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第六章 いつかの約束

俺達は合宿の目標であった、祭りでの魂集めが終わり、みんな一息ついていた。

「これであとは、旅館の温泉に入って、ずっと旅館に居たことをアピールすればいい。それで、俺たちのアリバイは完ぺきだな、そして、明日の朝、怪しまれない時間帯に家に帰ればいい、そうだな……今日は合宿最後だし、みんなで遊ぶか!」

「待ってましたー!」

「楽しみですね」

「オカ研での勝負は負けてばっかだからな、ここで挽回して、僕のすごさを見せてあげるよ」

「ふふふ、こういうのもいいですね」

「まあ、とりあえず、お風呂だ、上がってきたらやるぞー!」

 そして、みんな意気揚々とお風呂に向かって言った、ちなみにこの時間は男女別々であった。

 湯船につかっていると、ゾフィー が声をかけてきた。

【お主の復讐も成功して、魔力も集まって万々歳じゃな】

【ああ、思ったよりみんなが成長しているのが大きかった】

【確かにの、相馬、合宿を通して改めて思ったのじゃが、お主も含めてみんな才能の塊じゃ、仲間は大事にするのじゃ】

【それは、もちろんだよ】

 相馬は笑って答えた。

【まあ、明日の朝にはここにたくさんの魔法使いが調査のためやってくるだろう】

【そうじゃの、それまでに家に帰れば足もつかんだろうし、相馬の計画は完ぺきじゃ】

【ははは、作戦は成功するためにあるんだよ】

 そんな事を話しながらゆっくりとお風呂をあがった。

 俺の部屋には既にみんなが集まり、ジャンガをしている。

「ここを抜くとしおりんは、次のとりにくいでしょー」

「そんなことありません、ここがあります」

「高貴なる僕はこの真ん中を引く」

「あらあら、じゃあ私はここを」

「ありゃ? 一周回ってきちゃったー どうしようー あ、そうま、いい所に、次、そうまの番ね」

 遥は都合が悪くなったんで、相馬に次の番をまわした。

「いきなりかよって、おい! なんでこんな曲がってんだよ」

 ジェンガはピサの斜塔よろしく、傾いていた。

「それは、いきなり、遥ちゃんが『これじゃ、面白くない!』とか言って自分の番で曲げたんですよ」

「片手で曲げちゃいけないってルールないもんねー」

「まあ俺は、上のほうの、この部分を取るがな」

 相馬はするりと棒を抜いた。

「あ、ずるい、私も上のほうを取りたい、けどもう無いな、仕方ない、ここは一か八かでこの間を、えい!」

 遥が抜いた瞬間、ガラガラと音をたててジャンガは崩れていった。

「あららー 私の負けかー 残念、次は何するー?」

「まて、貴様は負けたら罰ゲームをするとか提案してただろ」

 すぐさま、話題を変えようとした遥かに緑葉が突っ込んだ。

「ぐぬぬ、逃げれると思ったんだけどなー まあ、いいや、手品をしよう」

「手品ですか? どんなのですか?」

「カップ&ボール!」

 遥がそんな高度な物ができるとは思えないが。みんな静観してみることにした。

 そうすると、旅館に備え付けられてる。茶碗と一〇円玉を持ってきた。

「……それ、コインだぞ」

「じゃあ、カップ&コイン!」

 雲行きが怪しくなり始めた。

 そして、遥はコインをテーブルに置いて、そしてそのあと、上から茶碗を乗せた。そのときひゅっと風の音がした。そして、次に茶碗をあけると、一〇円玉がなかった。

「どうー? すごいでしょー」

「「「「「……」」」」

 みんな、呆れた顔で見ていた。そして、

「ポーカーとかどうでしょう」

「いいですわね、やりますわ」

「ふふふ、私、ポーカー苦手なのよ」

「……美鈴先輩そんなこと言ってポーカーかなり強いじゃないですか」

「あらあら、ばらしちゃだめよ、相馬くん」

 戦場で力を合わせて戦った5人は、今度はゲームで争って盛り上がっていた。


11頃、そろそろ終わろうと俺が言って、ゲーム大会はお開きとなった。

 結局、ポーカーは先輩の一人勝ちだった。

 みんなそれぞれの部屋に帰って行った。一応のため鍵は閉めておいた。そして、疲れのためか俺はすぐに眠ってしまった。しかし、本当の戦いはここからだったのであったのだ。

 時刻は午前2時を指した所だった、強力な魔力のぶつかりあいの余波でみんな目が覚めた。すぐさま、みんな俺の部屋に集まった。

今のは、何だ? もうこのあたりには魔法使いは居ない筈だ……まさか、もう、新手が来たのか? いやでも、魔力の方向は祭りの所じゃない……情報が少なすぎる。

「確認だが、魔法使いが使った通信端末用の札は起動した形跡はなかったよな?」

「そうですね、栞が壊したあと、使ったかどうか見たけど、使ってないですね」

「もうひとつ、誰かが警察に連絡してそれが魔法使い届く可能性は?」

「ありますが、どの教団が受け持つのか決めるのに一日はかかるはずですわ」

「なるほど、ということは、今回のこととはまた別件で何か別のことが起きている可能性が高いな、いずれにせよ、俺たちが狙われてるかどうかを確認しなければいけない、俺たちの顔が割れてないかどうかも知りたい、だから様子を見に行こう」

