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結局、ちっとも眠れないまま朝を迎えた。少しでもうとうとすると、同じような悪夢を見てしまう。
ぼんやりした頭で、今日が土曜日なことに感謝した。学校、休みでよかった。
「理恵、あんたバイトは?」
母の何気ない言葉が、ちくりと胸に刺さる。クビにされたんだよ、お母さん。
でも、そんなこと言えなくて、
「改装工事でしばらくやすみ」
「そー、珍しいわね。じゃあ、ちゃんと勉強しなさいよ。あんたは、いつもいつもバイトバイトってね」
そのまま始まった小言を聞き流す。
でも、考えてみたら、まったく予定のない土曜日なんて久しぶりかもしれない。悲しいことに。
勉強するから邪魔しないで、と母にいって、部屋にひっこむ。
床に座り、ベッドに背中を預けるとクッションを抱える。
ちゃんと考えなくっちゃいけない。
英輔さんが言っていたことの意味。化け物と一緒にいる、という意味。狼男が人を喰う、ということ。
ちゃんと考えなくっちゃいけない。
でも、考えようとするとあの悪夢の映像がでてきて、怖くなる。あんなの、夢だとわかっているのに。
考えなくちゃ考えなくちゃと思っているだけど、無意味に時間は過ぎていく。心が焦るけれども、気持ちは先に進まない。
そうしていると、
「理恵、お客様ー」
母の声がした。
お客様?
部屋のドアをあけると、ドアの前で母がなんだか不思議そうな顔をしながら、
「大鎌さんって知っている? なんだか、美人のお姉さん」
おおかま……? なんか、聞いたことがあるような…….
「あ」
カマイタチの人?




