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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第八章・知られざるテンチェリィの謎を追え
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134話・テンチェリィのひ・み・つ

 ―武元曹駛―


俺の体が乗っ取られるという、大騒動の後、透と姫様達は満曳の家のしばらく泊めてもらうこととなったが、サキは修行の旅に出るとかなんとか言ってどっか行っちゃったし……まぁ、一応、麻理のやつが転移の魔法を封じ込めておいて、いつでも使えるようにしたお札みたいなやつを渡してたし、大丈夫とは思うが、またどうして急に修行なんてしようと思ったんだろうな、あいつ。

 まぁ、それはさておき、俺と麻理とレフィとテンチェリィは、一緒に麻理の持ってる屋敷までやって来た。


「持ってるってなんですの、持ってるって」


 麻理が、メアリー時の口調でそう言う。


「いや、お前が持ってるんだろ。というか、勝手に人の心の中覗くな」

「大丈夫ですわ、私が覗くのはお兄様の心の中だけですから」


 いや、どういう仕組みだよ。と、毎度思うのだが、実際他の人の心の中は見えていないらしい。本当にどういう仕組みだよ、その術。


「何が大丈夫なんだ。というか、今だって寿命の総量には言うほど余裕ないだろ、無駄に使うな」


 それと、あの後、減りに減って、一般人と変わらないくらいの寿命にまで減っていた寿命も、どうせ誰かがやるなら、ということで傭兵センターのほうで依頼貰って、色々と狩って、一般人から見たらそれこそ結構どころではないほど長い寿命を頂いたが……その、大魔法とか超大魔法とかをポンポンと使う俺達にとっては、まだ少なすぎるくらいなんだよな……


「無駄になんか使ってませんわ。お兄様が捕まらないように見張っているだけで」

「いやいや、捕まるってなんだ、捕まるって」

「お兄様が小さい娘に手を出して捕まらないように……」

「……いや、だから、いや、うん、あれの事まだ根に持ってたんだ。というか、なんでだ。あれ、どう考えても俺に非はないだろ」


 麻理が言っているのは、クリムとキスしたことだろう。


「それだけではありませんわ、過去の記憶を覗かせて貰った所、どうやらテンチェリィさんにもいろいろとなさっているようで」

「あ、いや、まぁ、でも、何にも、変なことは……してないだろ?」

「………」


 麻理が無言で訝しむような目でずっと睨んでくる。なるほど、これがジト目か。って、嬉しくない。結構嬉しくない。やっぱり、先日読んだ、あの本書いたのは特殊な方なんじゃなかろうか。

 ちなみに先日読んだ本というのは、えーと、何だっけ。タイトルは忘れた。まぁ、カーヴァンズ公国滞在中に図書館に行って暇つぶしに適当に読んでいただけだし、忘れても仕方ないだろう。


「一回死にますか?」

「いや、遠慮しておく。寿命がもったいない」

「それもそうですね。お兄様にお灸をすえるためだけに、寿命を縮めるのは割に合いませんわ」

「なんだその言い方」

「別にいいでしょう」

「いいわけあるか」

「実際に手を出すロリコンにはちょうどいいでしょう」

「いやいや、手、出してないし」


 手、出してない。うん、出してないはず。そんな記憶はない。もし、記憶が胃のところでそんなことがあったとして、テンチェリィとクリムはセーフ。テンチェリィは、ほら、奴隷だし。元々奴隷なんだし。奴隷なら、別にそういうことしてもいいじゃないか。ね、一応扱いは道具だし。クリムも、見た目はなぜかあんなものだが、実際何年生きてるか分かったもんじゃないし、そもそも人じゃないし。俺たちのほぼ不死身だから人間じゃない理論とかじゃなくて、本当に人間じゃないし。だから、セーフ。


「じゃあ、私は?」

「おまえは、セーフも何も、俺、何もしてな「全身ペロペロ」すいませんでした」


 ああ、うん。ソンナコトモアリマシタネ……


「私も、見た目……というより、身体の年齢は12のままですし。皆、歳は置いておくとして見た目は年端もいかぬ少女ですし、テンチェリィさんにいたっては実年齢も危ない。どちらにせよ、このままだと、ロリコン容疑というのは晴れませんが」

「あー、うん。違うんだけどな」

「でも、お兄様が実際に手を出されたのは、幼い見た目の女性ばかりではないですか」


 別にロリコンじゃない。それに、見た目の話をするなら、麻理はそうでもないと思う。結構早熟で、そこまで幼くは見えないし。


「というか、そんなことはないと思うし、そもそも女性に手を出した覚えはな「全身ペロペロ」すいませんでした」


 それに関しては、ガチで反論が出来ないため、ここぞと言うとき持ち出されると痛い。かなり痛い。あの行動に大した意味はなかった。純粋に会えたことが嬉しくなって、昔やってたようにイタズラをしたくなったんだ。ただ、当時と同じことをやっても、きっともうスルーされるだろうし駄目だろうと思って、とった行動が、後に振り返ってみれば物凄いとんでもない行為だった、というのが麻理の全身を舐めまわした例の事件の真相だ。