みんな、真剣にうなずいた。

「一人だと危ないのから、みんなで一緒に見に行こう、もし祭りの事件の犯人をターゲットにしていたらこの旅館にすぐさま戻り一般客のふりをする。別件だったって場合も同じだな、様子を見て逃げる」

「要するに、どちらにせよ逃げるのですわね?」

「まあ、戦ってもメリットはないからな」

「正直、ばれた可能性はないと思うが、もしものためだ、完全武装で行こう」

 みんなは祭りの時と同じように屋上に空間の穴を使って行き、そこで変身をし、大きな魔力のぶつかりあいのあった方向へ飛んで行った。

 場所は、祭のあった場所のほぼ真反対の位置をした、やや開けた海岸であった。そこには二人の姿があった。

 片方は、背が同じくらいで年齢は俺よりも一つ上くらいに見える女性。耳にかかるように三つ編みをしており、目が切れ長で、青の、首と両手首がキュッとなっておりワンピースのようなドレス、サーキュラードレスというらしいものを纏っており、背中からは機械でできた、三角形の翼のような物が生えており、周囲には9つのよくわからない機械が浮かんでいる。なんといっても目立つのはとても大きな銃器を二つ構えていることである。

一方、もう片方も、背が同じくらいに見えるが、こちらは女性というよりも少女の方が言葉としてにあうだろう。白いベレー帽を被っており、まるで海のように澄んだ青い髪をしており、そして背中から白い天使のような羽を4つ生やしていて、それに似合うような白いゴスロリを身にまとい、小さな鞄を持っていた。そして、二人に共通する点として、お互い無表情だった。

二人は、疲弊していた。どちらかと言うと、白いゴスロリの少女のほうが肩から血を流していて、劣勢に見える。

 美鈴さんは呆気にとられてみていた。

【あの二人はなんだ? 片方の少女は白い羽を生やしているからまさか天使なのか?】

【いや、あんな天使、聞いたことがないですね……それに天使なんて存在はそう簡単に出てくるものじゃないんですよ】

【うちもあんな妖怪みたことないね】

 相馬と緑葉は二人で意見を出していたが、結局正体はわからなかった。そこで、ゾフィー が口を開いた。

【白い女の子のほうは、間違い無い、パトリオットじゃ!】

 そのとき、事情を知ってそうなゾフィー に美鈴さん以外が心の中で注目した。

【パトリオット? 誰です。その人?】

 栞が不思議そうに言った。

【わらわが別の世界で魔王じゃったのはしっておるじゃろ? その時の側近のⅫローズ(トゥエルブローズ)の一人じゃ】

【ということは、もう片方はエトワールか!】

【その可能性が高いのう、この世界に逃げたパトリオットがたまたまこの世界にわらわを追いかけてきて、エトワールに見つかったのじゃろう、見つかった原因はわからんがのう】

 ゾフィー は苦々しげに説明した。そして、小さい声で言った。

 しかし、そのときずっとだまっていた。美鈴さんが口を開く。

【ゾフィーさん、その申し訳ないですが、もう片方は私が作ったアンドロイドのフラムです。半年前に私のもとから逃げ出して。その後、行方知れずだったのですが、こんなところにいるなんて、てっきり相手が天使で断罪されていると思ったのですが、ゾフィーさんの仲間だったとは……】

