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俺、元兵士、奴隷買いました。  作者: 岩塩龍
第六章・決戦。
107/203

105話・終焉。

 ―武元曹駛―


 殴りかかってはそれを防がれ、カウンターの一撃を貰う。それが繰り返されていた。だが、まぁ、なんというか不慮の事故と言うか必要になったからやったことだろうしどうしようもないのだが……体が急に重くなった。

 さっきのナマコが映し出した映像を見ていたから、原因はなんとなく予測できる。


 麻理だ……


 麻理がきっと、俺に魔力やら生命力やら寿命やらなんやらのパスを繋いで強制的に俺の何かをいくらか持っていったのだろう。予測としては、大分あやふやな物だが、大体あっているはずだ。

 一瞬だった。影響が出たのは……ただ、その一瞬は……タイミングが悪かった……非常にな……


 無数の棘が俺に突き刺さるそして……そのタイミングで、俺の力は一瞬失われた……だから……俺は、きっと、封印されてしまったのだろう。黒い海に沈んでいくような気分だった……




 ―炎皇・老爀斎もとい青石透―


 曹駛が、消えてからもうどれくらいしただろうか……時間的にはそんなに経っていないのかもしれないが……やはり不安ではある。伊達に長く兵士をしている訳では無い。相手の強さは見れば大体分かる。

 鷸……昔なんかと比べようがないくらいに強くなっていた。

 それは、もちろん曹駛もだが、相手もまた強いということは、勝負の行方がどうなるか分からない。つまり、二人は儂より強い。はるかに強い。だから、強いということは分かるが、どっちがどのくらい強いかなんてわからない。

 次の瞬間、光りの扉が現れた。

 つまり、曹駛の勝利だ。相手はその魔法を使えない……


「ふんっ……気を抜いたか……曹駛……」


 しかし、そこから現れたのは黒い何かを纏った鷸だった。

 鷸は、こちらに気付いたようで振り向いた。


「ああ、透か……お前とも戦うのか?」

「……いや……戦いたいところだが……遠慮しておく……」


 戦ってはいけない……戦って勝てる相手ではないだろうし、なにせ、ここは街のど真ん中だ、こんなところで戦ったら、死傷者がたくさんでるだろう。


「そうか……それじゃあ、見逃す……じゃあな」

「ま、待て……」


 だが、ここで止めずにいられる儂でもなかった。


「なんだ? まだ、何か用か?」

「ああ、もちろんじゃ……曹駛は、どこに行った……」

「曹駛……ああ、曹駛か。曹駛なら、これだ……」


 鷸が指さしたのは、黒い塊だった。その黒い塊は、鷸が今纏っている物と同じものに見える。


「それだけか……」

「……ああ」


 飛び掛かりたい衝動をなんとか抑え、振り絞った声でそう返した。


「じゃあな……転移だ」

「はい、了解しました」


 鷸は……魔法でどこかへ去って行った……

 ……選択はこれで正しかったのだろうか……だが、正しい正しくないは置いておくにしても、儂には、何も出来なかった……


「落ち込む必要は無い」


 どこからか、男性の声が聞こえた。


「お前が声を掛けてくれたおかげで、とりあえずは脱出できた」


 脱出……だが、この声は曹駛ではない。


「はっはっは……と、高笑いしている場合でもなさそうだ……剣を抜け」


 剣を抜け……? 聞き覚えのない声に疑問を感じながらも剣を抜くと……


「ああ、久しぶりだ……」


 炎のおっさんがいた。儂の見た目はまぁ、ほぼジジイだし儂と比べれば若く見えるのだが、実に言ってそれはおっさんだった。というより、誰だ。


「うん? ああ、そうか、分からんか……」

「いや、まて……もしかして……」


 ああ、確かに聞き覚えもないし、見覚えもない。ただ、一回見ただけだからな……確か、曹駛との戦闘中にあらわれた……曹駛に憑依していた精霊だ。


「イフリート……か?」

「ああ、大正解」


 そう言いつつ、イフリートは人間態になった。


「お前が声を掛けてくれたおかげで、なんとか俺だけは脱出できた……だが、問題は、この後だ……曹駛がいなければ……もはや奴らを止められる奴はいないだろう……力を貸す。だから、力を貸してくれないか?」


 イフリートは、そう言った。


「どういうことだ」

「言葉の意味のままだ。曹駛を救出する。だから、手伝ってくれないかと言っている。曹駛が、奴らに敵対すると言うだけで、人間にとっては得になるはずだが……」

「それをやって、お主に得はあるのか?」

「ああ、もちろんだ……俺は、曹駛が完全に生命活動を停止したら、俺も数日で消える。俺は、まだ消えるつもりはないのでな」



 曹駛の生命活動が停止する? どういうことだ? 死なないのではないのか?


「お前の考えている通り、曹駛は、()()なら死なない……だが、今回は普通じゃない。ちょっと厄介な封印術を受けてしまったようでな。今はクリムが頑張っているお蔭で死んでないが……下手をしたら、今の曹駛は死ぬ可能性がある。そうでなくとも、長らく曹駛から離れてしまえばどちらにせよ俺は消えてしまう。だから、曹駛を助けてほしい」

「……そうか……なるほどな」


 だが、その答えを出すのに悩む必要は無い。


「もちろん、曹駛は助け出すに決まっている」


 そんなのは、最初から決めていた。

 むしろ、有り難いくらいなんだ。力を貸してくれることがな……


「そうか、交渉成立だ。その炎皇に仮憑依させてもらうことにしよう」


 今日は炎皇の炎がいつも以上に過激に燃え盛っている気がした……


曹駛、ついに敗北……それも完全に。

次回から、曹駛救出編……

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