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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第七章・おいこれ・貴様は何処へ行く。
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125話・嘘だと、言ってください。

 ―サキ=フォールランス=カムラ―


「冗談にしては、性質が悪すぎるぞ」

「そうだな、俺もそう思うが……残念ながら、冗談じゃねぇんだ」


 曹駛は、武器を構えた……ということは……始まってしまうのか……戦いが……

 私はこんなことをしたくてここへ来たわけではない……助けるはずで来たのに……なぜ、戦わなければいけないのだ。


「それじゃあ、行くぜっ! 頑張って戦えよっ!」


 曹駛が飛び掛かってきて、その手に持つ大きなランスを突き刺してきた。後ろに飛び退き、カウンターで首を狙い槍を突き放……てない。できる訳が無い。

 死なないと分かっていても、私は曹駛の喉を突き刺すことが出来なかった。いや、本当に死なないのかどうか、疑問と迷いが生じたのだ。現にメアリーは生き返っていない。つまり、曹駛も今は生き返らないかもしれないのだ。

 どうするか、なんて、どうするも出来ない。それが、現状。


「手加減するのはいいが、そんなことしていると死ぬぞ」


 私が曹駛の首元で寸止めしていた槍は、曹駛に弾かれ後方に飛ばされた。そして、曹駛が突き放ったランスをか躱しきることが出来ず、右の腹を切り裂かれ、後退した後に膝を付いた。


「ぐっ……」

「サキさんッ!」


 椎川さんが急いで駆け寄ってきて、私を守るように前にたった。


「早く、回復を……」

「え、ええ……」


 私は、急いでメアリーから貰った回復の札を取出し、使用した。

 そして、詠唱をしていたらしい、奴井名さんが杖を振るった。


「ぱ、パワーボール……えっ……な、なんで?」


 ……なにも……起きない……?


「な、なんで?」


 奴井名さんは何度も何度も杖を振るうが、やはり何も起きない。


「はっ、驚きか? まぁ、無理もないな」


 曹駛は、奴井名さんの元まで歩いて近づいて、ランスを振り払い奴井名さんを殴り飛ばした。


「恩っ!」

「奴井名さんっ!」


 椎川さんと私は、急いで奴井名さんの元へ向かおうとしたのだが、私の腹に激痛が走り、私はその場に再び膝を付いた。


「ぬっ……」

「な、さ、サキさん……」


 見て見れば、先ほど切り裂かれた腹からは、血が溢れ出ていた……

 な、治っていない……


「ああ、魔法かなんかで治そうとしたのか? サキ」

「………」


 私は、その問いに対し、言葉を返すことは出来なかった。答えられなかった、気づいかれているのだろうが、札に魔法を封じ込めていつでも使えていることを知らないはずである曹駛に、気休め程度には隠せるかと思った……だが、それ以上に、傷による痛覚の刺激が、思った以上に強すぎて、声が出なかったのだ。


「ああ、言っておくが、ここでは魔法は使えない。まぁ、自分の寿命を削って使うって言うのなら話は別だがな」


 そう言った曹駛は、私の元まで歩いてきた。そして、私は曹駛に蹴り倒された。

 立ち上がろうとしたところを踏みつけられ、またしても激痛が走る。


「まぁ、無理もないか……封殺ミツバチ、鷸が残して行った奴らが、ここいら一帯を飛び回っている」

「……そ、そいつはっ……ぐぅ……」


 なんなんだ、と言葉を続けさせてはもらえなかった。痛みに耐えつつも、言葉を発したのはいいが、途中で曹駛がランスを私の傷口に突き立てぐりぐりと内臓をえぐり出し始めたのだ。