 美鈴さんはとてもつらそうにしていた。

【二人とも仲間なら、戦いを止めることができるのでは?】

【ごめんなさい、相馬くん、フラムはもう私の手から離れていて自分の意志動いてます。それを止めるなんてできないんです】

【パトリオットの方はわらわが声をかければすぐとまるじゃろう】

 二人の意見を総合するに、どうやらフラムのほうを止めなければならないようだ。

【……相馬、このすこしでも目立ちたくないなか、無理難題を言ってるのは、百も承知じゃ、わらわは仲間を見捨てとうない、助けてくれないかの?】

 とゾフィー。

【相馬くん、なんとかして、フラムを救うことはできませんか?】

 と美鈴さん。

【お前たちは何を馬鹿な事を言ってるんだ?】

【やはりそうか、わがままを言ってすま……】

 ゾフィー は悲しそうな声で言ったが、それを遮るように言った。

【何を言ってるんだ、逆だよ。ゾフィー、二人の仲間は俺の仲間も同然だろ? 美鈴さんのほうは元仲間かもしれませんが、なら助けるのは当たり前のことだろ?】

 相馬ははっきりと宣言した。

【そうです。ゾフィーさんにも、魔族にしてもらった恩がありますです。それに美鈴さんも仲間です。助けることに遠慮はいらないです」

 栞は堂々と言った。

【うちは相馬の頼みだし、なによりも仲間のが助けを求めてるなら、それに応えなくちゃ」

 遥は元気に言った。

【貴様は、ほんと愚かだな、あ! もちろん、相馬さんはとても考えた末の発言だと思いますが、助けることについては相馬さんが言うので手伝うが、助けるには相当厳しいぞ】

 緑葉は賛成しつつも、難色をしめしていた。

【ほら、ゾフィー、美鈴さん、俺たちはもうこの世界では一人じゃない、信頼できる仲間がいるんだ。一緒にパトリオットとフラムを助けよう】

【ありがとうみんな】

 泣きそうになる美鈴さん

【お主ら……わらわが魔王として全世界に君臨したときは盛大に祝ってやるわい】

 素直にお礼を言わないゾフィー であった。

【よし、みんなの決意も聞いたところだし、まずは勝利条件を確認したいが、

1 フラムの無力化または戦意喪失

2 全員無傷

3 それを異変に誰かが異変に気付き、こちらの様子を見に来る前に行う

 この3つだ】

【相馬さん、ひとつ提案が、フラムはアンドロイドだから、破壊して美鈴さんに作り直してもらうのが、いいんじゃないでしょうか?】

 【緑葉くん、それは無理なの、あの子にも痛みはあるし、仮に完全に破壊してしまい、作り直したとしても、そこに宿るのは新たな人格、もうそれはフラムじゃないわ】

 【そうか、ですが、相馬さんは簡単におっしゃってますが、敵を無力化って言うのは殺すよりも100倍難しいんだ】

 緑葉はそう言って、難しい顔をし始めた・

【何を難しいこと言ってるんだ? 答えは決まっているし、できるかできないかじゃなくて、やるんだ! どんなに難しくても、どんなに絶望的でも、どんなに危なくても、やるしかない!例え、どんな卑怯な手でもな】

 相馬ははっきりと答えた。

【すいません、相馬さん、また僕は同じような過ちを】

【いいんだよ、みんなそうやって成長していく】

【相馬さん……】

 緑葉は深く感動していた。

【とりあえず、パトリオットの合流し、救出しよう。そしてフラムの分析をする、そこで一旦、俺と緑葉は引いて作戦を練って、もう一度向かう、その間の足止めは頼む、作戦は以上だ】

 相馬は息を吸い宣言した。

【作戦開始!】

【【【【はい!】】】】

 相馬たちが決意をしたそのころ、パトリオットは苦戦しいられていた。

「く……なかなかやる……」

「そちらも魔物としてはなかなかです。でも、私の方が上であります。」

 パトリオットが肩で息をしている。

「……ゾフィーを見つけないと……だから……おまえを倒す」

「口ではそう言ってますが、あなたは肩に傷を追っています。よって最初のような力は出せない筈です。つまり私を倒すのは不可能です。QEDキューイーディー

 フラムは淡々とした口調で言い放った。

「でも……やる」

 それに対してのパトリオットの返事は単純だった。

「非効率なことは嫌いであります、とっとと自分に駆除されるであります」

 そういうと、空中に浮かんだ9つの補助戦闘装置(ACU)がパトリオットの周りに瞬時に移動しレーザーを打つ、それを空中に羽ばたいて避けたところをフラムが両手に持ってる馬鹿でかい兵器アハト・アハトを乱射する。

「く……避けきれない……あと何回防げる……?」

 そのとき、パトリトットの前に空間の穴があいてその銃弾の雨あられをを飲み込んだ、次の瞬間、フラムの後方に穴が空きそこから無数の銃弾が突き刺さって行った。しかしフラムの周りにはいつの間にか3つの補助戦闘装置が戻ってきており、電磁派を張った、それにすべてはじかれフラムの周りの砂浜は穴だらけになった。

「む、誰ですか? 自分の任務の邪魔をするのは?」

 フラムは6つの補助戦闘装置を空中で回転させる。どうやら、探知の行動らしい、そして相馬達を見つけると同時にそこに銃弾を放った。すぐさま相馬達はパトリオットの前に移動した。

「さすがにばれるか、助けに来たぞ、パトリオット!」

「あなた……誰……?」

 パトリオットは首をかしげていた。

【わらわじゃ、ゾフィーじゃ、助けに来たぞ】

【!……ゾフィー……助けに来てくれたの?】

 パトリオットは震えていた。

【感動の再会は後だ、まずはあのフラムとかいう奴を倒してからだ】

【了解……】

 フラムはこちらの一人美鈴さんを見て。

「元マイスター、なぜ自分の邪魔をするのですか? 自分はNSOに邪魔になる存在を消しているだけです。それともマイスターから逃げ出した自分を処分しにきたですか?」

「違うわ、もうNSOと私は関係ないわ! だから、フラム戻ってきて」

 美鈴さんは無理だと分かっていても、わずかな希望に駆けるのだった。それも無慈悲な言葉によって断られる。

「無理です。もうあなたは元マイスター、自分を作っておきながら放っていて、研究ばかりでしていた人に興味はありません。今は自分の意志で動いているのであります。QED」

 フラムは淡々と説明している。しかし、その言葉の節々に悲痛の叫びが相馬には聞き取れた。

遥は無視して、風による、ものすごいスピードの刃をクロスするように飛ばした。しかし、戦闘補助装置に何もなかったように防がれていた、その隙を見て、遥の姿が一瞬で消えた。いや、あまりにも早すぎて見えなかったのだ。そして、フラムの胸を狙った。だが、フラムも負けないほどのスピードでその羽扇子をいつのまにか握られていた切れ長のナイフで防いでいた。遥はすぐに手を引っ込め元の場所に戻ってくる。そのとき、フラムに握られていた、もう片方の手に握られた同じようなナイフが中を切り裂く。

