1話・宝くじ、当たりました。
20150207。編集をしました。
―武元曹駛―
この俺、武元曹駛は、何気なく新聞を読んでいた。
本当に何気なく。
けれども、その新聞で読んだことで、一つ重大なことが発覚した。
あまりにも現実離れした出来事で、口が勝手に言葉を発していた。
「宝くじ……全部当たっている」
小声であったが、その言葉は、静かな部屋に響くには十分なほどであった。
一人きりの部屋で、ただ一人、呆気にとられている男がいた。
そう、俺だ。
それは、紛いもなく、俺だった。
普通の宝くじが2種類。01~60までの数字を選ぶやつを7種類。
計7種類。
全部当たっている。
もちろん、数字を選ぶ方のやつは全て一等。選んだ数字がガン刺さり。
そういえば、買ったスクラッチ3種類はまだ削ってないな。
部屋に放り投げられていた、カバンの中を漁り、10枚ずつ買った、3種類のスクラッチを取り出す。
そして、財布から硬貨をだして、スクラッチの銀色の部分を擦り削っていく。
ハズレ、ハズレ、ハズレ。
また削ってもハズレ、流石にスクラッチまで当たるという頭のおかしな現象が起こることは……あ、起きた。
結果を言えば、3種とも一枚ずつ一等を引いていた。
これは、一体……。
俺、そろそろ死ぬのかな……。
まぁ、罰ゲームというか、酔った勢いというかで、宝くじ全種を10枚ずつ買わされたんだが、まさか全部当たっているとは……。
さて、どうしようかな……。
とりあえず、換金するか……。
どれくらいの金額になるんだろう。少なくとも、普通の人が、一生働かずに暮らしていけるほどはもらえるんだろうな。
換金したらどうしようかな。
まずは、引っ越し、家具の新調、あとは、そうだな……。
いざ大量の金が手に入ると、意外と使い道が思い浮かばない。普段なら、あれ食いたいこれ欲しいそこ行きたいとかあるんだけどな……。これだけ金が有ると、そう言った次元の考え方が出来なくなるな。
でも、まぁ……
仕事はやめよう。
―レフィ=パーバド―
全てが燃えていた。
村が、家が、人が、全て、皆、全部、燃えていた。
その中でも、一人、私だけ生きながらえていた。
今でも、村の人や家族を思い出すたびに、虚無感に襲われ、泣きたくなる。
自分だけ生きている事の罪悪感で死にたくなる。
それでも、私が、今、生きているのは、私が臆病で弱いからである。
死のうと思えば、何時でも死ねるはずなのに、いざ死のうとしても、怖気づいてしまい死に損なっている。
死んだ方がマシな状況になった今でも、死ねていない。
私は、自分を殺す事だけは、成し遂げられないだろう。
「7番、次はお前の番だ、せいぜい稼がせてくれよ」
7番とは私の事である。
そう、私は奴隷として捕らえられたのだ。そして、今日奴隷商や富豪が集まるこのオークションに出品される。
私は純血のエルフということで、今回のオークションの目玉となるらしい。
そんなのは全然嬉しくは無い。だって、売られるのだから。私は、既に人権をはく奪されてしまっているのだから。
会場から、「7番」という声が聞こえる。
ここで逆らった所でいいことは無いだろう。素直にこいつらに従おう。
「次は、今回の目玉であるエルフッ!! ハーフや紛い物や後天性ではない正真正銘、純血だあぁぁッ!!」
視界の売り文句に参加者は更なる盛り上がりを見せる。
「しかも、なんと、調教前! 二つの意味で、純血だぁぁッ!!」
会場は、どんどんヒートアップしていく。
金額の提示が始まると、2倍、更に2倍。
数字が跳ね上がっていく。
そして、私は膨大なお金をつぎ込まれ、個人経営の奴隷商に落札された。
私は、奴隷商に買われ、何回も調教を受けそうになったが、その都度やってくる調教師を追い返してやった。
私を落札する際に大金を使ってしまい、魔封じのアイテムを買えなかったのと、私の価値を落とさないためにも、あまり乱暴なことが出来なかったのが功を奏したのか、私はまだ、何もされずに済んでいる。
とは言っても、魔封じに比べまだ安い対魔法性能を持った拘束具は、私の腕と足首に装着されていて、それを破壊することは出来ない私は、逃亡を許されていない。
けど、いつか絶対にここから、出て自由を手に入れる。
絶対に。
―武元曹駛―
俺は仕事を辞めて、土地を買い、家を建てた。それも、大きな家を。
あと、急にモテ始めた……という事はなかった。
別に金が有っても、物凄くモテるという訳ではない。ただ、仕事をやめる際、俺に宝くじを買わせた同僚になじられたりはしたが……。
それにしても、一人で広い家というのは、どうも落ち着かない。
メイドでも雇おうかとも思ったが、万が一、億が一、金が尽きたら、を考えると、メイドはあまり好ましくない。
働いて稼いだお金じゃないので、絶対にお金が底を突くことはないと、言えないからな、永続的な支払いはあまりしたくない。手続きとかも面倒だし。
でも、今、現時点では、そんなこと気にしなくてもいいほどのお金が、俺の手元にある。そう、今の俺は大富豪の一人なのだ。ならば、少しくらい悪いことをしてしまってもいいんじゃないか?
「ふふふ……」
一人、部屋で笑う男がいた。
不気味に笑う男がいた。
俺だ。
そして、ちょっと悪い事とは……
「そう、奴隷を買うんだあぁぁぁ!!」
あまり変化は有りません。
幾つかの誤字を改めましたが、打ち直しのためまだあるかもしれません。
めっちゃ、誤字がありました。すいませんでした。