、男性は言う。

 すこし拍子抜けしたが、しかしまだ、緊張の糸を切ってはならない、まだこの男の巣城が分からない以上、疑ってかかるしかない。


「さて、こちらから名乗ろう」


 そう言って男は立ち上がった。


「俺は、鷸陽々……ROJFOHC(ロージフォック)のメンバーをしている。よろしく頼む」


 いきなりだが、彼の正体が分かった。それに、少子が欲しがっていた情報もまた手に入れた。というよりも……彼は、私達の宿敵ともいえる存在だった。

 今まで面識そのものはなかったため、誰だか分らなかったが、話ならそのものなら、曹駛やメアリーから、何度も聞かされている。曹駛もメアリーもちゃんと勝てていない相手である。私が、いや、この村が一丸となろうと勝てる相手ではないだろう。

 それと、彼が今言ったROJFOHCと言うのは、多分、曹駛がレコンストラクションJと言っていた組織だろう。たしかに、レコンストラクションJは、その組織がやろうとしている事だとも曹駛は言っていたし、ちゃんとした組織名はROJFOHCの方なのだろう。


「趣味は……特にないが、好きな物は生き物だ。植物や動物、虫なども好きだ。ただ、気持ち悪いのはあまり触れたくはないが」


 などと、ごく普通に自己紹介を続ける彼は、私達の前に立ちふさがる、最強の敵の一人だ。

 でも自己紹介されたのだから、自己紹介をしなければいけない。私の事も名前なら彼には知られてしまっているのかもしれないが、それでも、偽名は使える状況じゃない。ここは覚悟を決めて自己紹介するしかない。


「私は、レフィ=パーバド……よろしく」

「……そうか、確か、いや、ここで話すのも良くないか……後でにしよう」


 ……やっぱり、相手は私の事を知っている。恐らくだが、知っているような口ぶりだ。きっと、曹駛の関係者は調べられているんだろう。

 ここで変な動きをするわけにはいかない。そうすれば、今目の前にいる最強の敵だけでなく、ここに居る全員を敵にする可能性がある。いや、最悪の場合、ここにいる全員が敵にされる。ROJFOHCの……

 でも、彼らにも目的はあるはずだ。だから、彼もまた下手に動くような真似はしないだろう。それと、メルメストローさんの様子も気になる。他の皆は、いつも通りと言った感じだが、ただ一人、メルメストローさんだけは、どこか動揺しているように見える。彼は、私の事を詳しく知っているからだろう。私と、目の前の男が対当していること知っているメルメストローさんは、会わせたくなかったのだろう。だから、私を今日の会議に呼ばなかった。

私が今日この場にいるのは、本当に偶然のようなものだけれども、それでも、私ここに来てよかったと思う。メルメストローさん的は良くない事なのかもしれないけれど。

 やっと掴んだ。やっと掴んだんだ。私が、私達が欲しがっている情報。その尻尾を。手放すわけにはいかない。なんとしてでも、もっと詳しく、彼らの情報を知る必要がある。

 その後の会議は特に問題もなく進んだように感じられた。鷸という男も私がいることを特段気にしている訳でもなかったようだし、いつも通りの会議と同じだったとも言える。

 だけども、話している内容は全く以ていつも通りでは無い。いくつもの大事な情報が入っている、重要な会話であった。

 まず、このエルフの村は……ROJFOHCの一員として入っているということ。ここから推測できるに、ROJFOHCは、強力な個人が集まった団体ではないということだ。確かに、戦うのは強い人ばかりだが、それ以外にも人がいっぱいいるということだ。詰まる所の非戦闘員がいる。それは、大きな情報だ。

 相手は、思いのほか大きな組織である可能性が高い。

 会議が終わって、皆がログハウスから出て行く中、私とメルメストローさん、そうして、件の鷸と、私達が残っているのが気になったのかピーキィラくんが残った。


「えっと……」


 何か話を切り出そうとはしたが何を話したらいいか分からない。言葉の続きを出ないでいると、ピーキィラくんが口を開いた。


「二人は知り合いなの?」


 そう言った。その瞬間、メルメストローさんから一瞬殺気を感じたような気がした。しかし、即座に収めたからか、ピーキィラくんはそれに気づかない様子だ。だが、私が気付いたということは、確実に鷸も気づいているはずだ。