「やはり、硬いですね。」

「自分のスピードについてきたのはマイスター以来、やっかいですね」

 フラムは相変わらず無機質な声である。

 次に、緑葉がグリモワールを広げ詠唱しだした。最初から全開で行くつもりのようだ。

「雨の降りし大地、雲から落ちし雷よ、汝は緑の代行者なり、天と地を結ぶ世界樹よ、我にその怒りを与えたまえ、深い緑の雷」

 前に栞を襲った緑の光でできた濁流がフラムに襲いかかった。しかし、フラムは9つの補助戦闘装置を前に突き出した。そうすると、その光の軌道が向きを変え、攻撃準備をしていた美鈴さんに襲い掛かる。

「!……」

避けることもできたが、はっと気づきその濁流をとっさにリュックから取り出した傘とアンテナを足したようなので防いだが、耐え切れず。バキバキと音を立てて壊れ貫いた光が美鈴さんに襲い掛かった。そして、美鈴さんは倒れた

「美鈴さん! なんで避けなかったんで……そうか、後ろに遥がいたのか、くそっ僕の攻撃が利用されるなんて」

遥は愕然としている。

「緑葉! お前は悪くない」

パニックになりかけている、緑葉を宥める。

「一人やれたと思ったんですが、さすが元マイスターと言ったところですか。QED」

 フラムの言葉に、相馬は飛び出しそうになったが、栞に止められた。

 そして、二人が時間を稼いでいる間に、パトリオットは小さな鞄から、無数の人形をできるだけ取り出しを空に投げた。パトリオットは人形遣い(ドールマスター)だった。人の頭くらいの大きさの人形だが手には、剣、槍、棍棒、あげくは銃まで持っていた。

「今度はこっちの番……」

 そう言うと人形たちが一斉にフラムに突っ込んでいった。フラムが作った電磁障壁を人形たちが剣などで刺し穴を開けた。次の瞬間人形が爆発した。フラムの頬に一筋の血が流れた。

 「くっ……あとから来た連中とは一味違います。自分の電磁障壁を破り傷をつけるとは思いませんでした。自分も本気を出します」

 そう言うと、フラムはポケットにある黒い穴(美鈴さん曰く、拡張空間というものらしい)にナイフをしまうと、にゅっと、アンチマテリアルを二回りぐらい大きくしたものを取出し、こちらに向ける。

「まずい、何か来るぞ、一旦……」

退くぞ! と言いう前に発射穴から球が飛び出した。

 緑葉は美鈴さんをだき、元居た林の方へ逃げた、ほかのみんなは思わず。空に飛んで回避した。しかし、フラムは追撃してこずこちらをじっと見ている。

「まずい、罠だ!」

「もう遅いであります!」

 次の瞬間、真下に到着した球が円状に展開した。

「嫌な予感しかしないです。一旦退くです」

 栞はそう言ってみんなを空間の穴に引きずり込み、そして閉じた。

「ちっ、逃げられたであります」

そう呟いたあと、すぐに、真下から爆音がし、数え切れないほどの鉄の釘が相馬達の居た場所に襲ってきた。

 そのころ、みんなは先ほど居た林に移動して、栞が作った。小さな空間の部屋の中に潜んでいた。

 みんな、美鈴先輩の安否を気にしていた。

 「大丈夫よ、みんな、それに、あの子を放っておいたつけでもあるのよ、私はしばらく動けそうにないわ……」

 美鈴先輩は力なく笑った。直接ではないが怪我をさせてしまった緑葉は歯噛みをしている。

「僕は美鈴先輩の治療に専念するよ、いいですか? 相馬さん」

「そうだな、しっかり治してくれ」

 相馬は緑葉に治療を頼んだ。

「危なかったです。あいつ強すぎるです」

 そう栞が切り出し始めた

【そうじゃの……祭りで魔力を集めたといっても。まだ、そこのパトリオットに及んでないようじゃしの】

「しかも、それにあいつ、うちの速度についてきたよ、それに探知するのが速いから逃げるのもむずかしそうだね」

 と、遥は難しい顔をしていた。

「しかし、あいつはどれだけ兵器を持ってるんだ。それがわからないと対処のしようもないぞ」

 相馬がそう呟いたとき

「あの子は両ポケットに拡張空間、いくらでも入る倉庫みたいに思ってください、をもっているので武器は正直数えきれません」

 美鈴さんが苦しそうに説明をしてくれた。

 「今回使ってきたのは、ドイツ軍が使っている本来は戦車砲のアハト・アハト、周りに浮かんでいるのは補助戦闘装置、それと、最後に爆発したのはフレシェット弾を改造したものですね」

 説明が終わると、自分の役目が終えたとばかりに、気を失ってしまった。相当気を張っていたのだろう。

「説明ありがとう、美鈴さん今は休んでいてくれ、さて問題なのは、補助戦闘装置だな、これが一番やっかいだ、防御にも攻撃にも探知にも使ってくる。これをなんとかしないと、こっちは後手後手だ」

