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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第七章・おいこれ・貴様は何処へ行く。
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114話・だけどよ、勝利は貰うぜ。

 ―木尾杯人―


 周りには大量の土塊の兵。対する俺達は二人。だが……俺達は、二人とも一騎当千の戦士だぜ。これくらい、なんてことはないぜ。


「ユクゾッ、ましこ、焔邪……解放」

「ああ、爪牙解放ッ!」


 俺達は、互いに逆方向に飛び出した。

 まずは、一撃、カマイタチを放ってやる。……やはり、予想通りだなぁ……こいつらは、数こそ多いが、一人一人はそんなに強くはねぇ。行けるぜ。


「ふんっ……フレイムボールッ!」


 火球に呑みこまれ、大量の兵が焼かれていく。おお、怖っ……あの技は使われたくないな。

 右に三体、左に二体、正面に五体。ああ、もう、しゃらくせぇ!


「おらおらおらぁ!」


 バスタード・ソードをブン回しまくった。だが、奴らはこれを止めることは出来ない。背後から近づこうと無駄だ。こちとら、文字通り闇雲に振り回しているだけだ、だから、後ろから近づこうと、そっちにも剣は向かうんだよ。それに、矢鱈に振ってるって言っても、全力で振っている。掠って見ろお前らの体は吹き飛ぶぞ。

 バゴン、バゴン、轟音を立てて、奴らは崩れていく。なんか爽快だぜ。よっしゃ、もう既に二十体は倒したぜ、このまま……って、あれ、と、止められた……今までは、止められなかったのになぜ急に……ッ!


「こ、こいつら……」


 こいつら、六体掛かりで俺の剣を止めていた。うち三体は、完全に破壊され残りの三対もどこかしら壊れていたが……確かに俺の剣を止めていた。そして、左右後方からは、同時に鎗兵が飛び掛かって来た。不味いぞ、まさか止められるとは考えていなかった。ちっくっしょうがッ!


「う……ッおおおおおりゃああああああああっっっっ!」


 強引に、俺の剣を止めた六体の土塊ごと、剣を振り回して、槍を弾いた。そしてカマイタチを放ち、周りを囲う兵を全て元の土に戻してやった。


「まだだ、まだまだだぁ、うぉりゃッ! カマイタチッ!」


 特大サイズの風の刃を敵の固まっている所に飛ばしてやる。だが、二メートルはあろう盾をもった奴らが大量に集まって、ふ、防ぎやがった……だ、だが、連発には耐えられないだろう。


「連続カマイタチッ!」


 一、二、三発目は、なんとか止められていたみたいだが、四発目で盾を壊すことに成功し、五、六、七発目は受け止めることが出来ず次々に切り裂かれた兵士たちは、土に戻っていった。

 左右後方からまた槍兵か、飽きないな。今度は、自ら仰向けに倒れることで攻撃を躱し、三体の兵は互いに刺しあって、土に戻って行った。まぁ、こんなもんか……って、違う。こいつら、囮だっ……

 仰向けになったことで気付いた。上から、一体来る。暗すぎて全く気付かなかったが、身体を逸らし間一髪、槍を躱すことに成功する。お返しに、剣を振るい、土に戻してやった。

 これは……きついな。さっきやった、奇襲もそうだが、俺の剣を六体掛かりで止めたり、カマイタチに対し盾持ちを出して来たり……こいつら、成長してやがる……それに、最初こそこいつらの動きは統一性もなく、戦い方もなっちゃいなかったし、力も微妙な物だった。だが、今は違う……


「おりゃッ!」


 バスタード・ソードを振り降ろした、だが、それを躱した敵は半身を持っていかれたものの、残った半身で殴り掛かってきた。

 俺は、それを躱しきれず、胸で受けてしまった。体が吹っ飛ぶ、肺の空気が押し出される……最初に比べて、パワーも上がっている。それに……俺の吹っ飛ばされた先には、一体の兵が槍を構えて立っていた。

 く、くっそ、こちとら肺を叩かれてきついっていうのによ……


「が……はっ……う、がぁ……ッ!」


 意地で剣を振るって、そいつを切り倒し、このピンチは何とか乗り切ったが。一人一人が強くなってきている。このままいくと、いずれ……くそ、なんでこんなに成長が速いんだ。


「大丈夫か」


 背後には透。勢いよく飛び出して行ったのはいいが、どうやら俺達は、数分もしないうちに、元の位置まで押し返されたようだな。畜生、なんてこった。一騎当千どころか、百体も倒せてないんじゃないか?


