11話・久しく、本気で戦いました。
20150319:編集しました。
今回も基本的には視点の統一だけです。
―武元曹駛―
巨大な、あまりに巨大なドラゴンだ。そう思わねぇか……
その大きさは、ビル並み。何階建てのビルかは想像にお任せするが、高層ビルって言っていいんじゃないだろうか。ああ、大きい。
人間一人でどうにかなる相手ではないだろうな。そもそも、戦いと呼べるものが出来るかどうかも怪しい。
たぶん、武装した人と、普通のちっちゃい蟻ぐらいの戦力差はあるんじゃないだろうか。きっと、人が蟻を潰すように、ドラゴンが人を潰して対戦終了となるだろう。
「本当に、面倒くさいの呼びやがったな……ミット……」
ドラゴンの咆哮は、空気だけじゃなく地面も揺らす。ああ、軽く吐きそうだぜ。
その咆哮は、爆風のように周りの物を粉砕していく。
「うるせぇな……さっきの観客の方がまだ静かだったぜ……何も壊れないしな」
タワーシールドに身を隠し、それを何とかやり過ごしたけど、物凄い手が痺れた。振動って怖いな。
ただ、今の咆哮で、ミットがやられたっぽい。ああ、本当にどうしようもないな、これ。
その辺に落ちていた鉄くずをあの大きな、ビルのようなトカゲに投げつけてやった。
「金属爆弾」
そして、鉄くずは爆発した。
この魔法は、金属を爆破させるという、名前通りの技だ。そして、その威力は対象となった金属の質量に比例する。
投げつけられる程度の質量だから、さっきミットに使ったほどの威力は出ない。
まぁ、でもダメージはちゃんと通っているようだ。メインのダメージソースになるとは全く思えないけどな。でも、幸い、この場所には奴がさっき自ら色々壊してくれたおかげで、金属がごろごろと落ちている。メインじゃなくとも、サブくらいには使えるだろ。
「お次は、これだ、電覇気」
纏うは魔力と気。属性は電気。
純度と濃度が高い魔力は、魔力単体で力を持ち始める。
宿るのは電撃。その一撃は落雷と化す。
「喰らえッ!」
さっきの戦いじゃ、見せなかった魔法だ。なんせ、これを使った所で、一般人から見たって分からないだろうし、さわったら感電するし、これは魔力による身体能力向上もあって、それこそ純粋な力の面だけでもミットを倒せるだろうし、倒していただろうからな。流石にそれは目立ち過ぎだ。また兵士になるかもしれないから、電覇気を使って倒す、その案は却下だった。
俺は、電気を纏ったランスで突きを放った。
少し皮膚を焦がしただけか。
俺は、突きを数発繰り返し、ダメージを与えていく。まぁ、効果があるかどうかは微妙だけど。だが、攻撃されるのを黙って受け入れてくれる訳じゃない。まぁ、唸ってるけど、そう言う意味じゃなくて。
ドラゴンの攻撃は全て即死攻撃。その巨体から繰り出されるのだ。ただぶつかっただけでも、ただでは済まないだろう。
そんなドラゴンが大岩のような拳を振り降ろしてきた。
これは……ちょっと躱せないかな……
ああ、もう。今日は随分と疲れる日だな。バイトの方がまだ楽だったぜ。
まぁ、躱せないなら……弾き返すまでだ。
「光雷閃槍」
このやたらでかいランスは、強烈な光を放つ。まぁ、久しぶりに使ったもんで、俺も目がやられた。かっこわりぃ。
これは、電覇気中のみつかえる技だが、俺が纏う電気を全てランスに集約して攻撃するわざなんだけど……めっちゃ眩しい。ああ、目が痛い。
とりあえず、これなら、なんとかなるだろ。
「勝負だ、羽根つきトカゲ」
俺とドラゴンは攻撃を打ち合う。
勝負は、まぁ、引き分け。
俺の攻撃で、ドラゴンは右腕を炭化させて、使い物にならなくなった。
まぁ、そのかわり、俺もドラゴンの一撃を貰った。弾き返すとか言ってたけど。良く考えたら質量的に無理。いくら突きをしたところで、それで攻撃が止まる訳じゃない。
つまり、何が言いたいかというと。
全身骨折中。身体が痛いし動かない。
「おい、羽根つきトカゲ」
まぁ、挑発くらいはしておこう。逃げられても困るからな。
「痛いだろ、お返しにぶっ殺してやる」
あ、良く考えたら言葉通じるのか?
まぁ、いいか。
俺は、再び振り降ろされたドラゴンの拳によって、潰された。
俺は、死んだのだ。
そして……
目を覚ました。
ここは、水の中か?
いや、ここは、血の中か。俺の血で出来た水溜りね。嫌だな。
俺は、少しけだるい体を起こした。
ドラゴンがまじまじとこちらを見ている。まぁ、殺したはずのやつが生きているんだから、その反応は当然だよな。
「まだまだ終わらねぇよ、逃げるなよ、羽根つきトカゲ」
俺はまたしても、通じるかどうかわからない安っぽい挑発をした。