 みんな、アイデアが浮かばないのか、押し黙ってしまった。

「俺が近づけたら、額に手を当てて契約を結ぶと無力化できるのだがな……」

「でも、あいつの補助戦闘装置を無効かしないと無暗に近づけないです、それに近づくと警戒してきて距離を取る筈です」

「そうだよな……いや、待てよ……でもこれしかないな、よし、一か八かだが、いい作戦ができた」

 相馬はみんなに作戦を伝えた。

「そんな、相馬が危険すぎです!」

「そうま! うちは反対だよ」

「ゾフィーと相馬が死ぬのは……駄目」

 みんな、俺の作戦に乗りたくないようだ。

「だが、あいつを倒す方法はこれしかない、みんな俺を信じてくれ」

 また、みんな黙り込んでしまった。そのとき、沈黙を破ったのは遥だった。

「……いいでしょう、そうまを信じることにします。でも、命は大事にしてください」

「遥ちゃんもそう言ってますし、他に手もないです! 私もそれに乗るです!」

 栞もそう言った

「そうだね……気を付けてください相馬さん」

 みんな、俺の決意をくみ取ってくれたのか賛成してくれた。

「よし、あとはあいつに隙を作ることが必要なのだが」

「私……もうすこし、大きい呪文使えます……」

 あとで、ゾフィー から聞いたが、パトリオットの属性は魔物にはめずらしく、光、らしい。

「ほんとか? じゃあ、それで決まりだな」

「その前に肩の傷を治すです」

 小さく呪文を唱えると、水の精霊みたいなのが現れて、水の加護とでも言うのだろうか? 青く光ると、少しづつ傷がふさがっていくのだった

「ありがとう……」

 パトリオットは照れ臭そうに言った

「よし、反撃開始だ!」

 そう言うと、みんな一斉に空間から出る。林に緑葉と動けない美鈴さんが残り、ほかの人は俺と遥はフラムの前に、パトリオットと栞は後ろに立った。

「……逃げずに来てくれますとは、探す手間が省けましたであります」

 パトリオットの方へ振り返りながら言った。

「行く……」

 そういうと、パトリオットは詠唱を始めた。一瞬遅れてフラムも詠唱を始めた。それと同時に相馬はフラムにありったけの力を込めた魔弾を飛ばした。

「天におられる我らの神よ、地上に侍りし愚民どもを一掃せよ」

「後ろから攻撃しても無駄」

 フラムは3体の戦闘補助装置で魔弾をはじいた。そのせいで、隙は生まれた、次の瞬間、天に穴が空きフラムに太い光の柱が落ちてきた。

「くっ、きゃあああああ!」

 フラムは叫んだ。砂埃が宙を舞った。

「やったか?」

 砂ぼこりが晴れるとそこには、肩と膝に血を流しているフラムが立っていた。

「痛いですね、そこの人形遣いを先に倒そうとしたけど、先に邪魔な周りを片づけるであります」

 そういうと、フラムは俺と目が合うと同時に、手のひらに電気の球体作り、圧縮した。次の瞬間、一本の光になったそれは、相馬に向かってあり得ないスピードで飛んで行った。致命的なことに相馬は反応が遅れてしまった、そして、相馬はばたりと崩れ落ちた。

 みんな唖然としてる

「相馬……? ねぇ、嘘ですよね? こんな志半ばで死ぬなんて相馬らしくないです、ねぇ、嘘だと言うです……うわああああああ!」

 栞は怒りに身を任せ、がむしゃらに血の刃をぶつける。しかし、それはフラムには当たらなかった。

「そんな非効率的な攻撃当たりません、……!」

 その次の瞬間、空気が重くなった。いや、よく周りを見ると超速で風が渦巻いて、中を高圧にしているようだ。そうすると、フラムは栞とパトリオットを含めてめちゃくちゃな圧力が襲い掛かった。栞はとっさにパトリオットを連れて、遥の後ろに下がった。

 遥は今までに見たことのないような、無表情で涙を流していた。

「お前は……お前だけは! 私が倒す!」

「……油断した。補助戦闘装置がすべて破壊された、でも、それだけ」

 そして、遥はこんどは風を今度は逆にすべて止め、自分と一緒に後ろに風を従え、突っ込んだ。フラムはそれをナイフで受け止める。そこで音速の斬撃の応酬が続いていく

「あなたは冷静さを欠いている。自分の相手じゃない」

 そういうと、思いっきり羽扇子をはじきかえし、蹴りを入れて吹っ飛ばした。

「がはっ……でも、負けるわけにはいかない!」

 栞と遥が飛び出そうとしたところをパトリオットが止めた。

「二人とも……まずは落ちつくことが最優先」

「何で……何であなたは冷静で入れるの、そうまやゾフィーのことつらくないの」

 遥が大声で叫んだ。

「つらくないわけない!……でも、ここで死んだら……二人の命が無駄になる……」

 パトリオットは努めて冷静にしゃべっていたが、怒りで声が震えていた。

「! それでも、相馬がいないと作戦が成り立たないから……私が、頑張らないと、でも」

 いまにも泣き崩れそうだった。

「話は終わったでありますか? 待っている自分に感謝するであります」

「次は仲間を殺させない……」

 そういうと、鞄から熊ぐらいの大きさの人形を遥と栞の前に配置した。

 「仲間に魔力を割く余裕があるのでありますか? それでも自分は容赦なく行くであります」

「問題ない……」

 フラムはさっきの高圧を凌いだポケットからアハト・アハトを取出し乱射した。同時にパトリオットも空中に魔法陣を浮かばせ、同じく光の矢を撃った。お互いに打ち消しあったが、遥達に魔力を割いた分、数発残った。それがパトリオットの右足と左腰を貫いた。