「大丈夫だ」


 鷸が小さくそう言う。ピーキィラくんに聞こえない程度の声で。

 戦闘は行わないという意思を伝えたのだろう。それを聞いて、私とメルメストローさんは一安心した。だが……どう答えたものか……


「まぁ、この村の外でな。一度会ったことがあると言う程度だ。気にするほどの関係性はない」


 私が悩んでいるうちに、鷸が、そう答えた。


「ふーん、そうなんだ」


 半分納得いっていなさそうとはいえ、とりあえずは分かったと、ピーキィラくんがそう返事をする。


「それよりも、少し話したいことがある。そうだな……お前は席を外してくれないか」


 鷸が、ピーキィラくんに向けてそう言う。


「えー、それは、俺に関係ない事なのかよ」

「全く関係のない事ではないだろうが、極秘の会話だ、メルメストローとパーバドはいいが、ブーク……お前は、意外と口が軽いからな」

「えー……そんなこと言われたら気になるじゃんか」


 見るからにここから出るのを嫌がっている。なんとなく分かる。これから先の話は、皆には話せない事だ。きっと、曹駛の事が出て来る。だから、本当はメルメストローさんすらこの場にはおいておきたくないはず。でも、まずはピーキィラくんに出て行ってもらうのが先だ。


「ピーキィラ、今は出て行ってくれないか……本当に大事な話なんだ。そうだな……本当は俺もいていいか分からないくらいの極秘の話しだろうな。うっかり洩らせば、村が滅ぶレベルのだ。だから、いつか話すとしても、今はとりあえず……出て行ってくれ、ピーキィラ」


 メルメストローさんが真面目な表情でそう言った。それは、間違いじゃないかもしれない。この先の話しで、極秘情報が出てきて、それによって、エルフの村とROJFOHCの方向性が違えたならば、間違いなく滅ぼされるだろう。


「……分かったよ、オッチャンまでそう言うなら、今日は出て行く。でも、いつか話してくれよ」

「ああ、いつかな……」


 しぶしぶといった表情ではあったが、ピーキィラくんは出て行ってくれた。


「さて、話を始めようか。何が聞きたい」


 鷸が、そういう。

 せっかくの質問のチャンスだ。いきなりだが、単刀直入に聞かせてもらおう。


「そうね……なら、あなた達の目的は何?」

「ROJFOHCの目的か」

「ええ」

「そうだな……この国の復活……と、言っても、分からなんだろうな。この国というのが伝わらないか」


 いや、曹駛から聞いている。元々はもっと大きな国で、それが散り散りになった結果がこれだって。


「そこそこは、曹駛から聞いているけど、詳しくは分からないわ。確かに、この広い土地を一つに国にするとかなんとか」

「ああ、大体あっている……お前は、この国がいつからあったか知っているか?」

「国? それは、この大きな土地で言う国を指しているの?」

「そうだ、この広い土地はモンスター達の物では無かった。人間が世界を支配しようとしていたくらいにな」


 人間が? 一般人は比較的弱いモンスターにすら勝てないと言うのに?


「信じられないだろうが、事実だ……その昔、人間は、かなりの支配力を持っていた。そして、その支配力は日々強くなり、もうすぐでこの星。地球を全て支配するところだった。だが……その前に、異変が起きた。世界中で地震が起きたのだ。まるで、星そのものが揺れているかのような。そして、その自身が収まる頃には、既にモンスターがいた。人間の使う通信機器が一部使えなくなっていた。そうこうしているうちに、人間の大部分はモンスターに食われた、追いやられた。武器を持つ者だけが、戦い、生き残り、村や町を作ったらしい。それが今の国だ。この情報は、勝手に話してはいいことでは無いのだがな……ここであったのも何かの縁ということで話しておく……」


 突飛すぎる話に心どころか頭もついて行けない。メルメストローさんも表情から察するに同じようだ。


「さて、それと、目的だったな……。ROJFOHCと言うのは……頭文字からできている。それは、Reconstruction of Japan for only humans countryというものだ……」


 知らない言葉がいくつか出てきた。どういう意味なのだろうか。


「そうか、やはりな。いくつかは残っているだろうが、言葉もいくつかは消えかかっている。特に海の先にある国の言葉はな。これだって、暗号のような意味合いで、()()と言う言語を使ったんだ。本来の意味とは多少違うかもしれないが、残っている文献から、なんとか訳を作り、使えるようにした。そうして、それで、作ったこの言葉こそが、我々の目標そのものだ」


英語? オンリー程度なら聞いた事があるが……これが、そもそも私たちの言語では無い? 余計に頭がこんがらがっていく。どういうことだ?


「そうだな、訳も必要だろう。伝わらなかったら教えた事にはならないからな……意訳ではあるが、そうだな……人間の日本の復興……と言った所か……」


 それは、今日、いや、この村に来てから一番の情報だった。

 その後も、話しは続いたが、相変わらず、理解できる部分は少なく、ただ文字として覚えることしかできなかった……。

 物凄く重要な情報は手に入ったが、これをどうやって曹駛に伝えるか……。エルフの村を抜け出すことは出来ないだろうし、出来たとして、曹駛に会える可能性はほぼゼロに近いだろう。ならば、私がこれからどうやって動くかを考えよう。鷸は、月に一回は来るらしい。次にここを訪れるまでに、何か考えておこう。


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