「ふむ……こいつら、学習してどんどんと強くなっていくようじゃな」

「ああ、そのようだな……それも、とんでもない速度で」


 くっそ、マジかよ。雑兵に負けるのかよ。

 そ、それは、嫌だ。絶対に嫌だ。


「嫌だ」

「む、何がだ」

「嫌だ」


 自然と口に出ていた。


「嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……い・や・だぁぁぁああああああ!」


 そうだ、こんな雑兵の集まりにやられるのだけは嫌だ。やられるとしても強い奴だ。こんな一般兵の集まりみたいなのに……


「負けたくないィィィィィィィィ」


 バスタード・ソードは、既にあちらこちらから、牙や爪やらが飛び出し過ぎていて、それが剣であるかどうかも分からなくなっていた。だが、そこからさらに牙と爪が飛び出してきて、本格的になんなのか分からない形状となった。この奇妙な形は、細長いドリアンのようにも見える。


「うおおおおおおおおおおおお」


 俺が叫ぶのに共鳴しているかのように、バスタード・ソードが震える。成長する。おいおい、これ、本当に元の形状に戻るのか? そう思うほどに原型を留めていないこの剣は風を纏い始める。

 まるで、暴風を手にしているようだった。

 暴れ回る。俺の手にあるこの剣は暴れ回る。このまま、振るえば、あらゆる物を破壊できるだろう。それほどのパワーだ。


「喰らえッ! 突風大砲」


 俺は、手にした暴風を全力で振り下ろした。すると……目の前の大地は抉れ、盾持ちごと、兵士が粉砕されていった。


「な、なんだ、これ……」


 すげぇ……やべぇ……強いぞ、これ……か、勝てる。勝てるぞ、この戦い。


「うおおおおおッ! 突風大砲、突風大砲、突風大砲おおおおおおッ!」


 連発していく。相手は、盾持ちを増やしたりとしているようだが、一瞬で破壊されるのなら、どれほど成長してもかなわない。暴風は、次々と兵士を土にしていった。


「む、それは、新技か……それほどの風なら、行けるかもしれん」


 透が何か言ってる。一体どうしようってんだ?


「な、なにがだ?」

「その風、ここら一帯に吹き荒れさせることは出来るか?」

「ああ、もちろんだが、何をするつもり……だ……って、ああ、なるほど、分かった」


 そうか、そういうことか。


「うおおおおおおおおおおッ!」


 暴風が俺の手の中を中心として、吹き荒れはじめる。

 そして、透は炎皇を掲げた。


「ハァッ! フレイムボール……分散ッ!」


 火球が現れ、上に向かって飛んで行った。そして、その火球が破裂した瞬間……大量の炎が風に乗って、一帯を焼き尽くす巨大な炎となった。


「そうだな、名付けて、火炎地獄ってか」

「ふむ、いい名だ、それにしよう」


 この火炎によって、兵は全滅したようだ。それに、夜が……終わった。ということは、一回殺したのか。この炎によって。


「俺たちの、勝ちか?」

「そうだといいがの」

「まぁ、そうはいきませんわ……あなた方は二人ですし、こちらも後もう一度の命は許してほしいですの」


 と、言って現れたのは、メアリー。どうやら、一回殺されたのは認めるらしいな。


「もう一回だって、ああ、いいぜ、かかってこい、今の俺ならだれにも負ける気がしないぜ」

「まぁ、今のこやつと儂なら、十分戦えるだろうな」

「そうですか? じゃあ、戦ってくださいな」


 そう言って、手を地に付けた。って、またなんか呼び出すつもりか? だからそれじゃ、勝てねぇってば。


「勝てない? それは、試してからのお楽しみですわ。詠唱は、もうとっくに済ませてありますの……姫に忠誠を(レジェンド)誓いし(ナイト)最強の騎士(ガーディアン)


 現れたのは、たった一体。魔力切れってことか。装備は、ビッグランスに、タワーシールドとさっきの奴らに比べりゃ豪華だが……どうせ、魔力切れを誤魔化す為の物に過ぎないだろ。

 確かに、完成度も先ほどの兵達よりは高い。だが、それもどうせまやかし。また一瞬で倒してやるぜ。


「そうですか、なら試してみてください」


 またしても俺の心を覗き見てか、そう挑発をしてきた。だが、いいだろう、その挑発乗ってやるぜ。


「喰らいなッ! 突風大砲ッ!」


 風の砲撃が、一体の兵を襲う。これで終わりだ。


 そう思っていた。だが、終わらなかった。


 その土塊の兵は曹駛の妹を連れて、消えた……いや、これは……


「転移……だと……」


 ばかな、魔法を使った? いや、まて、良く考えろ。魔法を使ったのは、曹駛の妹だろう。俺ですら使えないのに、あの土塊の兵が魔法を使える訳が無い。


「うーん、転移を見抜いたところまではいいのですが、もう一つの推理は残念。魔法を使ったのは、私ではなく、正真正銘この騎士(ナイト様)ですわ」

「……ッ」


 嘘だ。そんな訳が無い。


「嘘じゃありません、じゃあ、そうですね……この騎士を倒せたなら、あなた方の勝ちでいいでしょう」

「なっ……本当にいいのか?」

「はい、もちろん……ですが、簡単に勝てると思わないように。先ほどまでの雑兵とは違いますわよ」

「どうやらそのようじゃな……」


 そう言った、透の額には汗が滲んでいる。先ほどの火炎地獄の所為だと信じたいが……


「はい、流石ですわ、老爀斎様……この騎士には、モデルが存在しますの」


 そこまで言われて気づいた。この装備……


「あなたも気付いたようで。そのとおり、この騎士のモデルはお兄様ですわ。本物には及びませんが……本物の八割くらいの強さはもっております。どうか、気を付けて戦ってください」


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