 もはや、声云々所ではなく、意識すら飛びそうだ。


「な、なるほど、そう言うことか……曹駛くん」


 そう言った椎川さんの目は、紫色の光を放っていた。つまり、心の中を読んだ。ということだろう。


「ん? ああ、そうだ、そうなるな。だから、頑張れ、満曳」


 それに対する曹駛の答えは、随分と曖昧な物である。


「まぁ、もっと早くその目を使っていればよかったと思うが、あと、あれだな、麻理のはやっぱ偽物なのか……」


 曹駛が言葉を止め、少しの間、沈黙が訪れる。

 そして、何かに同意するように椎川さんが口を開いた。


「まぁ、そうだね、じゃあ、分かったよ、作戦として、決行する」

「そうだな、足掻くだけ足掻けばいいさ」


 二人のやり取りは今終わったようだ。


「じゃあ、曹駛くん。君を倒す」

「まぁ、何度も言うようだが、せいぜい頑張ばいいさ」

「そうさせてもらうよ」




 ―椎川満曳―


“そうか、満曳は心の中が読めるんだったな”


 曹駛くんが、こちらを見てそう心の中で呟いたようだ。


“悪いな、今、自分の意志で話せない。それと、なんというかな、厄介なことに体の自由も、それを言っちゃうとえっと話すことそのものは自由なんだが、お前らを倒すという事から離れた行動が出来ない。なんというか、身体の動きにロックがかかるというか。まぁ、だから、悪いな。がんばって俺を倒してくれ”


「な、なるほど、そう言うことか……曹駛くん」

「ん? ああ、そうだ、そうなるな。だから、頑張れ、満曳」


“とりあえず、口では、伝えられないが、ちょっと厄介な魔法だが呪術だかを掛けられているらしくな、仲間を裏切る以外の行動が出来なくなるらしい。だから、言葉も行動も上手く行かないし、なんというか、お前らに敵対する意思はないと伝えることも出来なかったし、お前らにとって有益になるようなことも言えなかった。すまないな。それと、麻理は大丈夫だ。麻理の回復は俺よりもかなり遅くてな。多分回復が早くなっていたのならそれは魔法の効果によるものなのだろうし、今の麻理は確かに回復するまでに時間はかかるが、そのうち生き返る、心配するな。それと、透は本当に知らない。既にいなかったのも本当だ、だから、そっちはまぁ、心配っちゃ心配だが、まぁ、きっと大丈夫だろう”


「まぁ、もっと早くその眼を使っていればよかったと思うが、あと、あれだな、麻理のはやっぱり偽物なのか」


“おっと、ここで規制がかかるか。じゃあ、続きは心の中で言うとするが、おそらく、あれもまた半分以上は魔法によるものだろう。封殺ミツバチによって封じられていた。恐らくはな。それと、さっき倒してくれって言っておいてなんだが、俺は恐らく殺されてもかけられた魔法が解けることはないだろうから、麻理が復活するまで時間を稼いで、一旦退け。そして、麻理になんか知ら対抗魔法かなんか作ってもらって、迎撃の準備を整えろ。俺の知らない場所でな。知っている場所なら転移出来ちまうからな。まぁ、何時かはつくだろうから、その時に俺を倒してくれ。ただ、もしもだ、対抗策が無かったなら、俺を封印して止めればいい。だが、まず何よりも、今は全員無事で退却してくれ”


「……まぁ、そうだね、じゃあ、分かったよ、作戦として、決行する」

「そうだな、足掻くだけ足掻けばいいさ」


“なんて、口が悪くてすまんな、今はこの程度でしか口からは言えないようだ”


「じゃあ、曹駛くん。君を倒す」

「まぁ、何度も言うようだが、せいぜい頑張ばいいさ」

「そうさせてもらうよ」


 曹駛くんの心の中を読んだところ、あと20分もすればメアリーさん事麻理さんは回復するらしい。それまで、なんとかして時間稼ぎをする。

 サキさんは、重傷を負っているし、恩は魔法が使えない以上戦えない。僕一人で、それまで戦わなければいけないのは、少し辛いが、やるしかない。

 僕は、剣を抜いて、曹駛くんに向き合った。



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