「ぐ……」

 パトリオットは声を上げ崩れ落ちた。

「……これまでですね、QEDですね」

 そう言って先ほどとは違うアンチマテリアルを大きくしたような物を構えた。

「さて、そこの3人を始末したら、元マイスター達を始末し」

 持っていた銃器を落とした。

なんと、真後ろに急に相馬が急に表れ、フラムの額に手を当ててるのであった。

「汝、我との契約、一つ! 眠れ!」

「何が起きたのです……か……」

 フラムは言葉の途中で眠ってしまった。

「なんとか、勝てたか……」

そして、栞がつかつかと俺に歩いてきて、おもいっきり頬を叩いた。そのあと泣きながら抱き着いてきた。

「良かった、本当に良かった……どうして生きていたか知らないですが、生きていてよかったです。でも、心配かけすぎです! ほんとに死んだと思っていたのです!」

遥も今まで我慢していたのか堰を切ったように泣いていた。

「でも……なんで生きてるの……」

パトリオットが素朴な疑問を投げかけてきた。

「うむ、魔弾を打ったとき、あいつがこっちと目をがあっただろ、そのとき俺が幻術を使って俺が貫かれて倒れる姿を見せる。そのあと、みんな俺を見てきたから、そのときみんなにもかけた。敵を欺くにはまず味方から、もし、みんなが俺が生きていると知っていたら、フラムは気付き、簡単に解かれておしまいだっただろうけどね」

「そこまで考えているとは……さすがゾフィーが選んだ人」

パトリオットは納得はしているようだった。

「でも、あんな危ない真似は今後禁止です!」

「そうまは無茶苦茶です。計画的な作戦は好きですが。博打の要素が多いので駄目!」

 それから、しばらく二人からの攻撃に会うのだった

 フラムとの戦いが終わって、すっかり完治した美鈴さんとそれを直していた緑葉をつれて宿に帰る途中、遥が口を開いた。

「でも、なんで今回に限ってそんな危ないことしたの?」

「いつもは安全な橋を渡ってるよ。それに今回はパトリオットを助けるためにしかたないことだった、だから体を張れたんだよ!」

「私のため……」

「そうだ、お前のためにだ!」

「そう……ありがとう」

 パトリオットの無表情の頬がすこし赤く染まった気がした。

【まあ、おかえりじゃ、パトリオット】

【ゾフィー……ただいま……生きてて良かった】

【そう簡単にくたばらんわい】

 ゾフィー は自慢げに言った。

 そんな話をしていると、旅館の屋上に着いた。

 みんなまず、緑葉に怪我を治してもらい、それから変身を解いた。パトリオットは変身を解いても背中の羽以外、余り変わらなかった。そうして、空間の道を通り俺の部屋に戻ると。時刻は4時を過ぎていた。

 そして、寝ていたフラムが起きたのだった。もちろん美鈴さんによって、いろいろ道具を出せないようになっている。

「……ここはどこですか? 自分は負けたのですか?」

「そうだ、あなたはここで死んでもらうよ」

 遥が当初の目的とは違うことを言い出した。

「そうですか、反逆したアンドロイドは始末される。当然の処遇ですね」

 そのときみんなに向かって頭を下げた。

「おねがい! この子を許してあげて、なんか事情があったはず。昔はすごい心優しかったの、何があったのか説明して」

「その、要求には答えられません」

「フラム! お願い!」

 美鈴さんの熱にあてられたのか、フラムがしゃべり始めた。

「……自分はマイスターに見捨てられたと思って。自分探しの旅に出て。それで、すこしでも誰かに認めてもらう為にNSOにあだなす敵を排除していたのです。それでも、やはり、誰にも気づいて貰えず、終いにはNSOにも厄介者扱い、でも、自分にはそれ以外にやることはなかったであります」

 フラムは説明し終えると、哀愁を漂わせる表情をした。

「そう、そんなことがあったのね……」

 美鈴さんが寂しそうな声で答えた。

「さて、フラム! 俺はお前の力、正直すごいと思っている。ゾフィー の側近だったパトリオットと互角に戦っているのはすごい、美鈴さんも事情があったんだろうし、厄介者なんて俺はそうは思わない、寧ろ力になって欲しい」

 場の空気を変えるため、大きな声で言った。

「でも、自分はあなたを殺そうとしたでありますよ!」

「結果的に俺は生きている。誰も死んでいない、それが結果だ」

 はっきりと宣言した。フラムは戸惑いを隠せないでいた。

「でも、自分は仲間にひどいことをしたから……無理でありますよ」

 そして、諦めた。そして、相馬は怒った

「そこで諦めるのか、今までたくさん努力してきてここで諦めるのか? ひどいことしたと思ってるなら、謝ればいいじゃないか! みんな、フラムがそんな事情あったなんて知らなかっただろうし、みんなに謝るんだ! いいか、いつでもやり直せるんだ……やり直せないことなんてのは、ほとんどないんだよ……どうだ、決めるのはお前だ、フラム!」