 ロリコンを認める訳にはいかないが、今は話を逸らすことで何とかしよう。


「まぁ、それは置いておくとしても」

「話を逸らさないでください」

「……置いておくとして、テンチェリィの事だが」

「なんですか? 告白でもするのですか?」

「そうそう……って、おーい。話聞いていたのか?」


 この流れでどうしてそうなる。


「お兄様がロリコンだって言う話でしたし、流れ的には正しいかと」

「まてまてーい」

「なんですか。死んでください、ロリコン」

「違う……違う。そうじゃない……色々と」


 俺が話したいのは、テンチェリィの謎についてだ。


「テンチェリィさんの秘密ですか? それを知ってどうするつもりで? もしかして、それでテンチェリィさんを脅して、無理やりアレコレするつもりですか?」

「うんうん……って、だから、ちっがーう」


 話が暴風に晒され上手くレールの上に乗せられない。脱線以前の問題だ。


「じゃあ、なんですか」

「いや、お前俺の心の中読めるなら分かるだろ」

「いえ、分かりませんが」

「……まぁ、そう言うことにしておくとして、なんだお前。俺に恨みでも「全身ペロペロ」うん、だからごめんってば。というか、それ、今までずっと根に持っていたんだな。ごめん。あまり話題にならないから、気づかなかったけど。本当にごめん。でも、お願いだから話をさせてくれ」


 テンチェリィがなぜ俺を倒すほどの、レフィと麻理にあのミットまでいて歯が立たないような相手を倒すほどの力を持っているのか。その時のテンチェリィは一種のトランス状態のように見えたらしいし、その時の記憶を本人は持っていないらしい。つまり、素の戦闘能力とは別。素の戦闘能力に関しては本人曰く、捨て子だったから、らしいし、それで納得も行くのだが……もう一つの方がよく分からないのだ。実際に、そこまで強いのなら、現状で一番強いのは、俺でも麻理でもなくテンチェリィということになる。ただ、効いた感じではテンチェリィは自分の意志で、その状態にはなれそうにはない。もしも、それが分かったとして、テンチェリィが何者なのか。それは、分からないままだ。


「まぁ、相手が何者でもいいじゃないですか。テンチェリィさんはテンチェリィさんですよ」


 先ほどまで、俺をからかい続けていた麻理がそんなことを言う。なんだ、いいこと言うじゃないか。


「……そうだよな、テンチェリィはテンチェリィだよな。何者であれテンチェリィはテンチェリィだ」

「はい……だから、せめてあと5年は待ちましょう。それでも好きならば、きっとお兄様はロリコンではありません。テンチェリィさんが好きだったのでしょうね。恋愛は自由ですよ、あまり幼い子は駄目ですけれども」

「うん……ちがうよ、ぜんぜんちがうよ」


 俺の中でテンチェリィの扱いについての考えがほぼ決まりかけていたのに、かなり揺らいだんだけど。台無しなんだけど、前半のセリフ。


「まぁ、真面目な話に戻すと、そうですね。今まで通り……というのが一番いいのでしょうけど、このまま触れず触らずというのも……」

「うん、急に真面目になったな。なんだったんだ、さっきまでの茶番」

「夫婦漫才では?」

「夫婦?」

「……コホン、まぁ、そこは気にしなくて結構ですわ。」


 漫才かー、大分無意味なやり取りだったな、別に誰も見ていないし、聞いてもいない。まぁ、楽しかったからいいけど。


「それで、テンチェリィの謎の事についてだが……少し、調べたいと思う」

「反対はしませんわ。確かに、知っておいて損はないと思いますから」

「ああ、でも、調べるっつっても、テンチェリィ本人から、昔の事とか色々と聞いて、そっから考えるしかないんだけどな」

「まぁ、それくらいしかできませんからね。千里眼が使えれば、ある程度は調べられるかもしれませんが、あれは莫大という単語で済ませてはいけないほどの寿命を使いますからね、流石にそれほど寿命もありませんし。それしかないでしょう」


 麻理の千里眼はかなりすごいらしい。まだ実際に見てないからよく分からないのだが、麻理が言うには、世界の全てが分かるらしい。ただ、全てを知ろうとすればどうなるかくらい俺にだって想像がつく。かなり使い勝手は悪いようだ。


「まぁ、ともかく。そう言うことで、数日の間、レフィを預かってくれないか?」

「?」

「いや、レフィをここで預かってくれないか?」

「あの、お兄様、すいません話が繋がりませんが」

「その目で見れば分かるだろ、何を考えているかくらいは」

「ええ、でも、なんでそれで行けると思ったのか分かりませんわ」

「なんでだ? いいだろ別に……テンチェリィとの二人暮らし」


 レフィをここで預かってもらい。テンチェリィは俺と一緒に俺の屋敷で暮らす。完璧じゃないか。これにどんな欠点が……


「……もういいですわ、お兄様は無自覚なロリコンということで……」

「まてまて、どうしてそうなる」


 どうしてまたそっちに話を持っていく。もう漫才は終わっただろ。


「分かりました、もうどうなっても知りません。さっさと、テンチェリィさんを連れて行けばいいじゃないですか」


 半分怒り半分呆れといった感じの麻理はそう言った。


「え、えっと、凄い不服そうだけど、賛成してくれているんだよな」


 そう信じたい。けど……


「………」


 麻理は無言……しかも、なんかめっちゃ怖い。怒りのオーラというか、なんというかが見えている。


「じゃ、じゃあ、連れて行くからな。あ、明日から、当分二人暮らしするからな」

「………」

「え、えっと、と、とりあえず、今日のところは部屋に戻るな」


 俺は逃げるように麻理の部屋から出た。

 さて、麻理の事は一旦頭の片隅の置いておこう。それでも大きすぎて、なんか考えていると、ちらちらと映りこんでくるが。

 テンチェリィはどうしてあんな力を持っているか。それを全力で調べよう。と、いっても一緒に暮らすだけなんだがな。最近テンチェリィ分が足りていなかったし、丁度いいのではないだろうか。さて、まぁ、当分は俺の休暇ということで。もちろん、テンチェリィの事は調べるけど、ちゃんと休んで、英気を養うとしよう。最近戦い続きで色々と疲れてるしな。テンチェリィを見て癒やされよう。



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