15話・俺の秘密、話しました。
―武元曹駛―
あれから数日。
いろいろと言いたいことはありますよ。
でもその中でも、一番言いたいのはあれですね。
レフィがデレッデレになったよ。やったね。
やったねくねぇよ。ていうか、やったねくねぇってなんだよ、全く意味不明の言葉だ。俺本人ですら良く分からない。多分、良くない的な意味だと思う(推定)。
デレたのはいいけど、デレすぎてヤバいね。
俺の腕に抱き着いて離れようとしない。無理に引き離したらどうなるか分からないし。
なんというか、首輪の事すっかり忘れていたわ……ってわけじゃないけどさ、首輪の事を考慮して戦えるほど楽な戦闘じゃなかったんだよ、仕方ないだろう。
そう、だから、色々あるが……第二回夜の会議だ。
夜の~~はいかがわしくなる可能性が高いな、まぁ、心が汚れているだけかもしれんが。
と言う事で、お昼は寝て過ごした。
もちろんレフィは腕に抱き着かせたままな。
はい、夜です。え?このシーンカット法に既視感を感じる?気のせいだと思うぞ。そもそも、こんな強引なシーンカットするのは俺くらいだろ。
まぁ、始めようか。夜の会議を……な……。
曹駛は、レフィをベッドに座らせて、自分の顔をそっとレフィの耳元に寄せる。
「――――――」
何を言ったのか二人以外には全く分からないが、レフィの顔が真っ赤になった。
レフィは、曹駛の腕を離して、その場に寝転がり、布団のかけ、頭を枕の上に置いた。
「少し、昔話をしよう」
曹駛は普通のボリューム、普通のトーンでそう言った。
「その前に、お前は俺が何歳に見える?」
「10代後半か、もしくは20代前半……?」
「そうか、まずはその誤解から解いて行こう」
少し間を置いてから、話を続ける。
「俺は、47歳だ」
「え……?」
「まぁ、俄かには信じがたいかもしれんな:
「だ、だって、それじゃ、ジャキラルさんより年上なんじゃ……」
「そうなのか? まぁ、でも、お前がそう言うならそうなるな」
「だってその見た目で」
「まぁ、見た目は置いておくとして、-まぁ、秘密を一つ話すが絶対機密だ。これは約束だ。確かに、今回の話自体謝罪代わりみたいなものだが、だからと言ってこのことを他に洩らされていい訳では無いからな、分かったか? 誰にも話すなよ」
「………」
レフィは口を開くことなく、首を小さく上下させた。
曹駛もそれを見て、小さく頷いてから話を続ける。
「俺は、不死身だ。正確には不死ではないが、不死と言っても大して間違いでは無いだろう。
だが、それでもあえて言うならば、不老超長寿というのが正しい。
死んだとしても寿命を1年短くされるだけで、すぐに生き返る。というか、正しくは戻される。
こんな呪いのようなものを掛けられた当時の状態にな。
ただ、記憶は引き継げる。まぁ、良心的だ。
あと、お前は魔法について聞きたいと思うから、それについても説明しておこう。
俺の魔力は命を魔力に変換して使っている。分かりやすく言えば寿命を削っている。
ああ、泣くな泣くな、大丈夫だ、俺はむしろ死にたいくらいなんだ。
大丈夫、だから泣くなってば、死にたいとは言ったが、死ねるわけじゃない。勝手に生き返ってしまうんだよ、仕方ないだろ。むしろ死ねないが正しいくらいにな。
残り寿命は何億年だったかな? しらねぇ、数えたくもない。魔法を使うと寿命は減るんだが、生物を殺したらその分寿命が増える。嫌なシステムの呪いなことで。
そのせいというかそのおかげで、終わりの見えない寿命になりましたとさ。
それと、歳は取るが死んだら戻る。だから若い姿のままなんだ。今は確か、19歳の体じゃないっけ? まぁ、詳しくは忘れた。
心配をかけたことを謝る。
だが、首輪が外れたからって、俺は大丈夫だ。今度からは心配無用だ。
その、今のお前、最高に可愛いが、どうも慣れないと言うかなんというか、こそばゆいというか、歯に物が挟まっているというか、体が硬くて背中が掻けないというか、うーんどれも違うな。
そうだな、猫に犬の皮を被せた感じだろうか、うん、このたとえはいいな、まぁ、そんな感じなんだ。だから、次に目を覚ましたら、どうかいつも通りのお前でいてくれ。
確かに今のお前は物凄く可愛いし、今すぐにでも抱きたいくらいだけど、それは、流石に違うんだ。
お前はお前らしくあってほしい。
今のお前が本当のお前なのかもしれないが、それでも、俺が知っているお前じゃないから、俺が知っているお前になってほしい。
俺の我儘、どうか聞いてくれないか? 勝利祝いにな。
それじゃあ、おやすみレフィ。
明日、久しぶりに会えたら嬉しい。
おやすみ。
おやすみ。
おやすみ」
レフィが眠りについたのを確認して、曹駛は部屋を出た。
その足が向かう場所は、傭兵センター。
だが、その前に曹駛はある場所に、向かっている。
どこかといえば、それは、件の焼野原である。
焼野原……元は修練場兼コロシアムであった場所だ。たいそう立派だったが、それも今では見る影もない。
巨大ドラゴンが暴れ、精霊が暴れ、人間が暴れたのだ。
こうなるのも当たり前であった。
なぜ、今そこへ向かっているのか。
それは、人に会うためであった。
その相手は。
「よう、ミット。元気そうだな」
ミット=トール。
元国軍23期隊長、現指名手配者の男であった。
「死体が見つからなかったから、きっとどっかに逃げたんだと思っていたぜ。装備を取りにここに戻ってくるだろうから、わざわざ埋めておいてやったんだ、感謝しろよな」
「面倒なことを……」
「面倒なって……なんだその言いぐさは、仕方ないだろ、そうでもしなきゃその装備は国に持ってかれただろうぜ」
「………」
「まぁ、いい、少し話をしようぜ」
曹駛にとって、今日で二回目の昔話の始まりであった。