 フラムは零れた涙を拭うことなく答えた。

「ここまで、真剣に接されたのは初めてであります……相馬さん、マイスター、それにみなさん、自分が周りが見えなくてみんなを傷つけてしまってごめんなさい」

「よく言った。みんなそれで許すよな?」

 相馬はみんなに問いかけた。

「まあ、そうまも生きてたしいいよ」

 遥が笑って答えた。

「相馬がそう言うし、つらい思いしてたなら、しょうがないですもんね」

 うんうんとうなずきながら栞が。

「僕も同じような経験したから、許すよ、ただし僕のことは緑葉様とよ……」

「わかったわかった、フラム、こいつは緑葉でいいからな」

 緑葉はえらそうに言った。最後の方の言葉を相馬は遮った。

「私は、許すも何も、原因が私にあるのだから、こちらこそごめんなさい」

「マイスター……」

 美鈴さんとフラムとの間にはまた元の関係が戻り始めていた。

「さて、愚問かもしれないが、フラム! 俺たちの仲間になるか?」

「もちろんです。マスター相馬」

 そして、パトリオットを含めると、6人目の仲間ができたのであった。


 そのあとは、いろいろと今までのこととこれからのことをパトリオットとフラムに聞かせると。

「私は……元からそのつもり」

「了解です。マスター相馬」

 二人とも理解したようだ。

「そういえば、パトリオットはゾフィー の側近だった。それで、これからは俺たちの仲間ということにもなる。あと、リーダーは俺とゾフィー だから、作戦なんかの指示は聞いてくれ」

「相馬がそういうなら……改めて、みんなよろしく……」

「その、相馬が言うなら言うってどういうことか説明してくれるかなー パトちゃん?」

「パトちゃん……?」

「君の呼び名だよ」

「あなたは不思議な人ね……」

「良く言われるよ」

 遥は話がはぐらかせることに気付いていなかった。

「そうだ、あの後、他の11人はどうなったのじゃ?」

「まず、私とリリアは傷を治してもらいに……ラプラのもとに向かった……そして、3人で手分けして、みんなにゾフィーの意思を伝えた……魔王城から逃げるとき、エトワールとの戦闘でエリムとラファミーが谷底に落ちてしまった。生死は分からない」

 そこでゾフィーの気配がすこし小さくなるのを感じた

「私を含めた残りの10人は一週間、みんなで勇者達の追撃を巻くので精いっぱいだった、そのときに戦闘によるアクシンデントで、ミラル、テスト、ルクスリア、ユリと離れ離れになった……でも、状況が変わった……大河が氾濫した……それで勇者達は一旦引いて行った……その間に、ゾフィーの言った通り残りの6人でばらばらで逃げて隠れた……でも、すぐ戻ってきた勇者達に……運悪く、ティアとルーシャが見つかってしまって、今も逃げている。助けようと思ったけど、それを逆に転機だと思いった……逃げている6人に、私とリリアとラプラとリズペットがそれぞれ別の世界にゾフィーを探しに行く旨を伝えてから転移した……そのまえに、もう一度、エリムとラファミーに連絡を取ってみた……だけど連絡が取れなかった……行方不明……でも、これは私があの世界を逃げ出した時だから……状況は変わってるはず……」

「そこでお主が来たこの世界にわらわが居たというわけじゃな」

「うん……一応、20日間ゾフィー を探して居なかったら……元の世界に一旦、戻るって約束した……でも、私が帰ってこなかったら……ラプラかリリアリズペットの誰かが異変に気付き様子を見に来るはず」

「なるほどの、で、お主はいつ、こっちに来たのじゃ?」

「10日前……」

 俺は驚いた

「お主はこの世界でどう過ごしたのじゃ?」

「森で空き小屋見つけたから……食べ物はそこらへんにできてるもの食べていた」

「辛い生活をしとったんじゃな、わらわがあのとき負けたばかりに……」

「ゾフィーは悪くない……悪いのは勇者……それに……この世界の森は結構楽しかった」

 パトリオットは口元だけちょっと笑っていた。どうやら本当に楽しかったようだ。

「それじゃあ、パトリオットは今、行く場所ないんだな、部屋は空いてるし、俺の家に来るか?」

「!……行きたいです……」

 これには他のみんなが文句を言いだした。

「パトちゃんだけずるいー 私も住む」

「私も住みたいです」

「あらあら、じゃあ私も住みましょうかね」

 美鈴先輩まで言ってくる始末だった。

「あのなあ、お前らは家あるだろ、それに……ああ、とにかく、お前らは家に住んどけ!」

「私……相馬とだけがいいです……」

「な? こう言ってることだし、諦めろ」

 みんな、しぶしぶ諦める。そのあと、パトリオットに学校のシステムやこの世界の一般常識、それと現状の敵と状況などを話していった。

 後ろで聞いていたフラムは、

「自分もマスターの家に住みたいであります」

「お前は美鈴さんの所に居たんだろ」

ぼそっとつぶやいたフラムに、呆れた口調で返した。


 そうしていると、午前4時を過ぎていた。そろそろ旅館を出ないと始発の電車に間に合わない時間だった。みんな一回それぞれの部屋に帰して、パトリオットとフラムにはすぐに出ると伝え、先に旅館の外で待ってもらった。

