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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第七章・おいこれ・貴様は何処へ行く。
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117話・おいおい、待ってくれよ。

 ―木尾杯人―


「……暴風……大砲……」


 俺は、倒れるギリギリの体力で立ち上がった……透は……ダウンしているな。

 あの時、暴風大砲を打ち返される直前に風の鎧を出現させ纏っていたため、今、立てている。だが、これは……


「降参だ……」


 そうするしかなかった。そうせざるを得なかったのだ。

 なぜなら、目の前の曹駛っぽい土塊の兵は、ちらちらと炎を出していたから。正確に言うと、次元の裂け目みたいなものの先に、炎が見えたのだ。「降参しろ」と脅しているかのようだった。だから、降参した。

 どうせ、降参しなかったとして、勝てる見込みはなかっただろう。俺一人では極炎地獄(あれ)は防げない……透は既にダウンしている。だから、降参したのだ。


「あらら? 終わり?」

「く、悔しいが……」

「そうですか、なら、私の勝ちということで、よろしいですね」

「い、いや、引き分けだろ」

「なぜ?」

「ほら、一回お前の事倒したじゃん」

「2対1で?」


 う、痛いところを……


「女の子相手に、大の大人が2人がかりで、戦ったのに?」


 ぬぬぬ……激痛が走る個所を……ツンツンと押しやがって……精神的にも、物理的にも……

 俺は今、傷口を白い棒でツンツンと……というよりは、ぐりぐりと押されている。抉られている。


「痛いッ! 抉るな」

「はい、じゃあ止めて差し上げますので、私の勝利ということでよろしいでしょうか」

「いや、それとこれとは……いたたたたっ!」


 痛い痛い。マジで痛い。というか、血が、血が……ぶしゃーって、ぶしゃーって……


「わ、分かった、分かった。もう負けでいいから抉るの止めてくれ」

「……じゃあ、私の勝利ということで」

「ああ、分かった、お前の勝ちだ」

「ありがとうございます」


 ということで、俺達の戦いは、敗北という結果に終わった。なんだあれ……強すぎんだろ……




 ―メアリー・フィン―


 とりあえずは、この二つの魔法は成功ということでいいでしょう。十分戦えます。

 この前、屋敷で戦ったあの男の使っていた無詠唱で魔法を使うあの方法。アレを元に既に詠唱を済ませた魔法を発動する寸前のところで、一時的に別の物に封じ込めて、何か一つの要因で発動を再開させる。そういう技術を完成させたので、何個か魔法を作ってそれを封じ込めておいたのだ。それも、自衛に適した魔法を……

 私が何故そんなことをしたかというと、姫様達の自衛のためである。私達がお兄様の救出に向かう以上、姫様達にはある程度自分の身は自分で守ってもらいたい、ただ、今から戦闘力を上げるために鍛錬を積んでもらうと言うわけにもいかないので、こういう手を取った。というだけ。


「ということで、スミ姫、コイチ姫、こちらをお受け取りくださいませ」

「え?」

「これは、一体?」


 姫様方は、キョトンとした顔で数枚の紙の札と数個の黒曜石のような物を受け取った。


「それには、魔法が封じ込めてありますの……」


 私は、姫様方に、これらの使用方法と意図、何にどんな魔法が封じ込められているかを説明した。


「そ、それでは、これを使って、身を守れと……」

「強いの? これ」

「はい、コイチ姫。私達も常に誰かが姫様に付いているということが、難しくなりますので。そして、スミ姫、私なりに強力な魔法を封じ込めたつもりですが、もしも力不足でしたら申し訳ありません」


 ぺこり。私は姫様方に一礼をしてから、その場を去った。




 さて、次に向かう場所は……


「転移」


 私は光に包まれた。そして、私が転移した先は……私の家だ。ここから、また魔法の研究をする。まだ、まだ……力が足りない。

 決戦の日は……近い。だから、もっと、強くならねばならない。




 ―サキ=フォールランス=カムラ―


 私は、槍を磨いていた。

 何本も何本も磨いていた。これらの槍は、どれも一級品だが、この戦いが終わる頃、一体何本残っているのだろうか。もしかしたら一本たりとも残っていないかもしれない。

 曹駛は、私を助けてくれた。だから、今度は私が曹駛を助ける番だ。

 この槍たちには、迷惑をかけるな。協力してもらうと言うのに、一撃。たった一撃のために壊してしまうなんて。


「フォールランス……」


 自然と口に出ていた。このミドルネームは、私にあるべきものではないのだろうけど……でも、この名を持っている以上、私もまたこの技の持ち主だ。

 曹駛の技を見て盗んだ私のフォールランスは、本家に比べればまだまだ弱いものだ。だが、そんな技でも私に取っては誇りのようなものである。

 あこがれの人の技である。誇りでない訳が無い。

 私は、曹駛を救う。

 たとえ……この身が、消えてなくなっても。そもそも、この身は曹駛に救われたから存在している。あの時、出逢っていなければ、救ってもらっていなければ、私はモンスターのエサか、木々の養分となっていただろう。

 だからこそ、やっと、やっと、あの時の恩返しができる場面が来たのだ。


 救う……絶対に助けて見せる。


 私は、一人、部屋の中、心の中で絶対の誓いを立てた。


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