13話・心配、かけたようです。
―レフィ=パーバド―
曹駛は、露骨なまでに恰好を付けて出て行った。
普段はあんなキャラではない。
ちょっと、バカでアホだけど、それでもいい人だと言うのは分かる。
そんな奴だった。
曹駛がこの家から出て行ってから少しして私の体は動くようになっていた。
いろいろと、気になる点がいくつかある。
取り上げては。
互角以上に戦う自信があると言う事。
兵士に決闘を申し込まれるほどの何かがあったと言う事。
曹駛が魔法を使えたという事。
こんな感じだろう。
自信に関しては、あいつが元兵士だというのと、自信家だという二つの点で分からなくもないとしても、残り二つが不明だ。
特に、魔法が使えるという点は謎である。
あの魔力量は一体どういうことなのだろうか。
とても人間とは思えないほどの魔力を感じた。
下手したら、私よりも多く魔力を保持している可能性がある。
それに……あの魔力生成速度……。部屋から出る時にはもう半分以上回復していた。
曹駛の魔法に関することのどこをとっても、とても人間とは思えない。人外染みた力だ。
彼は本当に人間なのだろうか。
「はぁ……」
ため息が出る。
私は、彼の元へ向かうべきなのだろうか。
その必要が無いようにも感じる。あれだけ魔力があって魔法も使えるのだ。人間に負けることは無いだろう。
ここで帰りを待って居るのが、正しい選択のはずだ。
料理でもして待っていよう。帰って来たらお腹空いているだろうし。
こう見えても料理には自信がある。
………。
あ、良く考えたら、買い物してないんだった。
………。
仕方ない……一人だけど、買い物してくるか。
と言う事で、大型スーパーマーケットに来た。
本来は一人で来ないという取り決めだけど、曹駛がいないんだしこんなときくらいは、仕方ない仕方ない。
誰かに言い訳をするかのようだけど、心の中で何度か「仕方ない」と呟く。
お金は少ないから、今までよりは節約するけど、今日は勝利祝いにちょっと豪華なごはんを用意してもいいよね。
これまた言い訳のように心の中で呟く。
言い訳って大事ね。
と言う事で、買い物かごにポイポイと美味しそうなものを放り込んでいく。
そう、ポイポイと。
気づけば二籠目三籠目。
通り過ぎれば、四,五籠目。
いつの間にかは十籠目。
「お、お会計、1000ギジェとなります」
「はい」
「げ、現金ですね、しょ、少々お待ちください。」
あれ?気のせいか店員さんが少々引いてる気がする。
まぁ、気のせいだし大丈夫。
そう、大丈夫。
「あ、はい、丁度です、では、あの、領収証は……」
「ください」
一応出費は曹駛に知らせなければいけないから。
祝い事だし、このくらいなら曹駛も許してくれるだろう。
私は、馬車をレンタルし、荷物を家まで運んだ。
それにしても……。
気分が落ち着かない。
何をしても気分が落ち着かない。
大丈夫。
きっと、あいつは大丈夫。
そう信じているはずなのに、心のどこかにある嫌な予感を拭いきることが出来ない。
買い物をすれば、料理をすれば、と気を紛らわしたところで、それは誤魔化しに過ぎず、気分が落ち着くことは無かった。
「はぁ……」
私は身体の力を抜いて、ベットに倒れこんだ……曹駛の……。
別に、意味は無い。
い、意味は無い。
本日何回目かの言い訳。
やっぱり、言い訳って大事ね。
………。
…………。
……………。
………――――――。
「ふぅ………」
大きく息を吐いた。
特に意味は無い。
倒れこんでから時間が経ってから大きく息を吐いただけだ意味は無い。
別に呼吸も荒くはない。
荒くないったら、荒くはない。
い、言い訳では無く、じ、事実。
ど、どっちにせよ、真実は私しか知らないから大丈夫。
そ、外に出よう。
新鮮な空気が吸いたい。
戸を開け、中庭に出る。
空にはドラゴンが生き生きとしている風景も見られ、実にほのぼ……の……してない……。
ほのぼののほの字もない。
ドラゴンが向かう先は、修練場。
実に嫌な予感がした。
だが、私は現実逃避するように、部屋に入り込んだ……曹駛の。
そして、嫌な予感は的中した。
暫くしてから、私の首輪が外れたのだ。
首輪の外れる条件……。
信じたくはないが、そういうことなのだろうか。
真偽を確かめたいが、今行ったら私も……。
ベットにダイブする。
それから目一杯大きく息を吸う。
そして、少しずつ吐く。
全く持って心は落ち着かない。
頬が熱いのは気のせいだろうか。
気のせいでは無いのだろうか。
今の私が確かめられる真偽はそれくらいだ。
この首輪の真偽を確かめる勇気は……無いはずなのにな……。
足が勝手に外に向かう。
修練場に向かう。
曹駛の元へ向かう。
今の私は魔法が使えるはずだ。
だから、私が助ける。
絶対に助ける。