 帰りの電車は始発のためか、人が少なく7人全員座ることができた。パトリオットは珍しげに外を見ていた。

「そんなに電車が珍しいか?」

「うん……こんなの昔の世界にはなかった……」

「そうか、なら帰りの時間はたっぷりあるから、存分に見ておくんだな」

「うん……相馬……あのときは助けてくれて……本当にありがとう」

「あ、ああ、なんてことないよ、あれくらい」

じっと目を見つめてく、話してくるパトリオットにすこし照れてしまった。

「……わたし……相馬のこと……」

【ごほん!】

 ゾフィー がわざとらしく大きなせきを立てた。

「どうした? パトリオット?」

「なんでもないです……」

 ちょっとだけ悔しそうな表情をしている気がした。

「そうだ遥、俺らのクラスにパトリオットとフラムを編入させるが……」

 そこで、相馬は言葉を止めた。遥は幸せそうに眠っていた。よくみると、みんな寝ているようだった。

 はあ、と、ひとつため息をついた、御岩市に着いたら俺が起こさないといけないようだなと思った。相馬は朝日が昇り始めた、窓に目を向けた。

【みんな、ありがとう、よく頑張ってくれた、今は休んでくれ】

 起こすと悪いので、心の中でみんなにそう言った

 駅に着いたので、みんなを起こし、電車を降りた。そして、みんなそれぞれの家に帰って行った。遥が空を飛びそうになっていたので、厳重に注意しておいた。緑葉は藍の協会から昨日の祭の騒ぎの件で通信が入ってきたらしく、帰りながら、その件について関わっていないことと、この地区の現状報告をしていた。

 帰り道、俺はいつものコンビニで夕飯を買って帰った。家に着いたら、疲れのためか急に眠くなり、リビングでそのまま寝てしまったのだった。目覚めたときはもう夜の8時を回っていた。ゾフィー が言うには、俺が寝てる間、パトリオットはテレビをずっと見ていたらしい、そして、いつもの夕飯の時間になった。

「おいしいですね……」

 パトリオットは小さい口をつかって、ハムスターのように食べていた。

「同じようなことゾフィー も言っていたが、やっぱりこっちの世界は食文化が進んでいるのか?」

 相馬は唐揚げを食べながら聞いていた。

「うん……こんな料理なんてなかった……全部おいしい」

 コンビニの弁当でここまでおいしいと言ってくれるのなら今度、バイト代をためて、ファミレスでも連れてってあげようと、思った。

 夕飯が終わり、いつものデザートタイムになった。

【相馬、プリンを早く食べるのじゃ】

 ゾフィーが急かす

【プリン……この黄色い奴ですか……?】

【そうだ、ゾフィー のお気に入りだからな、それ】

【楽しみです……】

 相馬は先にコーヒーゼリーを食べた。もちろん、ゾフィー は奥に引っ込んでいった。

【プリン……おいしいですね】

 パトリオットはおいしそうな色合いである。プリンから食べていた。 俺がコーヒーゼリーを食べ終わったとき、俺の体の奥から、ゾフィー が戻ってきて、そしてパトリオットにこっそり言った。

【パトリオット……わらわにその袋にあるプリンを一つくれないかの……?】

【ゾフィー……プリン……先に食べた……ごめん……こっちの黒いのならあげる】

【いらんのじゃ! それは悪魔の食べ物じゃ!】

【お前、魔王だろ……】

【細かいことはいいのじゃ、さっさとプリンを食べるのじゃ】

 ゾフィーは待ちきれない様子で言ってきた。俺はやれやれといった調子でプリンを食べにかかった。

【うむ、格別じゃ、夕飯、全部これでもいいくらいじゃの】

【それは、俺が嫌だし、飽きる】

 ゾフィー と俺はその会話の後、夕飯はプリンだけと言い張るゾフィー を説得していた。その間に、パトリオットはコーヒーゼリーを食べる。そしたら、いきなりパトリオットの体が小刻みに震え始めた。

【!……これは!?】

【大体、相馬はプリンの良さをちっとも分かっておらん、まあよい、いずれわらわが相馬の秘密を握った時はプリン10個じゃ!】

【ああ、もう! 好きにしてくれ……ん? どうした。パトリオット、あ、その黒い奴、ゾフィー も嫌いだし、食べたくないなら俺が食べてもいいぞ】

 俺は食べ物に対して好き嫌いは特にない。

【違う……これ……今まで食べた中で……一番おいしい!】

【なんじゃと? パトリオットの味覚は変じゃ、これは苦いだけじゃ】

 むっとした、パトリオットはゾフィーに反論した。

【ゾフィーこそ……そっちのはただ甘いだけ……こっちは趣がある……相馬……今度からプリンじゃなくて……全部こっちにして】

【なんじゃと、それはわらわに対する反逆か? パトリオット、ふん、そっちがその気なら、相馬! 今度からは、全部プリンだけでいいぞ】

【はいはい、わかった、わかった。プリンとコーヒーゼリー如きでケンカするな】

【【如きじゃない】】

 二人に、一斉に反論された。

【悪かった、悪かった、今度からは二人に一個づつ買ってくるから、それで我慢してくれ、な?】

【……相馬に迷惑をかけるのは忍びない……それで我慢する】

【しょうがないのう、わらわも魔王じゃ、それで我慢しちゃろう】

 なぜ魔王が出てきたのかわからなかったが、一応、お互い納得したようだった。こうして、騒がしい夕食は終わりを告げた。

食事が終わった後、パトリオットに空いている部屋を案内した、調度品はベッドと机と本棚しかない質素な部屋だが、パトリオットは満足しているようだった。そして、いろいろとあったせいか、疲れていた俺は、ベッドに潜るとすぐに睡魔が襲ってきたのだ


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